ー ときの話題 ー §41
1 マスノスケ(鱒之介)(=キングサーモン=チヌークサーモン)
2 地球温暖化の海洋への影響についての新たな知見!
3 COP30閉幕・日本が今年も「化石賞」を受賞⁉
4 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ ワシントン条約締約国会議
⑵ ところてん
⑶ 黒潮流路と海水表面温度
広告
日本茶や抹茶スイーツの通販なら【祇園辻利・茶寮都路里オンラインショップ】
1 マスノスケ(鱒之介)(=キングサーモン=チヌークサーモン)

マスノスケ(チヌークサーモン)の画像(出典:ウィキぺディア・PD)・not edited.
私自身、今までに一度だけ実物を見る機会がありました。30年ほど前、函館の生鮮市場だったと記憶しています。全長130㌢ぐらい、「よく太った立派な鮭だ!」とは思いましたが、あとで考えるとその魚が「鱒之介」だったことに気が付いたのは数年後で、今思えばもっとよく観察して、切り身を買って食べておくべきだったと悔やまれます。
「介」ってなに?
官位の「介(すけ)」は、古代日本の律令時代における国司(こくし)の役職名のひとつ。四等官制のなかでランク二位にあたる役職です。(国司:古代から中世にかけての日本で、中央政府〔朝廷〕から地方の国に派遣された行政官のこと)
- 守(かみ):長官。地方の国のトップ。中央にあって、その国の行政・司法・軍事・経済などを統括する。(現代の都道府県知事?)
- 介(すけ):次官。守を補佐し、国ごとに常駐して実務の多くを担う事実上その地方のトップ。
- 掾(じょう):三番手。事務や庶務を担当。
- 目(さかん):末席。現場の細かな業務を担う。
時代が進み、武家社会になると武士たちが「○○介」と名乗るようになった。例えば、赤穂浪士の憎まれ役「吉良上野介」などが有名ですが、これは本来の官職というより名誉や格式を示す称号として使われるようになったとされています。また「介」という字には、間に立って支える、調和するという意味があるそうで、官位としても人と人、中央と地方をつなぐ役割だったと思われますが、魚に対しては「味」「姿」「大きさ」に対する「尊称」でしょう。
分類
サケ目(Salmoniformes)・サケ科(Salmonidae)・タイヘイヨウサケ属(Oncorhynchus)・マスノスケ(Oncorhynchus tschawytscha)〔種〕、英語名は「King salmon」(キングサーモン)あるいは「Chinook salmon」(チヌークサーモン)。MAXサイズは体長約1.5㍍、重さは56㌕前後(平均:体長85〜90㌢、、重さ10㌕ほど)。
生息域(回遊ルート)
アラスカ沖〜カムチャツカ半島〜オホーツク海〜日本海北部といった北太平洋の冷たい海域(6~14℃)の浅場(水深20~100㍍)を広く回遊している。日本では北海道周辺海域や東北の太平洋側をルートとして回遊はして来るものの、産卵のために母川回帰する川はないとされています。
生態(二つのタイプ)
マスノスケの寿命は3~8年ほど、2~5年かけて成熟し、一生に一度だけ産卵する「一回産卵型」で、産卵後は一生を終え自然に還る。「一回産卵型」はサケ属の中でもシロザケ・ベニザケ・ギンザケ・カラフトマス・ヤマメの降海型サクラマス・アマゴの降海型サツキマスなどに共通する生態です。
- 河川型(夏サケ):アジア系、カムチャッカ系と呼ばれ、沖合を生息海域とし1 ~ 4回、海洋での越冬し、2月から7月に遡上を開始し、より上流まで遡上を行い産卵をする。産卵期は、秋から冬。カムチャツカ系の産卵期は7-8月。幼魚期に川で1年以上過ごし、その降海・回遊し、産卵の数か月前(春〜夏)に母川へ戻る。
- 海洋型(秋サケ):アメリカ系として主にアラスカの北緯56度以南の沿岸海域を回遊、海洋での越冬はせず産卵直前に母川回帰する。数ヶ月間の海洋生活の後、7月から12月に遡上を開始し河川型ほど上流までは遡上しないで中流から下流域で産卵する。生まれてからすぐに(3か月ほど)海に出て、沿岸域を回遊。産卵直前の秋に母川へ戻る。
「日本には鱒之介が母川回帰する川はない!」とされてはいますが、迷子になったキングサーモンが、佐渡島や東北地方以北の河川で捕獲された例はあるそうで、また、南方の海域で漁獲された例としては、1984年(昭和59年)5月に千葉県館山市平砂浦(房総半島最南端)の沖合い約1海里(1,852㍍)に設置された定置網に体長115 cm、体重16kgのマスノスケ1尾が掛かった極めて珍しい事例が報告されています。
今年(2025年・令和7年)さけ・ます来遊状況
水産資源研究所の調査によると、北海道周辺海域や本州へのサケの来遊数(:8月から3月までの間に、日本沿岸の海面で捕らえた数〔沿岸漁獲数〕と河川などの内水面で捕らえた数〔河川捕獲数〕の合計)は、10月31日現在、対前年同期比:39㌫、平年(1989~2024年の平均値)同期比:16㌫となっていて極端に減少しています。

