四方海話94

ーときの話題ー §50

1 海洋プラスチック条約(プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書)

2 国際海峡

3 気になるニュース・トピック・心配ごと

⑴ クジラの化石(広島県庄原市)

⑵ イワシ・クロマグロ大漁・スルメイカ(マイカ)の不漁

⑶ ヨーロッパも熱波!


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1 海洋プラスチック条約(プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書)

 海洋プラスチック条約とは

 国連環境計画(UNEP)の下に設置された、国連環境総会(UNEA:環境問題に関する最高意思決定機関、世界193か国が参加し、地球環境に関する国際ルールや条約の方向性を決める場)、2022年3月の 第5回国連環境総会(UNEA5.2) で 「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束に向けて」が採択され、 INC(政府間交渉委員会)が設置されましたが、INC1〜5.3 まで(合計7回)の委員会では交渉が難航し、会期内の合意ができず、現在も交渉継続中(合意未達)です。

 3つの大きな対立軸

 1⃣ プラスチック“生産規制”を入れるか否か?(核心部分)

  • 生産規制を入れたい国(EU・島嶼国など)の主張は
    • プラスチック汚染の根本原因は「生産量の増加」である
    • 生産上限や段階的削減を条約に明記すべきである
    • 化学物質規制も強化すべきである
  • 生産規制に反対する国(産油国・米国・中国など)の主張
    • プラスチックは石油化学産業の基盤である
    • 生産規制は経済構造に直撃することとなる
    • 各国の事情に応じた“自主的アプローチ”に任せる

 2⃣ 条約の“範囲”をどこまで広げるか?

 UNEA決議では「ライフサイクル全体」が対象とされているが、生産・使用・廃棄・化学物質・海洋流出・健康への影響など、論点が多すぎて各国の利害が衝突しやすい。

 3⃣ INC5が分割されるほどの「合意不能状態」となっている ⇒ 「条約の骨格すら固まらない」ほど対立が深い。

 日本が非公式少数国会合を主催  

 非公式少数国会合(プラスチック汚染条約の非公式協議)が、今年3月1日〜3日の間、東京で開催されました(日本・EU・米国・中国・インド・サウジアラビアなど約20の国・地域が参加)。この協議では「公式な合意」はなかったものの、交渉関係者が「建設的だった」と評価する程度の「前向きな進展」があったと報じられています。

 「INC5.4」はいつ開催されるのか?

 5月末現在

  • 6月3–4日:¹HOD 第3回バーチャル会合
  • 6月30日〜7月3日:HOD 対面会合(ナイロビ)
    • ¹HOD (Heads of Delegation):INC(プラスチック汚染条約交渉)に参加する各国の 代表団長(大使級・首席交渉官) のこと。

 が予定されているとのことですから、実際には「2026年9〜10月」ころになるのでしょうか?

 次回の国連環境総会(UNEA)は、2027年12月6〜10日(UNEA‑8、於ケニア・ナイロビ〔UNEP本部〕)に決定されています。それまでに「条約草案」の完成が待たれます。

 日本の立ち位置

 2019年6月の「G20大阪サミット」の際の議長国として「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染ゼロにする」旨の日本の基本的姿勢に変更はないようです。

 日本の国連「海洋プラスチック条約(Global Plastics Treaty)」交渉の基本姿勢は

  • 生産規制には慎重(産油国寄り)
    • EU諸国や太平洋島嶼国は「プラスチック生産量の削減」を条約の中心に据えようとしているが、日本は 生産量削減の義務化には消極的です。背景として石油化学産業・製造業への影響が大きいことから、国内政策の延長線上に生産規制を念頭に置いていない。
  • 廃棄物管理・リサイクル強化を中心としている(アジア諸国の現実に即す)
    • 日本は 「ライフサイクル全体」には賛成するが、重点は下流対策。
    • 国内政策(プラスチック資源循環促進法)も、使用抑制・リサイクル・サーマルリサイクルを中心としている。⇒ 国内政策の延長線上で国際交渉を進める。
    • 国際的交渉でも 廃棄物管理のインフラ整備・リサイクル技術・科学技術的協力を主要な論点としています。
  • EUと産油国の橋渡し役を志向
    • EU・島嶼国(上流規制) vs 産油国(下流限定)の対立が激化する中、 日本は 「双方が参加できる実効的な条約」を掲げて調整役を志向している。⇒ 2026年3月の東京非公式少数国会合を主催し、交渉の再起動に向けた実務者協議を主導した。

