ー ときの話題 ー §17
「気候変動監視レポート2023」:気象庁
イザナギ「伊邪那岐」プレート
藻場再生やココリスの増殖で地球温暖化は止められる?
広告
日本茶や抹茶スイーツの通販なら【祇園辻利・茶寮都路里オンラインショップ】
「気候変動監視レポート2023」:気象庁
今年(2024年)3月末、気象庁が「気候変動監視レポート2023」を公表しました。このレポートのなかで、「海」に関連する項目をピックアップしてみました。
トピックス
Ⅰ 2023年7月後半から8月にかけて顕著な高温

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

日本各地域の平均気温平年差の推移(出典:気象庁・気候変動監視レポート2023・付図)
亜熱帯ジェット気流の北偏?

寒帯ジェット気流と亜熱帯ジェット気流の概略位置関係模式図(出典:ウィキぺディア)
Polar Jet:寒帯ジェット気流 Subtropical Jet:亜寒帯ジェット気流(筆者注)

寒帯ジェット気流と亜熱帯ジェット気流の流路の模式図(出典:ウィキぺディア)
Ⅱ 2023年の日本近海の記録的な海面水温について

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

日本近海の全海域平均海面水温(年平均)平年差の推移(出典:気象庁・気候変動監視レポート2023・付図)

北太平洋の海面水温と海面水温平年差の実況図(出典:気象庁HPから)
親潮は何処へ行った?
親潮とは北太平洋を半時計回りに流れる亜寒帯循環 の一部で、ベーリング海から東カムチャッカ海流となって、千島列島に沿って南西方向に流れ、得撫海峡(ウルップ海峡)沖を通り親潮になります。
亜寒帯循環?

(出典:気象庁HP)
親潮は、魚類や海藻類の餌となるプランクトンの生育に必要な栄養塩類(ケイ酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩など)を多く含み、海洋生物を養い育む「親」に例えて親潮と呼ばれています。

親潮の流れ(出典:気象庁HP)
例年は、冬(1月頃)本州東岸に沿って南下し始め、春(4月頃)最も南に張り出して宮城県沖に達し、勢力が強い場合は北茨城沖に達することもあります。その後、次第に南限は北に上がり11~12月頃には釧路沖付近まで後退します。この様な季節的変化は季節風の影響によるものと説明されています。

(出典:気象庁HP)
ところが、2023年の親潮の南限位置は、北緯41度以北の状態が続き、6月、8~9月は東経148度以東にまで後退し、表面積は平年よりかなり小さくなり、6~8月と12月には1982年以降最小の値となったとのことで、この原因については、2023年の日本東方海域で暖水渦が存在したほか、春頃から黒潮続流が三陸沖まで北上した状態が続いていたことと関係していると考えられるとしています。


(出典:気象庁HP・海流に関する診断表)
第1章 2023年の気候
1.1 世界の天候・異常気象

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

(出典:気象庁・気候変動監視レポート2023・付図)
1.3 大気・海洋の特徴

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)
おさらい
エルニーニョ・ラニーニャ現象については四方海話49、インド洋ダイポールモード現象については四方海話51に掲載しています。
「気候変動監視レポート2023」に掲載された季節ごと(3ヵ月ごと)の海面水温平年偏差図を並べてみると、ラニーニャ現象の終息からエルニーニョ現象の発達、インド洋のダイポールモードの生成過程が見て取れ、興味深い。




(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
第2章 気候変動
2.1 大気中温室効果ガス濃度の変動

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)
今更ながら「温室効果ガス」(GHG:Greenhouse Gas)とは?
地球表面が、大気を通過した太陽光によって温められ、地表の熱が赤外線として宇宙空間に放出される際に、大気圏内にあって地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体のこと。(ウィキペデアより)
水蒸気・二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素(亜酸化窒素)・トリフルオロメタン・ヘキサフルオロプロパン・パーフルオロエタン・パーフルオロシクロプロパン・パーフルオロシクロブタン・パーフルオロペンタン・ハイドロフルオロカーボンなどが挙げられています。