サケの来遊数の推移(出典:水産研究・教育機構〔FRA〕記者発表資料)・not edited.
今年(2025年・令和7年)の秋サケ(シロザケ)漁獲状況
北海道の漁業調整委員会の速報値(11月10日現在)によると、令和7年の北海道沿岸での秋サケの漁獲高は、対前年同期比:35.9㌫となり、激減しています。
鮭(サーモン)と鱒(トラウト)の違い?
生物学的な違いは曖昧で、鮭と鱒は明確に分けられません。「鱒科」という言葉は便宜的に使われることはありますが、生物学上の分類では「鱒科」(ますか)というカテゴリーは存在せず、「鱒」は「サケ科」に含まれています。
ニジマス(レインボートラウト)いろいろ
- ニジマスは北米大陸を原産地とするの淡水魚、日本では淡水での養殖のため、1877年(明治10年)アメリカから卵が輸入され、1926年(大正15年)ころから全国で養殖が本格化した。今では釣りの対象魚や食文化の一部として日本にすっかり溶け込んだ外来種です。雑食で繁殖力、生命力ともに強く、容易に人工繁殖することから、有用食用魚としての養殖研究の歴史が長い。特に、他のサケ・マス類との交雑種が研究され、食味の向上や高成長率、耐病性向上により養殖効率をあげるための研究がなされ、一部は商品化され流通している。
- トラウトサーモン:学術的な分類ではなく商品名です。本来淡水魚であるニジマスを海の環境で育て人口餌を与えて脂のりを良くし、見た目や味を「サーモン風」に仕上げた魚のことで刺身や寿司ネタとしても人気があり、スーパーなどでよく見かけます。
- スチールヘッド:ニジマスの降海型で、海に出る前にスモルト化(銀化:海水適応)し、海に出て成長、餌の違いのため淡水に留まるニジマスよりも大きく育ち(2~4倍)、釣り針にかかった際のジャンプ力やスピード、引きが強く、釣り人のあいだで人気が高い。
山梨県内ではキングサーモンとニジマスを掛け合わせた養殖魚を「富士之介」(ブランド名)として販売しているとか、機会があれば富士山を仰ぎつつ、焼いた「富士之介」を味わいながら「甲州ワイン」を飲んでみたいと思います。
広告
2 地球温暖化の海洋への影響についての新たな知見!
⑴ 海洋の酸素量が減少!
日本近海では、海水中溶存酸素量が長期的に減少していて、特に南方海域では世界平均以上の速さで進行しているとのこと。「日本の気候変動2025」では、海洋の酸素濃度が長期的に減少していることが報告されている。特に南方海域(下図右)では、世界平均よりも速いペースで酸素が減っていて、深海生態系や漁業資源への影響が心配です。

(出典:「日本の気候変動2025」文科省・気象庁)・not edited.
⑵ 表層だけでなく、亜表層(水深50〜100m)でも温度上昇が進行中!
日本海では、海表面だけでなく50〜100mの層でも明確な温暖化が観測されている。これは、長期観測(1976〜2022年)の結果から明らかになったもので、海洋熱波の発生頻度や強度の増加、さらには海洋生態系や漁業資源への影響といった重要な変化に関わる知見として注目されています。