 海洋プラスチックゴミ(マイクロプラスチック)の分布図

地球の海洋温度分布を示すカラーマップ。赤から青へのグラデーションで、温かい海域と冷たい海域が視覚的に表現されている。

海洋マイクロプラスチック(330µm以上の粒子密度)の海洋分布図

(出典:²環境省・AOMI(Atlas of Ocean Microplastics, 2024)を基にAI処理)・not edited.

  • ²環境省・AOMI:環境省が2024年に公開した 「海洋マイクロプラスチックの全球分布データベース」のこと ⇒ 環境省が世界の研究者と連携して構築した、 海洋マイクロプラスチックの「実測分布地図」(https://aomi.env.go.jp)  

 海洋マイクロプラスチックに対する認識(環境省)

  • 海洋プラスチックは「海の問題」ではなく「陸からの流出が問題」で、海で拾うだけでは解決しない。陸域での発生抑制が必要である。
  • マイクロプラスチックは、海洋生態系に拡散することにより生物の誤食や窒息を招くだけでなく「化学物質を運ぶ媒体」として危険な存在である。(POPs・PFAS・PFASなどを吸着し、生物に取り込まれる可能性がある。
  • 海洋表層だけでなく“大気・深海”にも広がる地球規模の汚染物質である。(南極海・北極海・富士山頂・大気中でも検出されている。)
  • リサイクルだけでは限界 がある。「リサイクルは成功しているとは言えず、生産量そのものを減らす必要がある。」(環境白書)

 世界のプラスチック廃棄量の将来予測

プラスチックの生産量、処分量、リサイクル量の推移を示したグラフ。1950年から2050年までのデータを含む。

(出典:令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書〔環境省〕)・not edited.

  • UNEP報告書をベースにした将来の推計
  • 1950年〜2015年までの累積廃棄量
  • 2050年までの廃棄量予測(250億トン発生、120億トンが埋立・自然投棄)
  • 海洋流出量そのものではないが、海洋流出の「源流」となる廃棄量の増加を示す

 海洋プラスチックによる海の汚染は、プラ廃棄物が毎年約 1,100万トン(中心値)が 海に流入し、「2050年には海で生きている魚の量より重くなる可能性がある」とも言われ、「海洋は既にプラスチックスープだ!」との指摘もあります。この危機感が、交渉の原動力ですが、交渉が停滞している間も流入は止まらず、ますます濃くなるばかりです。

 「海洋プラスチック条約」の行方は、2026年以降の再交渉でどこまで「生産規制」の溝を埋められるかにかかっている。 国際社会は依然として「合意への道」を模索し続けている。


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2 国際海峡

 国連海洋法条約(³UNCLOS)上の定義(第37条)

 「公海または排他的経済水域(EEZ)の一部と別の公海またはEEZを結び、国際航行に使用されている海峡」と規定されています。

  • 地理的要件
    • 海峡が 公海/EEZ と 公海/EEZ をつないでいること。(両端が領海だけで閉じている場合は該当しないとされる。)
  • 機能的要件(国際航行の実態)
    • 実際に 国際航行に使用されている こと。(交通量の多寡ではなく、国際航行としての利用実態があること。)
  • 代替ルートの有無(UNCLOS 36条)
    • 海峡の外側に 同等に便利な公海/EEZルート が存在する場合、 その海峡は国際海峡扱いにならない。
  • 法的効果(UNCLOS 第38条)
    • すべての船舶および航空機は、妨げられることのない通過通航権を享受する。( 通過通航とは「継続的かつ迅速な通過」のための航行・飛行です。)
  • ³UNCLOS:United Nations Convention on the Law of the Sea(国連海洋法条約) の略称。海洋に関するあらゆるルール(領海・EEZ・大陸棚・航行・海洋環境保護など)を包括的に定めた国際条約。 1982年採択、1994年発効。日本も加盟済み、加盟国172ヵ国、イラン・米国は非締約国です。 