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より・原文のまま)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付表)
長寿命の温室効果ガス?
長寿命の温室効果ガスとは、大気中に長期間残留して地球の気候に影響を与えるガスを指しますが、なかでも六フッ化硫黄(SF6)は非常に強力な長寿命温室効果ガスとして知られ、高電圧機器の絶縁開閉装置や変圧器、半導体製造装置に使用されています。非腐食性・無色・無臭・不燃性で毒性もなく、加えて化学的安定性も高く、利用価値の高い優れた気体ですが、自然界には存在しない100%人工化学合成による気体であり日本国内でも製造されていて代替えとなるものは未だ開発されていません。また、大気中においても安定かつ長寿命(約3,200年)で、二酸化炭素(CO2)に比べて約22,800倍の温室効果を持つとされています。電力会社や電力制御機器メーカーでは、2050年のカーボンニュートラルに向け、六フッ化硫黄(SF6)に替え窒素と酸素の混合気体を利用する方法への転換や代替え技術の研究開発を進めているところです。
2.8 海水温の変動

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
2.10 日本沿岸の海面水位の変動

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
2.11 海氷域の変動

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)
北極と南極の海氷

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
両極の海氷域面積の経年変化グラフを見ると、北極は明らかに右下がりですが、南極でも2015年以後、一時的に増えるものの減少しているように見えるのですが?
また、四方海話58に掲載しました南極大陸や北極(グリーンランド)の大陸氷河もかつてないスピードで融解していることについても引き続き関心をもって注目したいと思います。
オホーツク海の海氷

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
下図は、気象庁HPに掲載されているオホーツク海の海氷面積経過図です(2023年11月~2024年5月初旬)。温暖化が進んでいるにしては平年値以上に推移し、最盛期には太平洋にまで張り出していましたが、今年3月下旬には平年値を下回って急速にしぼんでしまい、一時的には最小値をも下回る様相です。シーズンもあと僅かですが変化を見守りたいと思います。

(出典:気象庁HP)
2.12 海洋の二酸化炭素と海洋酸性化

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)
2.12.1 海洋の二酸化炭素

(出典:気象庁「気候変動監視レポート2023」より)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)
2.12.2 海洋酸性化

(出典:気象庁HP・海洋の健康診断表より)

(出典:気象庁・「気候変動監視レポート2023」・付図)

(出典:気象庁HP・海洋の健康診断表より)
国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)の年次報告書によれば、日本のSDGs(持続可能な開発目標)の達成度は、国際社会のなかで2017年に11位だったものが、少しずつ後退して2023年は21位(166ヵ国中)だったそうです。評価の内訳は、達成済み(目標4・9)の二つ、課題が残る(目標1・3・6・11・16)の五つ、重要な課題がある(目標2・7・8・10・17)の五つ、深刻な課題がある(目標5・12・13・14・15)の五つとなっています。SDGsの目標17の中で「深刻な課題がある」として最低評価を受けた五つの項目は、5:「ジェンダー平等を実現しよう」、12:「作る責任、使う責任」、13:「気候変動に具体的対策を」、14:「海の豊かさを守ろう」、15:「陸の豊かさを守ろう」となっていますが、なんとなく頷ける気がします。
広告
再度「プレートテクトニクス」の話題で恐縮ではありますが、日本列島の起源に関わり、日本神話の「神」の名を冠するプレートなので掲載します。
イザナギプレートは、約1億3千万年前頃(中生代白亜紀)~約2千5百万年前頃(新生代新第三紀初頭)まで現在の北西太平洋に相当する地域の海底に存在したとされる「海洋プレート」です。
その先端は、アジア大陸に衝突しつつ「付加体」を形成しながら北東方向に移動を続け、多くの「横ずれ断層」を発生させた。関東地方から九州西部まで連続する「中央構造線」はそのときに形成された断層とされています。その後、イザナギプレートはユーラシアプレートの下に速いスピード(年に20~30㌢)で沈み込みながら北西方向に移動して、約2千5百万年前頃には姿を消したと云われています。
日本列島の土台は、プレートテクトニクス理論によればイザナギプレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことにより生じた付加体が主であると説明されています。