日本海の亜表層(10~100㍍)の水温経年変化
(出典:水産研究・教育機構〔FRA〕記者発表資料)・not edited.
⑶ 日本海の春の「低塩化」現象が進行中!
日本海東部沿岸から沖合にかけて、春季、塩分濃度が低下する「低塩化」が進んでいることが確認された。これは、降水量や河川流量(雪解け水)の増加、沿岸淡水の沖合輸送が原因とされ、海洋循環や成層構造の変化を引き起こしているとし、将来的には海洋熱波の発生頻度や強度、水産資源の分布にも影響を及ぼす可能性があると指摘されています。

日本海東部沿岸~沖合にかけて、春季塩分濃度低下の経年変化
(出典:水産研究・教育機構〔FRA〕記者発表資料)・not edited.
⑷ 海面水位の上昇
日本周辺の海面水位は計算上、100年あたり約1.7mmの割合で上昇しているとし、今後さらに加速する可能性があり、高潮や沿岸浸水リスクの増加が懸念される。

GPS併設13地点の海面水位変化(2004~2024年):2004年を0としている。
(出典:気象庁HP、海洋の健康診断表より)・not edited.
広告
3 COP30閉幕・日本が今年も「化石賞」を受賞⁉
報道各社の論評を総合すると、今回のCOP30は、いわゆる「総論賛成、各論反対」状態で、各国の思惑が交錯し、「協働(ムチラオ:ポルトガル語)」を掲げながらも、実質的な前進に乏しく、むしろ国際的な分断と限界を露呈したというマイナス評価があります。
成果
- 「¹グローバル・ムチラオ決定」の採択
- COP30では、緩和・資金・適応などを横断する「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。これは、パリ協定10周年を機に、交渉から実施への移行を加速することを目的とした包括的な合意です。
- 適応資金の拡充目標
- 2035年までに適応資金を3倍にする努力目標が盛り込まれました。これは、気候災害への備えや途上国支援の強化を意図したものです。
- 「公正な移行」メカニズムの制度化
- 再生可能エネルギーへの移行において、地域社会や労働者の権利を守る「公正な移行」メカニズムが新設されました。
- 化石燃料廃止のロードマップは合意に至らなかった。
- 最大の争点だった「化石燃料からの脱却」に関する明確な工程表は、産油国などの反発により文書に盛り込まれませんでした。
- 市民社会の存在感高まる!
- 先住民や若者、市民団体が会議場内外で気候正義を訴え、約90カ国が脱化石燃料のロードマップ支持を表明するなど、社会的な機運は高まりました。
全体としては、実施段階への移行を意識した構成ではありましたが、政治的な対立が色濃く、温室効果ガス削減や脱化石燃料に関する明確な合意形成には至らなかったようです。
¹グローバル・ムチラオ決定:COP30で採択された包括的な合意文書。ポルトガル語の「ムチラオ(mutirão)」=「共同作業・協働」の精神に基づいています。以下の3項目を柱として、気候変動対策の実施を加速することを目指す。
- パリ協定10周年の節目
- 各国の温室効果ガス削減目標(NDC)や長期戦略の提出を促進する。
- 交渉から実施への移行
- これまでの議論を踏まえ、実際の行動と成果に焦点を移す。
- 実施・連帯・国際協力の加速
- 適応資金の拡充、公正な移行、透明性の向上などを通じて、各国の取り組みを後押しする。
アマゾン川流域の森林保全についての議論など!
開催地であるブラジル・ベレンが位置するアマゾン川流域の森林保全が大きな焦点となりました。特に、先住民の声と新たな森林基金をめぐる議論が注目を集め、ブラジル政府の主導で「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(TFFF)」という国際基金(総額1,250億ドル〔約19兆円〕規模を目標とし、うち20%を先住民や地域住民組織に配分、森林破壊の監視や伐採地の回復のため、80%が各国政府に配分されたうえ、森林監視や回復プロジェクトに使用されるというもの)が正式に発足しましたが、アマゾンの先住民や環境NGO団体は、「TFFFは森林破壊の根本原因(農業・鉱業・石油開発)に対処していない」として、基金に対する拒否声明を発表。「資金の80%が各国政府に渡る構造では、地域社会の声が届かない」との懸念が表明されました。会議会場周辺では、約5万人が参加するデモが行われ、「森を守れ」「石油開発反対」といった声が聞かれたとのこです。
