四方海話 33

第十二話   ー 漁業 ー   

 ① 日本の漁業

 第二次世界大戦後の日本の漁業は、漁獲物の鮮度を保つための冷凍技術もまだ未発達だったため、沿岸や近海に出漁する漁船は出漁に際して船内の魚倉に氷を積んで漁場に向かっていましたが、冷凍装置の発達に伴って操業海域が沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと拡大し、世界中の海で活躍していたところ、 

  • 昭和44年(1969年) 「大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約」発効  
  • 昭和52年(1977年) 米、ソが200海里漁業専管水域(現在の排他的経済水域〔EEZ〕)設定   
  • 平成3年(1991年) 日本漁船がアメリカの200海里水域から完全撤退
  • 平成4年(1992年) 公海上での大規模流し網漁業の停止(1991年国連決議)
  • 平成5年(1993年) 「北太平洋における可塑性魚類の系群の保存のための条約」発効 
  • 平成7年(1995年)  「中央ベーリング海におけるスケトウダラ資源の保存及び管理に関する条約」発効
  • 平成11年(1999年) 「漁獲能力の管理に関する国際行動計画」採択(国連食糧農業機関) 

などにより日本漁船は世界の海から締め出されてしまい、遠洋漁業からの撤退が相次いでいました。そんな中で「マイワシ」の漁獲量が次第に増加し、昭和59年(1984年)の漁業生産量全体(養殖漁業を含む)がピーク(1.282万㌧)となって以降、令和3年(2021年)にはピーク時の33%(421万㌧)にまで減少してしまっています。

漁業生産量の推移(内水面漁業を含む):水産白書(令和4年版)から 

 一方、漁業生産額に着目すると、資源量の減少漁業従事者や漁船の減少、国民の「魚離れ」による消費量の減少等により、昭和57年(1982年)をピーク(2兆9.772億円)として平成24年(2012年)まで減少傾向でしたが、平成25年(2023年)以降は消費者ニーズが高い魚種の養殖技術向上により増加傾向となり、平成30年(2018年)には ピーク時の約52%(1兆5.579億円)にまで一時回復したものの、令和3年(2021年)にはピーク時の47%(1兆3.999億円)にまで再び落ち込んでいる。

漁業生産額の推移(内水面漁業を含む):水産白書(令和4年版)から 

 ・・ 魚と肉 ・・

 日本国内の国民一人あたりの「年間食用魚介類消費量」は、平成23年(2011年)に始めて肉類が魚介類を上回りその差は次第に開きつつあり、日本人の「魚離れ」は加速しつつあります。

年間魚介類消費量の推移 :出典・水産白書(令和4年版)から(部分強調加筆)

 ・・ 捕鯨について ・・

 日本は、昭和26年(1951年)に加盟した「国際捕鯨委員会」(IWC)を、令和元年(2019年)6月末日をもって脱退し、同年7月から日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内で大型クジラ類(ミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ)を対象とした商業捕鯨を再開しました。

日本の捕鯨:水産白書(令和4年版)から

 IWCを脱退したとはいえ、日本近海や南極海で鯨類の資源管理を行うための調査船の提供、非致死的調査の継続、商業捕鯨により捕獲されたクジラの科学的データの収集・提供等を通じて科学的根拠に基づく持続可能な捕鯨業の継続を図るとしています。

 また、今後は令和元年(2019年)12月に成立した「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律の一部を改正する法律」のもと、科学的根拠に基づいた長期持続可能な範囲内での捕鯨が行われることとなりました。

 ② 世界の漁業

 世界各国の漁船による漁業生産量(漁獲量)は、EU、米、日本等の先進国では20年ほど間ほぼ横ばい状況か漸減傾向であるのに対し、インドネシア、ベトナムなどアジアの開発途上国は増加傾向にあり、特に中国は1.314万㌧(内水面漁業を含む)と世界の14㌫を占めています。

 魚種別では、ニシン、イワシが1.846万㌧で全体の20㌫を占め、タラは減少傾向にあったものの平成20年(2008年)以後次第に増加、マグロ・カツオ・カジキ、イカ・タコについても増加傾向にあり、エビ類は安定的に漁獲されています。

