ー ときの話題 ー §45
1 プラトンが「アトランティスの物語」を世に出したわけ?
2 海からの贈り物は魚やレアアースだけじゃない!
3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 海のギャング来襲!
⑵ トラフグ豊漁!
⑶ MSJC pickup!
① 明石海峡でケミカルタンカーと漁船が衝突
➁ 某市への提案
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1 プラトンが「アトランティスの物語」を世に出したわけ?
アトランティスは大西洋に存在したとされる謎の大陸です。
古代ギリシャ、アテナイ(都市国家)の哲学者「プラトン」(BC427 〜BC347)の著書である「ティマイオス/クリティアス」(プラトンの晩年〔BC360年ごろ〕の著作とされている)のなかで語られる「アトランティス(物語)」は「歴史(史実)として語ったのか」「寓話として構築したのか」という疑問は、古代からずっと議論され続けてきた興味ある主題です。どちらとも断定することはできませんが、寓話的・哲学的意図が強いというのが現代の研究の主流となっています。しかし、プラトン自身は「歴史的事実だ」という語り口で書いています。

プラトンの胸像(バチカン博物館蔵)の写真
(出典:ウィキぺディア・PD/マリー・ラン・グエンさんの作品)・not edited.
著作中の登場人物
ソクラテス:古代ギリシャの哲学者で、「西洋哲学の父」とも呼ばれている。BC5世紀ごろに活躍した人物ですが、著作等を残さなかったことから、彼の思想は弟子であるプラトンなどを通して伝えられている。彼の特徴は「ソクラテス式問答法」と呼ばれていて、相手に質問を投げかけながら真理に近づいていく方法を採る。「自分の無知を認める」ことから始め、対話を通じて知を深めていく。「無知の知(自分が何も知らないということを知っている)」という言葉がソクラテスの思考法を表している。
ティマイオス:イタリア南部、イオニア海沿いの都市国家「ロクリ・エピゼフィリ」出身の哲学者であり政治家として登場する。「宇宙論の専門家」で、数学的・調和的な世界観を語るための象徴的な賢者としていますが、実在した人物か否かは不明です。
クリティアス:BC5世紀のアテナイに実在した名家出身の貴族。詩人、政治家、思想家でもあり、ソクラテスの知人、『クリティアス』の中では、この人が伝承としてアトランティスの物語を語る。
ヘルモクラテス:シチリア島の都市国家シラクサの将軍で政治家。ペロポネソス戦争(古代ギリシャの二大勢力、「アテナイ」と「スパルタ」が激突した大規模な戦争。BC431~BC404、約30年にも及ぶ長い戦いだった)。の時代に実在した人物で、アテナイのシチリア遠征軍を撃退したことで知られている。
物語の仲介者としての「ソロン」
「アトランティスの物語」は「ソロン」(BC630頃–BC560頃、アテナイの貴族出身の政治家・詩人・立法者で、アテナイの民主政治の基礎を築き、同時に歴史を大きく転換させた改革者、プラトンやアリストテレスが「理想的な立法者」として高く評価した人物)がエジプトに旅行した際、ナイル川下流の都市「サイス」訪れ、「サイスの神殿の年老いた神官(氏名・年齢など詳細不詳)がソロンに語った」とされ、その老神官曰く
- アトランティスは9000年前に存在した強大な文明であった。
- アテナイはアトランティスと戦い、勝利した。
- その後、地震と洪水でアトランティスは海中に沈んだ。
と云うものでした。
アトランティス大陸の位置

アトランティスの位置を示す地図(出典:Wikimedia Commons、PD-US ・ PD-old)・not edited.
(源典:ドネリーの「アトランティス―大洪水前の世界」(1882年)より、アトランティスの帝国の地図)
イグネイシャス・ドネリー:(1831–1901)米国の下院議員・弁護士
「アトランティスの物語」の出典と構造
- プラトンの対話篇「ティマイオス/クリティアス」に登場します。
- 「ソロン」がエジプトで聞いた古い伝承を、「クリティアス」が語るという“伝聞の物語”として記述されている。
アトランティスとはどんな国だったのか?
- ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡のこと)より外側にあった巨大な島国(大陸?)。
- 建国したのは「海神ポセイドン」、最初の王はポセイドンの長子「アトラス」。
- 統治が行き届き、高度な技術力・豊かな資源・整った都市計画を持つ海洋帝国だった。
- 首都は同心円状の水路と陸地が交互に配置された環状都市だった由。
社会と政治
- 統治していた者は10人の王で全員ポセイドンの息子たち。
- 法律と秩序が重んじられ、初期のアトランティス人は節度と徳を備えていたとされる。
- 繁栄を謳歌し、時代が進みヒトとの交配が濃くなると、当初の神性が薄れてゆくと同時に欲望と堕落が支配し始める。
アテナイとの対立
- アトランティスは次第に勢力を拡大し、やがて地中海世界に侵攻する。
- 古代ギリシャのアテナイ(プラトンが理想とした都市国家)は抵抗し、アトランティス軍を撃退したとされる。
滅亡
- 堕落したアトランティスは、神々の神「ゼウス」の前に集まったオリュンポスの神々(オリュンポス十二神)の裁きを受け、 激しい地震と洪水によって一夜にして海中に沈んだと語られる。
物語の性質
- プラトンが、理想国家(アテナイ)と堕落した国家(アトランティス)を対比するための寓話として創作した可能性が高いとされている。
- 実在説もあるものの、学術的には「哲学的フィクション」と見るのが主流となっています。
クリティアスの語りの中断!
「クリティアス」がアトランティスについて語る途中、「ゼウス」が諸神を前にして言葉を述べるシーンで物語は突然途切れてしまう⁉
この「中断」についてはいろいろな説があって興味深い。
- 未完説:最も一般的な説としては、プラトンが何らかの理由で執筆を中断し、そのまま完成しなかったというもので、高齢や他の著作への集中、あるいは死去が理由とされるもの。
- 意図的中断説:プラトンがあえて物語を未完にすることで、読者に対し深い思索を促したという説。ゼウスの言葉が語られないことで、「神々の裁き」や「人間の傲慢への報い」を読者自身が想像する余地が生まれる。
- 政治的・哲学的配慮説:アトランティスの物語がアテナイの理想国家と対比される中で、露骨な批判や寓意が問題になることを避けるため、プラトンが筆を止めたという見方。特にアトランティスが当時のアテナイの堕落をも暗示しているとすれば、慎重にならざるを得なかった可能性もある。
- 沈没の重ね合わせ説:物語自体がアトランティスの「沈没」と重ねられているという説。語られるべき物語が、まるで海に沈んでいくように失われていく・・・そんな構造自体が寓意になっているとする。
「続き」があった⁈
「クリティアス」のアトランティスの物語のあと、三人目の語り部として「ヘルモクラテス」が予定されていたようですが、「中断」によって彼の話を聞く機会は失われてしまいました。
「プラトン」が「ヘルモクラテス」に語らせたかったことは?
もしもプラトンがこの著作を最後まで書き上げていたとしたら、そこに込められたであろう思想や物語で想像することができることは
- アトランティスの滅亡の詳細とその教訓:プラトンはアトランティスを道徳的堕落と自然(神)からの報復の象徴として描いていたから、ヘルモクラテスの口を通して「いかにして偉大な文明が傲慢さゆえに滅びたのか」を語らせた。
- 理想の国アテナイとアトランティスとの対比:『ティマイオス』と『クリティアス』では、アテナイがアトランティスに勝利したとされているが、その理想国家としてのアテナイの姿をさらに掘り下げ、徳と節度の勝利を強調した。
- 歴史と神話の交差点:神々の意志と人間の自由意志の関係、あるいは歴史の循環性についての洞察が語られた可能性もある。
- 未来への警鐘:アトランティスの話は、単なる過去の物語ではなく、未来の国家への警告でもある。『ヘルモクラテス』では、現実のアテナイがアトランティスのようにならないために必要な知恵や行動が語られたかもしれず、 即ち、「理想を忘れた国家の末路」を描くことで、読者に対し哲学的・倫理的な目覚めを促そうとした。
などが考え付くところです。
飛躍のしすぎ⁉
「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響きあり。 娑羅雙樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」
(平家物語・巻第一・祇園精舎の冒頭句より)
もし、「ヘルモクラテス」が語るはずだった物語が完成していたら、そこにはアトランティスの滅亡を通して、「無常観」や「盛者必衰の理(ことわり)」が描かれていたのかもしれません。
『ティマイオス/クリティアス』が書かれてから、東洋の片隅にある日本で『平家物語』が成立するまでには、およそ1,600年弱の時が流れています。「プラトン」が亡くなったのは紀元前347年(BC347)とのことですから、今(2026年)から2,372年前 になります。彼の深淵な洞察力に驚嘆するしかない!