化石賞の受賞⁉
日本は、昨年に続き化石賞を受賞しました。「化石賞」とは、気候変動対策に消極的または後退的な姿勢を示した国に対して、国際環境NGO(CAN)が主宰する不名誉な賞です。
<受賞の理由>
- 化石燃料の延命につながる技術の推進している。:日本はCCS(二酸化炭素回収・貯留)や水素・アンモニア混焼といった技術を「解決策」としてCOP会場でアピールしましたが、CANはこれを「化石燃料を終わらせるのではなく延命させるための技術的ごまかし」と批判しました。
- 先住民族の権利を侵害している。:日本の企業や政府がオーストラリアの巨大ガス事業に資金提供しており、これが先住民族の土地・水域・文化を脅かしているとされました。特に「自由意思による事前の十分な情報に基づく同意」が欠如している点が問題視されました。
- ²公正な移行(Just Transition)を妨害している。:COP30で議論された「公正な移行」の制度的枠組みに対し、日本は地域社会の声や公平性を反映することに消極的だったとされ、「偽りの希望を売り込んだ」と非難されました。
- ²公正な移行:気候変動対策や脱炭素社会への移行において、誰一人取り残さないことを目指す考え方です。特に、化石燃料産業などからの転換によって影響を受ける労働者や地域社会が、公平かつ持続可能な形で新しい社会へ移行できるようにすることが重視されている。
<日本政府の反論と主張>
- 選定基準が曖昧で恣意的である。:環境省幹部は、「日本は資源が乏しい中でも真剣に脱炭素化を進めている」と述べ、化石賞の選定基準に対して「不公平だ」として疑問を投げかけました。
- CCSや水素・アンモニア技術は“解決策”の一つである。:日本政府は、CCS(二酸化炭素回収・貯留システム)や水素・アンモニア混焼技術を、現実的かつ移行期に必要な技術として推進しており、「延命策」との批判には納得していない。
- 中国が選ばれないことへの不満:一部の日本政府関係者や専門家は、「温室効果ガス排出量が世界最大である中国が10年以上選ばれていないのはダブルスタンダードだ」、また、「国際環境NGOが中国国内の環境団体への弾圧のリスクを考慮しているためだ」とも指摘されています。
広告
4 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ ワシントン条約第20回締約国会議
11月27日にウズベキスタン・サマルカンドで開催されたワシントン条約締約国会議の分科会で、EU(欧州連合)が提出した「ウナギ全種の国際取引規制案」は否決された旨のニュースに「ホッ!」としましたが。本会議(全体会議)が12月5日に予定されていて、出席国の1/3以上が再投票を求めれば再び採決が行われるとのことで、まだ安心はできない状況なのだそうです。なんとも「気がもめる今日このごろ」です。
⑵ ところてん(心太・心天)
干した天草(てんぐさ)の煮汁を固めて作る「ところてん」は、「今や昔のおやつ」になってしまったのでしょうか?「天突き」(てんつき)と名付けられた木製の器具も、ない家庭の方が多数派なのでは?
原料の天草(テングサ)は、マクサ・オオブサ・オニクサ・オバクサ・ヒラクサ・シマテングサ・ヒメテングサ・ユイキリなど、一部に属・科が異なるものもありますが、複数の紅藻類を含むこれらを総称してテングサとして扱われています。
採取したテングサは、3~5日間天日干しにして色素が抜け白くなるまで乾燥し、貝殻や付着ゴミを取り除き梱包、出荷しますが、降雨や虫による食害、朝夕の始末、真水洗いなどたいへん多くの手間がかかります。
伊豆大島では、例年4~10月、素潜りやフーカー潜水器を使った潜水漁により採捕しますが、黒潮大蛇行の影響や海水温度の上昇による磯焼けで収穫量が、ここ6年間で1/45にまで減少しているとして、藻場の回復のため「鉄鋼スラグ」(製鉄の過程で生ずる残渣)と「腐植土」を混ぜたものをドンゴロス(麻袋)に入れて海中に沈めたそうです。
この試みは、スラグに含まれる鉄分などの栄養素により、海藻類が生育しやすい環境を作り出そうという取り組みで、全国各地の海で実験的に実施されているとのことです!収穫量アップ・藻場再生に期待します。
⑶ 黒潮流路と海水表面温度


(上記2葉の出典は海上保安庁・海洋速報)・not edited.
四方海話85 ーときの話題ー§41 おわり
次回は四方海話86 ーときの話題ー§42 です。

コメント