 *** 気候変動と漁業 ***

 北海道日高地方沿岸で「オオズワイガニ」が大量発生して「カレイ」の底刺し網漁等に影響があった旨の報道がありました。原因は気候変動(海水温度上昇)で「赤潮」が発生し、天敵となる「タコ」が減少したためだと推定されています。その他、北海道で「ブリ」、山形県、秋田県では「サワラ」など暖流系の魚の漁獲量が急増する一方、「サンマ」や「スルメイカ」「サケ」など寒流系の魚が日本近海に来なくなったことで漁場が遠くなったりしている他、瀬戸内では「ミズクラゲ」の異常発生、磯焼けによる「アワビ」「サザエ」「トコブシ」などの漁獲量が減少傾向、「ノリ」「カキ」などの養殖にも影響が出ているそうです。

 単に海水温度上昇だけが原因と言いきることもできないと思いますが、相手が生物(魚類)ですので 「快適に過ごせて、餌が豊富で、外敵がいない。」ところを求めるのはホモサピエンスと同じです。GHG(温室効果ガス)の削減対策は必須ですが、魚たちは直ぐには戻って来てはくれません。

 漁業者にとって、対象魚種が変わったからと言って直ぐに対応することも大変難しい。船型・設備・船の大きさや構造・漁具の変更などハード部分と、長年培った漁のノウハウもリセットしなければならず、特に沿岸漁業者の負担は少なくない。

 温暖化による海水温度の上昇、後継者不足、高齢化、漁獲量の減少、国民の「魚離れ」が進み燃料費も高騰するなかで苦戦が続く「日本の漁業」ですが、将来に渡って灯を消すことなく、元気であり続けることを願わざるを得ません。

第十三話  ー 海運 ー 

* 日本の国民生活は「海運」頼み 

 我が国はエネルギー、原材料から衣食住まで、必要物資の殆どを外国からの輸入に頼っていることはご存知のとおりですが、その99.5㌫が海上輸送です。

主な資源の対外依存度:出典(一社)日本船主協会・SIPPING NOW 2022-202

日本の貿易量の海上輸送割合:出典 同上

* 世界の商船の船種別構成 * 

世界の商船の船種別構成:出典(一社)日本船主協会・SIPPING NOW 2022-2023

* 世界の主要品目(石油・鉄鉱石・石炭・穀物)の海上輸送量推移 *

世界主要品目の海上輸送量推移:国交省海事局資料より

* 世界各国の登録船腹量ランキング *

出典:日本海事広報協会編 SISIPPING NOW 2022-2023

* 世界各国の港湾規模(コンテナ貨物扱い量)ランキング *

 近年、コンテナ輸送が海上流通の主流となっていますが、令和3年(2021年)の世界の主要港湾をコンテナ貨物取扱い量(TEU換算:20㌳型コンテナ換算)で比較すると、地形の利を生かした中国の上海がダントツで12年連続第1位です。

オランダのロッテルダム港(下表のランキング11位)でのコンテナ荷役は無人化が進み、コンテナ船への積み下ろしはフルオートのガントリークレーンで行われているほか、ヤード内の移動やストックも全てコンピューターにより制御された無人運搬車により行われ、荷役の安全とスピードアップが図られているそうです。

世界主要港湾コンテナ貨物取扱量:国交省海事局資料より

* 内航海運 * 

 対外国との輸出入もですが、日本各地への貨物の振り分けと集積がさらに重要なポイントです。貨物の輸送といえばトラックがメインと思いがちですが、GHG削減への要請やドライバー不足により内航海運への期待が高まっています。   

国内貨物の輸送シェア:出典(一社)日本船主協会・SIPPING NOW 2022-2023

 また、船舶輸送はエネルギー消費は、鉄道には敵いませんが、トラックの5分の1程度でたいへんエコノミーです。下表の単位、トンキロ=貨物重量(トン)×輸送距離(キロメートル)で、小さい値であれば、貨物量に対するGHG排出量が少ないともいえます。

輸送に必要なエネルギー消費量比較:出典(一社)日本船主協会・SIPPING NOW 2022-2023

四方海話 33  第十三話   ー 海運 ー    「おわり」

  次回は  四方海話 34  第十四話  ー 造船 ー    です。   

 

コメント

四方海話をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました