四方海話 34

第十四話  ー 造船 ー   

 基幹産業とは、国の経済発展の基礎をなす産業を指す、一般的に鉄鋼電力エネルギー機械化学工業自動車電子工業等を指しますが、造船業 は、資源のない島国である我が国にとって真に基幹産業といってよいと思います。その造船業界が今、世界の中で生き残りを懸けて戦っています。以下は(一財)日本造船工業会が2020年(令和2年)8月、各界に支援を要請する文書の一部抜粋です。

 「我が国の海事・造船業を取り巻く環境は、世界的な船腹過剰供給力過剰を抱え厳しい状況にあります。加えて、中・韓造船企業の巨大化市場を歪曲する政府助成の存在地球温暖化対策の急激な加速による船主の発注マインドの低下等、急激に厳しさを増し、さらに新型コロナウィルスの影響による人の往来が制限され、新造船の商談はストップしています。このままでは、我が国の造船業が危機的場面に入りかねない状況にあります。海洋立国日本を目指すうえで、直ちに対応が必要な局面に入っているといえます。」

 造船工業会の会長が交代して、今月(2023年6月)中旬、就任記者会見が開かれましたが以下はその所信の要旨です。

  •  造船業を取り巻く環境は依然として厳しい。
  •  日本の造船業は多数の関連産業を有し、部品の9割が国内調達である。また、造船所のほとんどが地方に立地し、地域経済と雇用を支えている。
  •  日本の安全保障を担う海上自衛隊の艦艇や海上保安庁の巡視船艇はすべて国内で建造し、メンテナンスをしている。これは外国に依存することはできない。
  •  日本は世界第6位の排他的経済水域を有している。今後、洋上風力発電・潮流発電・海底資源開発など海洋の活用範囲は拡大していくものと思われるが、造船の技術は必要不可欠である。
  •  ウクライナ情勢により不確実性が増しているが、海上荷動き量は持続的に増加しており、今後も成長は続くと見ている。
  •  2050年のカーボンニュートラルに向けて、ゼロエミッション船への代替え需要が期待できる。
  •  ゼロエミッション船建造については、業界内の連携強化とスマートファクトリー化が必須だが、大規模な設備投資が必要となるので、国等への支援要請を行っていく。
  •  日本の造船業は、魅力ある産業として復活し、日本と世界の経済や安全保障に寄与し、地域密着型産業として、関連企業とともに地域経済・雇用に貢献する所存である。

    としています。(スマートファクトリー:ⅠoTやビックデータ、AI、ロボットなどの技術やデータを活用して設計・製作工程や部品供給体制のネットワーク化・最適化・自動化を図る工場をいいます。)

    世界の新造船受注量の推移(出典:国交省海事レポート2022) 

    世界の海上輸送量・船腹量の推移(出典:国交省海事レポート2022) 

    我が国造船業の手持ち工事量の推移(出典:国交省海事レポート2022) 

      下表は造船業と船用品および関連部品製造業の所在地の全国的割合を示しています。明らかに西高東低となっています。

    造船所と船用部品製造業の所在地(出典:国交省海事レポート2022) 

    第十五話  ー GHG(温室効果ガス)ゼロエミッション船 ー

     国際航海に従事する船舶から排出される温室効果ガス(GHG : Greenhouse Gas)はそのほとんどが二酸化炭素(CO)であり、2014年の国際海事機関(IMO)の調査によれば、2012年の排出量は約8億㌧とされています。この数値は世界全体のCO総排出量の約2.2㌫で、ドイツ1国分の年間排出量に相当する。また、世界経済の成長を背景として世界の海上輸送への需要は増加傾向にあり、国際海運からの排出量も将来増大すると予想されています。

     このような国際情勢の中、2016年のIMO第70回海洋環境保護委員会(MEPC70)でCOの排出ゼロに向けた戦略策定について討議が開始され、2018年4月のMEPC72においてGHG削減戦略が採択された。その内容は

    •  2030年までに、国際海運全体の燃費効率(輸送量当たりのCO排出量)を、対2008年比40㌫以上改善する。
    •  2050年までに、国際海運からのGHG総排出量を対2008年比50㌫以上削減する。
    •  最終的には今世紀中のなるべく早期に、国際海運からのGHG排出ゼロを目指す。

    としています。

     我が国はこれの実現に向けて産官学公の知見を集約すべく、国交省海事局主導のもと、2018年8月「国際海運GHGゼロ・エミッションプロジェクト」が始動した。

     下表は、このプロジェクトのロードマップとゼロエミッション船のイメージです。いったいどんな船になるのか、現在のところ予想が難しい状況です。

    ゼロエミッションプロジェクトロードマップ(出典:国交省海事局資料)

    ゼロエミッション船イメージ(出典:国交省海事局資料)

    四方海話 34   第十五話  ー GHGとゼロエミ船 ー   「おわり」 

      次回は 四方海話 35 第十六話  ー 船のサイズ ー    です。 

    コメント

    四方海話をもっと見る

    今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

    続きを読む

    タイトルとURLをコピーしました