(出典:ウィキぺディア)
約2千5百万年前頃には姿を消したイザナギプレートですが、その後、北からは「北米プレート」(オホーツクプレート)、東から「太平洋プレート」、南から「フィリピン海プレート」がせめぎ合っている状況です。
広告
藻場再生やココリスの増殖で地球温暖化は止められる?
某地方紙の報道によれば、海辺の4市1町が連携して「藻場」の再生を図り、「ブルーカーボン」を増やす脱酸素の取り組みを推進することになったとして各首長が共同会見した由。
藻場(もば):沿岸(海岸)域の海中に形成された海草や海藻の群落のことで、「海の森」とも呼ばれ、生物の生活や水質の浄化に必要不可欠な役割を果たしています。
- 水質浄化:富栄養化や海水の濁りの防止、光合成による酸素の供給
- 生物多様性の維持・保全:魚類の産卵場所の提供、幼・稚魚の育成
- 海岸線の保全:波浪の抑制や底質の保持

「海草と海藻の違い」(出典:水産庁資料・藻場の働きと現状より)
藻場の減少原因

「藻場減少の原因」(出典:水産庁資料・藻場の働きと現状より)
藻場の分類

「藻場の分類」(出典:水産庁資料・藻場の働きと現状より)
ブルーカーボン:海草や海藻、植物プランクトンは環境中の二酸化炭素を取り入れ、光合成により酸素を排出しますが、同時に体内に吸収・貯留された炭素は、のちに枯れて海底に堆積し、炭素は海底の砂泥のなかに固定、蓄積されます。以下の生態系により吸収・貯留されます。
- 海草・海藻による藻場
- 湿地や干潟:
- マングローブの林など
ブル―カーボンは「海」でのことですが、陸域にある「森」や熱帯域の「ジャングル」にも同様の機能があり、対語として「グリーンカーボン」と呼ばれています。
藻場の再生には、相手が植物なので効果が確認できるまでに長い時間と労力、それに資金が必要となるのは言うまでもありません。「ふるさと納税」や「クラウドファンディング」なども利用するとしていますので多くの市民が参加できるものとして期待しています。
ココリス
正確に記すと、「円石藻」(えんせきそう:ハプト藻)という海洋性単細胞植物プランクトンが持つ炭酸カルシウムでできた円石(方解石結晶=石灰石=大理石)を「ココリス」と呼ぶのだそうですが、非常に小さく、円石藻自体の直径は5~100㎛(1㎛=1㍈=10⁻⁶㍍)で、顕微鏡世界の生き物です。
円石藻(ハプト藻)の起源は三畳紀(2億5,190万年前~2億130万年前)にまで遡り、イギリスの「ドーバーの白い崖」(ホワイトクリフ)は、海底に分厚く堆積したココリスの化石層が地殻変動で隆起し、姿を現したものである由。

円石藻の画像(出典:ウィキぺディア)
Photo by NEON ja, colored by Richard Bartz、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.5 一般、not edited.
この生物は、細胞内に葉緑体を備えていて光合成を行なうとともに、餌としてバクテリアなどを捕食します。また、同族の種類も多く、海洋の有光層(太陽光が届く深さ)には海水1㍑あたり数千~数十万もの個体が生息しているそうで、ココリスの形成をする際に炭素を放出すると同時に、光合成を通じて炭素の固定も行い、海洋の炭素循環について重要な役割を担っていることに加え、円石藻が放出するイオウ化合物は大気中に発散され雲核となり雲の形成を促し、太陽光の反射率の上昇にも寄与して気候に対して直接的な影響を与えているとの研究結果が示されていますが、円石藻(ハプト藻)を増殖して地球温暖化を防ぐとなるとさらなる研究が必要です。
陸域の異常気象による砂漠化をくいとめることも大切ですが、海域でも積極的に有用植物を増やして、地球温暖化防止に貢献できるよう研究の進展に期待したい。
広告
四方海話 60 ー ときの話題 ー §17 「おわり」
次回は 四方海話 61 ー ときの話題 ー §18 です。

コメント