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2 海からの贈り物は魚やレアアースだけじゃない!
「海の恵み」というと、魚介類・海藻(草)・塩の他に、人によっては「自然の恵み」「文化の恵み」を連想するかもしれません。将来はレアアースも含むことになるのでしょうか?
あまり大きくは取り上げられていませんが、医薬品やサプリメントにも海洋生物由来のモノが増えてきていて、研究中あるいは有用の可能性のあるものを加えると将来への期待は大きい!
古くから生薬として知られている海草
- マクリ(海人草〔かいじんそう〕):紅藻類に属する海藻で、日本や東アジアの沿岸部に分布している。古くから駆虫薬(特に条虫の駆除)して使われてきた歴史があり、「万葉集」には「まくり取り 服みてしがな 恋ひしけば 我が名は告らじ 名にし負はばぞ」の一首があり、真薦(まくり)が心の痛み(恋の病)を癒す薬草として詠まれていると解釈する説がある。また、江戸時代の『和漢三才図会』(江戸時代中期の博物学書)には、出生後三日以内に真薦と甘草を煎じて飲ませると、胎毒を吐き出させることができると記されているそうです。一方、抽出される「カイニン酸」は、直接的な治療薬としての使用はされていないが、新しい神経系治療薬の開発・研究のヒントとして注目されているところです。
海洋生物由来の医薬品
- ジコノチド:イモガイの一種(マグスイモガイ:インド太平洋の熱帯海域、特にフィリピンやパラオ、ハワイなどのサンゴ礁に生息)の毒から発見されたペプチド(:アミノ酸がいくつかつながった小さなたんぱく質の固まりのこと。体の中ではホルモンや神経伝達物質として働くこともある)の一種。重度の慢性疼痛に対する鎮痛薬として使用される。従来、強力な鎮痛剤として「モルヒネ」(:ケシの実から抽出される天然のアルカロイド〔:窒素を含む塩基性の有機化合物で、カフェイン、ニコチン、モルヒネなどが含まれる〕強力な鎮痛作用を持つ。)が知られていますが、さらに強力で他の鎮痛薬が効かないような難治性慢性疼痛に使用される。「モルヒネ」のような依存性や耐性が生じにくいとされています。ジコノチド(商品名:プリアルト)は、現在のところ日本では未承認で、まだ承認申請もされておらず、医療現場での使用はできない状況なのだそうです。
- ハリコンドリンB:ニュージーランド近海の海綿動物から発見された。がん細胞内の微小管(チューブリン)に結合して細胞分裂を阻害し、がん細胞の増殖を止める効果があるとし、応用例としてこの構造をもとに合成された誘導体「エリブリン(Eribulin)」が開発され、乳がんや脂肪肉腫の治療薬(商品名:ハラヴェン)として使われています。
- ドラスタチン10:インド洋や太平洋の熱帯域を中心に広く分布する。日本では房総半島以南の太平洋沿岸に生息するタツナミガイ(アメフラシ科に近いタツナミガイ科に属する軟体動物ですが、一般的に「アメフラシ」と呼ばれる生物より大型で皮が硬い、アメフラシと同様につつくと、紫色の液を出す)から発見された天然化合物で、がん細胞の増殖を止める力が強く、抗がん剤の研究で注目された。自然からは少量しか取れないため、人工的に合成する研究を進め、改良された類似物質と抗体とが組み合わされ、がん治療薬(ブレンツキシマブ ベドチン)として実用化されました。
- トラベクテジン:カリブ海に生息するホヤから抽出された物質で、現在は化学合成によって製造されている。がん細胞のDNA修復を妨げ、転写や修復メカニズムに干渉することで、細胞の増殖を抑える作用がある。日本では「軟部肉腫」や「卵巣がん」などに対して使用が承認され、特に他の治療法が効かなくなった場合の選択肢として期待されている。
- 海洋シアノバクテリア由来の抗寄生虫物質等:海洋シアノバクテリア(藍色細菌〔らんしょくさいきん〕)は海に住む光合成を行う微生物で、見た目は藍色や緑色の糸状・球状のコロニーを作ることが多い。この小さな生き物は、地球最古の光合成生物のひとつで、酸素を作り出す大きな役割を果たしてきた)は太古から生き残りのためにさまざまな化学物質(天然物)を作り出し、中には「抗菌作用」「抗がん作用」「抗寄生虫作用」を持つものなど医薬品のヒントになる物質が数多く作り出されている。
海洋生物由来のサプリメント(健康補助食品)
- オメガ3脂肪酸:EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、どちらもオメガ3脂肪酸に分類される栄養素で、主に青魚や海藻由来の微細藻類から得られます。
- EPA:血液をサラサラにし、炎症を抑える働きがあるとされ、心血管疾患の予防や健康維持、脳の健康にも関係があると注目されているところです。
- DHA:脳や神経組織に多く含まれ、記憶力や認知機能の維持に関与するといわれています。胎児や乳児の脳の発達にも重要です。
- アスタキサンチン:オキアミ、エビ、カニ、サケ、イクラなどに由来する栄養素でビタミンCの約6000倍、ビタミンEの約1000倍とも言われる抗酸化力を持ち、細胞の酸化ストレスを軽減する働きがあるほか、眼精疲労の軽減や視力の維持、紫外線によるダメージから肌を守り、シワやシミの予防効果、筋肉の疲労回復を助ける可能性がある。
- フコイダン:モズク、(ガゴメ)コンブ、ワカメなどの褐藻類に含まれる硫酸化多糖類で、海の中で藻が自らを守るために作り出す。天然のバリア成分としてナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化し免疫機能を高める働きがある一方、ウイルス感染への初期防御、他の免疫細胞(T細胞やマクロファージなど)と連携して、免疫全体のバランスを整える役割も担っています。
- コンドロイチン:サメ・エイの軟骨から抽出されたコンドロイチンは変形性関節症)などの症状を和らげる目的で使われ、また、水分保持力が高いため肌の保湿や弾力の維持にも有効とされる。
- グルコサミン:エビやカニなど甲殻類の殻に含まれるキチンから主に作られ、コンドロイチンと併用することで、相乗効果により軟骨の再生や関節の修復、痛みの緩和が期待されている。
研究途上にある海洋生物由来の成分
- イリオモテオリド-1a:沖縄県西表島近海に生息する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)から発見された、非常に強力な抗がん作用を持つ海洋天然物です。分子構造が非常に複雑で、世界中の研究者が長期にわたって構造解明に挑戦してきましたが、2024年、中央大学と高知大学の研究チームが、世界で初めてその立体構造の決定と完全化学合成(全合成)に成功しました。現時点では創薬候補物質としての研究段階であり、医薬品としての承認はまだされていないようです。
- カリヒノールA:カリヒノール類は、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁に生息する海綿動物(スポンジ)由来の天然化合物です。沖縄近海の海綿から発見されたことで知られています。海綿は、微生物との共生を通じて多様な二次代謝産物を生み出す“海の化学工場”のような存在で、これまでにも多くの創薬候補が見つかっています。カリヒノールAは、がん細胞の増殖抑制作用や、マラリア原虫に対する活性、さらには抗菌作用など、多彩な生物活性を持つことが報告されています。
- アブラミノン類:沖縄などの温暖な海域に生息するウミウシから発見されました。ウミウシは、食べた藻類や微生物から有用な化合物を取り込み、自らの防御や生理機能に利用することで知られていて、アブラミノンAやアブラミノンCなどは、がん細胞の増殖を強力に抑制することが報告される一方、非常に複雑な分子構造を持つため合成が困難とされてきましたが、近年の有機合成化学の進展により、合成研究も進んでいます。
海洋生物由来の医薬品の将来像
過酷な環境に適応するために独自の化学物質を進化させてきた海洋生物は、これからの医療やバイオテクノロジーの未来を大きく変える可能性が秘められている。
将来が期待されている分野
- がん治療薬の開発:前出の「トラベクテジン」が好例。
- 抗生物質の新たな供給源:耐性菌の出現で効果が薄れてきているなか、海洋の微生物はまだ未開拓の宝庫。新しい作用機序を持つ抗菌物質の発見が期待されている。
- 神経疾患への応用:フグ毒(テトロドトキシン)は、自然界でもトップクラスに強力な神経毒で、ほんの微量でも人間にとって致命的になりうるほどの毒性を持っている。これらを応用してアルツハイマー病や慢性疼痛の治療薬が研究されている。
- 再生医療やバイオマテリアル:クラゲや貝類のコラーゲン、海藻由来の多糖類などは、再生医療や創傷治癒に使えるバイオマテリアルとしても注目されている。
- バイオマテリアル:生体と接触しても安全で、体の中で特定の機能を果たすために設計された材料のこと
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3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 海のギャング(トド)来襲!
今年(2026年)1月末、北海道稚内市の沖にある無人島・弁天島に、地元漁師に「海のギャング」として嫌われる「トド」が約3,000頭規模で上陸し、地元で大きな話題になっています。また、北海道の石狩湾では「ニシン」の群来(くき)も目撃されたそうですから、餌のニシンを追って来たものと思われます。
トドの来襲は毎年恒例なのですが、約3000頭のトドの集結は、この時期としては観測史上最大級で、漁業被害が心配の種となっています。
トドの概要

トドの概要(出典:水産庁資料から)・not edited.

トド管理の現状(出典:水産庁漁業資源課資料から)・not edited.
毎年来る?

(出展:北海道水産林務部森林海洋環境局森林海洋環境課発表資料より)・not edited.
⑵ トラフグ豊漁!
千葉県の太平洋側、いすみ市大原漁港で「天然のトラフグが豊漁」のニュースがありました。2016年頃から漁獲量が増え始め、現在では当時の約10倍にもなっているそうです。2024年には千葉県全体で過去最高の52.2トンを記録し、そのうち約70%が夷隅地域(いすみ市を含む)からの水揚げだったそうで、背景として、千葉県が2015年から行っている稚魚の放流や、黒潮の大蛇行による海水温の上昇が影響していると考えられ、「千葉県の新たなブランド水産物」になったようです。

トラフグの画像(出典:ウィキぺディア・クリエイティブ・コモンズ表示-継承 4.0 国際ライセンス)・not edited.
トッティさんの作品
トラフグは雑食性で、貝の殻などを噛み砕いてしまうほどの歯先の力が強く鋭いので、釣れてしまった場合などは針を外す際に注意が必要です。
⑶ MSJC pickup!
① 明石海峡でケミカルタンカーと漁船が衝突
2026年2月11日正午すぎ、兵庫県の明石海峡東方でケミカルタンカーと漁船が衝突する事故が発生しました。
事故は、ケミカルタンカー「丸岡丸」の船長から「漁船と衝突した」と神戸海上保安部に通報があり、漁船は「住吉丸」で、50代の船長が頭部を打って病院に搬送されましたが、生命に別状なしとのことです。
衝突は互いにほぼ正面からで、タンカーと漁船の左舷前方に損傷が確認されましたが、積み荷や油の流出はなく、浸水もしていないと報じられています。事故現場は神戸市須磨区の西防波堤灯台から南に約7キロの地点で、海上保安部が詳しい原因を調査中とのことです。

衝突事故発生海域図(推定)・国土地理院地図上に著者が作図
事故発生時の天気図・参考

2026年(令和8年)2月11日正午の天気図(出典:気象庁、過去の天気図より)・not edited.
