四方海話 29

第十話  — 日本の漁具・漁法 —   その2

 ・ 網漁業

10 かご漁

 かごの中に餌を入れて、海底に一晩以上敷設した後引き揚げ、対象とする魚介類を採捕します。

 対象魚介類 アブラコ、アイナメ、ホッケ、カニ、エビ、ツブガイ、タコ、コウイカ、バイガイなど。

 かご漁

 ・ 釣り漁具

1 はえ縄、延べ縄

 下のイラストは、はえ縄漁の一般的仕掛けです。幹縄(横方向に張る縄)は短いもので数10㍍、遠洋マグロはえ縄漁船では100キロ㍍を超えるものもあります。また、沿岸漁業では海底に仕掛けるものもある。近年では南極海周辺に生息する肉食性の大型深海魚「マゼランアイナメ」(メロ:流通名)の漁獲のため、底はえ縄漁が応用されています。

 対象魚種 マグロ(カジキマグロを含む)、サケ、マス、スケトウダラ、カレイ、ヒラメ、タイなど。 

はえ縄漁、延べ縄漁  出典:農林水産省漁業種類イラスト集

2 一本釣り

 一本の道糸に1~数本の釣り針を結び付け魚を釣り上げます。餌には生餌(いきえ)の他、疑似餌(ぎじえ)も使い、竿釣り、手釣りの他、引き縄釣りも含まれます。

 ① カツオ一本釣り漁

 下図は、カツオ一本釣り漁船のイラスト です。船の周りに海水をシャワーのように散水し、時々生餌も撒きながら、カツオを興奮状態にして、疑似餌を食わせます。この漁法では人件費削減のため、人の代わりに自動カツオ釣機など省力化のための漁業機械も使われています。

出典:農林水産省漁業種類イラスト集

 ② 引き縄釣り漁(トローリング)

 下図は、引き縄釣りのイラストです。それぞれの縄には潜航板あるいは通称ヒコーキと呼ばれ、一定のスピードで引くと疑似餌が深く潜航し、魚が掛かると浅く浮き上がってくる便利な漁具が取り付けられています。

出典:農林水産省漁業種類イラスト集

 ・ 刺突(さしつき)漁具

 銛(もり)やヤスで魚(カジキマグロなど)、海生哺乳類(イルカ、クジラなど)を突いて漁獲します。

 千葉県館山市の稲原貝塚(いなはらかいづか:約8000年前の縄文時代前期の遺跡)から、イルカの骨に突き刺さった黒曜石(黒曜石:四方海話 6・第二話 古代年表 参照)製の銛状(先端部分)の石器が出土していることから、漁具としての歴史はたいへん古いことになります。

 ・ 陥穽(かんせい)漁具

 ① もんどり、うけ、筌(せん)

 魚類の習性や食性を利用して、漁具の中に誘導して採捕する。前述のかご網漁もこのカテゴリーのなかに含まれると云えなくもない。歴史は古く、昔は竹を編み漁具を作成していました。一旦中に入った獲物は構造上逃げ出せません。別名「どう」「もじり」とも呼ばれます。

筌(せん)の一例 

 ② アナゴ筒漁法・筒はえ縄漁法

 昔の筒は、「もんどり」同様竹で細めの筒を編み、入り口に「モドラズ」を取り付けて一旦筒の中に侵入したアナゴは外に出られない仕組みになっていましたが、近年では竹の代用として筒そのものを塩化ビニール製の管を加工したものが使われています。筒の中に魚の切り身等の餌を入れて200~300個、7~10㍍の間隔をあけて砂泥質の海底に敷設し、一晩ほど放置した後引き揚げて中に入ったアナゴを漁獲します。

アナゴ漁船とあなご筒

 ③ 蛸壺(たこつぼ)

 「たこ」は柔らかい体を保護する硬い殻や外骨格(がいこっかく)を持たないため、海底の岩場に潜み、潮の流れが緩くなる時間帯に住処を出て砂地などでカニ、エビ、小魚などを捕食します。隠れる場所がない砂地などでは、天敵のウツボやタイ、サメ等に襲われるのを避けるため壺の中に隠れます。昔の蛸壺は素焼きのものが主流でしたが、近年は硬質プラスチック製がほとんどになっています。形状もかまぼこ型や箱型で、タコが逃げ出さないように蓋(シャッター)を有するものもある。小型のタコ、飯蛸(いいだこ)は二枚貝(ハマグリなど)の殻を細索で連結して沈めておくと中に入り、足の吸盤を使って殻を閉じて隠棲する習性を利用する。