事故の発生場所は、大阪湾の北西部で「船舶ふくそう海域」の真っ只中、衝突海難発生の蓋然性が高い海域です。「怪我で済んだ!よかった、よかった」で済ますことなく、ふくそう海域を主に航行する漁船等(小型船)にもAISとVHFの装備を義務化することが必要です。
➁ 某市への提案
港湾工事における小型作業船等の安全装備(AIS・VHF)標準化に関する提案
1. 背景
某港内では大規模埋立工事が進行しており、曳船・工事作業船・ガット船などの小型船舶が多数航行している。一方で、コンテナ船・自動車専用船など大型船舶の入出港も多く、速度差・視認性差・操縦性能差が大きい海域となっている。
現状、下請事業者が運航する小型船舶の中には
・AISクラスB未装備
・船舶用VHF未装備
の船が混在し、相互認識の遅れによる衝突リスクが顕在化している。
2. 課題(構造的リスク)
- 小型船舶の装備格差により、大型船との相互認識が不十分
- ガット船等は操縦性能が低く、回避行動に時間を要する
- 工事区域の交通密度が高く、海難リスクが構造的に増大
- 多重下請構造により、小規模事業者は安全装備投資が困難
- 事故発生時は、工事停止・行政対応・港湾機能への影響が大きい
3. 目的
港湾工事に従事する小型船舶の安全装備(AIS・VHF)を標準化し、港湾全体の安全性向上・海難事故防止・工事の円滑化を図る。
4. 主体別の役割分担(整理)
港湾局(港湾管理者)
- 工事区域の安全確保・利用調整
- 元請の安全管理計画の審査
- 推奨装備基準(AIS・VHF)の設定
- 工事説明会での周知、海保との連携
海上保安庁
- 海上交通の監視(VTS)
- 航行警報・注意喚起
- AIS/VHFの必要性を安全上の観点から強く推奨
- 工事区域の交通監視強化
元請事業者
- 工事全体の安全管理責任
- 下請船舶への装備導入支援(補助・貸与・共同購入)
- 航行ルール(VHFチャンネル統一等)の策定・周知
下請事業者
- 装備導入・運用
- 航行ルールの遵守
- 安全講習への参加
5. 提案内容(行政に求める協議事項)
(1)港湾局による「推奨装備基準」の設定
- 工事区域に入域する船舶は、AISクラスBおよびVHF装備を推奨
- 元請の安全管理計画に明記する形で運用
(2)海保による安全上の必要性の明確化
- 航行警報・安全指導の場で、AIS/VHFの必要性を公式に示す
- 工事区域の監視強化
(3)元請による装備導入支援制度の導入
- 下請小型船の装備導入費用を補助・貸与・共同購入・保険加入等で支援
- 工事期間中の装備貸与も可能
- 装備格差の解消により、港湾全体の安全性が向上が期待できる
6. 期待される効果
- 海難事故リスクの大幅な低減
- 大型船・小型船の相互認識、意思疎通の向上
- 工事の安全性・効率性の向上
- 行政の負担(救助・調査・報告)の軽減
- 港湾全体の交通円滑化
- 港湾の安全評価向上(国際競争力の強化)
7. まとめ
AIS・VHFの装備標準化は、「小型船の安全確保」だけでなく「港湾全体のリスク低減」につながる施策であり、元請・下請・港湾局・海保の四者が協力することで実現可能である。
行政としては、推奨基準の設定と安全指導の強化を行うことで、実質的な装備標準化が進み、港湾の安全性向上に大きく寄与することが期待できる。
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四方海話89 ーときの話題ー §45 おわり!
つぎは 四方海話90 ーときの話題ー§46 です。

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