左:イイダコ用二枚貝と奥は素焼きの蛸壺(横須賀市立博物館) 中:シャッター付きタコ箱 右:かまぼこ型蛸壺 

 ・ その他の漁法

 ① 見突き漁 

 小型漁船の船側から箱めがねで海中を覗き、長い柄のついた把具で岩礁地帯に生息する魚貝類を採捕します。

 昔、海象の良い日には、日本全国津々浦々の磯に日常的に見ることが出来た漁法です。この漁法もまた、歴史が古いうえに熟練を要しました。船外機などがまだ無い時代、足で櫓(または櫂)を操作しながら舟(木造和船)を移動させつつ、箱めがねを口で銜えながら海中(海底)を観察、先端に鈎やオコシガネ、ヤスなどを付けた長尺の得物で魚介類を採っていた。この漁法には木造の和船が最適で、近年のFRP製の舟は風、潮に流されやすく不向きなのだそうです。木造和船を造ることが出来る船大工も少なくなっている昨今、伝統漁法になりつつあります。

 対象貝類 アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ、ナマコ、カキなど。

出典:農林水産省漁業種類イラスト集

 ② 採藻漁

 ①同様ですが、長い柄のついた鈎や鎌を使ってワカメ、コンブ、テングサなどを採捕する。

出典:農林水産省漁業種類イラスト集

 ③ 潜水器漁業

 ヘルメット潜水またはフーカー潜水で、アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ、ナマコ、カキの他タイラギ貝、ミルクイ貝、ナミ貝(ナミノコ)、ホタテ貝、モズクなどを採捕する。

出典:農林水産省漁業種類イラスト集

 ④ むつかけ漁 

 九州の有明海では、遠浅の干潟に生息するムツゴロウを獲るため、「潟スキー」(ハネイタ)を移動手段として、長尺の竿を用い、道糸の先に錘を付けた空針を仕掛けて、干潟の泥の上に居るムツゴロウを引っ掛ける漁法がある。

 ⑤ サンゴ漁

 サンゴ漁と聞くと、小笠原諸島周辺の排他的経済水域内での台湾漁船による密漁が思い浮かびますが、高知県、長崎県、鹿児島県、沖縄県、東京都(小笠原諸島鳥島以南)で知事許可漁業として操業されています。

 200㍍以上のロープの先端に錘(すい:おもり)を付けたクレモナ(化学繊維)製の網を取り付け、漁船の舷側から垂らして海底を引き回すことにより白サンゴ、桃色サンゴ、赤サンゴなどの宝石サンゴを絡め採る漁法です。

 ⑥ 突き採り漁法(ホッキ貝漁業)

 小型漁船の船上から、長さ6~8㍍のアルミ製で中空の棒(ホコと呼ばれ、昔は木製)の先端に鉄製の4本の爪(ヤス)を付けた漁具を使って砂地の海底に突き刺し、生息する北寄貝(ホッキガイ:姥貝<ウバガイ>)を探りながら、手に伝わる感触を頼りに殻を壊さないようにヤスの間に挟んで引き上げ採捕する。熟練した技術を要し、ベテランになると突き刺した砂の感触から貝の居場所が分ると云うが、このことは経験の浅い漁師との間に漁獲高の差が顕著であることから理解できる。また、ヤスの形状にも個人により好みが分れ、直線的に細くなるものや中間部に微妙な膨らみのあるものなど、鍛冶屋の腕の見せ所なのだとか。北海道上磯郡(現北斗市)上磯地区(七重浜)に残された伝統漁法です。

 ➆ 素潜り漁 

 NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で有名になりました。女性は「海女」、男性は「海士」、まとめて「海人」?。肺機能と身体能力のみが頼りの漁法です。「魏志倭人伝」の「末盧国」(まつらこく、まつろこく)の記述に「好捕魚鰒、水無深浅、皆沈没取之」(鰒:あわび)が確認できるということですから、歴史的にもたいへん古く、「」(りょう、いさり)の原点と云えるのではないでしょうか。

「海女」の画像:出典ウィキペディア

 ・ 禁止漁法

 ① 爆発漁

 爆発物(火薬)を水中または水面で爆発させて、魚を気絶または死亡させ、浮いてきたところを採捕する。水産資源保護法により禁止されています。

 ② 毒流し漁

 樒(しきみ)、椿油粕(つばきあぶらかす)、山椒(さんしょ)など植物性毒物ほか、青酸(せいさん)、クレゾールなどの薬品を流し魚を浮上させる漁法です。地域により「毒もみ」「アメ流し」「根流し」などと呼ばれる。こちらも水産資源保護法より禁止されています。

 ③ 電気ショック漁

 水中に電流を流し、魚に電気的ショックを与えて気絶させ浮上したところをすくい採る。有害外来魚種の駆除目的以外には原則的に禁止されています。

四方海話 29  第十話  — 日本の漁具・漁法 —  その2  「おわり」 

次回は  四方海話 30  第十一話  — 海の雑学 —  です。 

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