 世界の主な国際海峡

  • アジア
    • ホルムズ海峡(Strait of Hormuz):世界の石油供給の約 1/5 が通過する最重要チョークポイント
    • マラッカ海峡(Strait of Malacca):世界で最も交通量の多い航路の一つ。太平洋とインド洋を結ぶ。
    • バシー海峡(Bashi Channel):台湾とフィリピン間、太平洋と南シナ海を結ぶ戦略海域。
    • スンダ海峡(Sunda Strait):ジャワ島とスマトラ島の間。
    • ロンボク海峡(Lombok Strait):深度が深く大型船の代替ルート。
    • 台湾海峡(Taiwan Strait):国際航行に使用されるが、UNCLOS上は「代替航路が存在する場合は通過通航権の例外」とされている。
  • 中東・アフリカ
    • バブ・エル・マンデブ海峡(Bab el-Mandeb):紅海とアデン湾を結び、スエズ運河航路の要衝。
    • ティラン海峡(Strait of Tiran):紅海の最北端、アカバ湾の入口に位置し、ヨルダンとイスラエルにとって唯一、外洋アクセスが可能で両国にとっては重要な海峡。
  • ヨーロッパ
    • ジブラルタル海峡(Strait of Gibraltar):大西洋と地中海を結ぶ最重要海峡。
    • ドーバー海峡(Strait of Dover):世界で最も交通量の多い海峡の一つ。英仏海峡。
    • ボスポラス海峡(Bosporus):黒海とマルマラ海を結ぶ。⁴モントルー条約で特別制度を設けている。UNCLOS の通過通航制度の 適用外。
    • ダーダネルス海峡(Dardanelles):マルマラ海とエーゲ海を結ぶ。ボスポラス海峡同様、モントルー条約が適用される。
    • デンマーク海峡群(Danish Straits:スンド海峡・ベルト海峡など):北海とバルト海を結ぶ。
  • アメリカ大陸
    • フロリダ海峡(Straits of Florida):大西洋とメキシコ湾を結ぶ。
    • マゼラン海峡(Strait of Magellan):南米大陸南端の伝統的航路。
  • その他
    • ベーリング海峡(Bering Strait):北極海と太平洋を結ぶ海峡。

 ⁴モントルー条約:トルコ海峡(ボスポラス海峡・ダーダネルス海峡)を通る軍艦の通航を厳しく管理し、商船の通航は原則自由とする国際条約。 さらに、戦時にはトルコが海峡を閉鎖できる特別権限を認めている。

 日本周辺の国際海峡

 実務上は国際海峡として扱われるが、UNCLOS の通過通航権は適用されない、日本独自の「特定海域」制度として運用されている。

  • 宗谷海峡:北海道–サハリン
  • 津軽海峡:北海道–本州
  • 対馬海峡 東水道:九州–対馬
  • 対馬海峡 西水道:対馬–韓国
  • 大隅海峡:九州–種子島

 台湾海峡は?

 国際法学・各国政府の主張・UNCLOS条文を総合すると、台湾海峡は“国際航行に使用される海峡”であり、自由航行権が強く保護されるという解釈が国際的に優勢ではありますが、中国はこれを否定し、独自の解釈を主張しています。曰く、「台湾は中国の一部である」という国家主権論に基づき、台湾海峡(海域)は中国の内海・領海・接続水域・EEZで構成され、「国際水域」は存在しないとし、台湾海峡は中国の主権・管轄権が及ぶ海域であると主張しています。

 国際海峡の沿岸国が通航料を徴収することの可否?

 国際海峡は「世界の公共財(global commons)」として扱われるため、UNCLOS 第44条は、国際航行に使用される海峡の沿岸国に課される義務を定めています。

  • 沿岸国は通過通航を妨害してはならない
    • 通過通航(transit passage)は、国際海峡を「継続的かつ迅速に」通過する権利。
    • 沿岸国は、軍艦・商船・航空機を含むすべての通過を妨げる措置を取れない。
  • 通過通航に対して課徴金(通航料)を課してはならない
    • 通航料、通峡料、トン税、航行税など、あらゆる名目の料金徴収が禁止。
    • これは国際海峡が「世界の公共財」として扱われるため。
  • 沿岸国は海峡の安全確保のための必要な措置をとる義務がある
    • 航行安全のための灯台・航路標識の設置などは義務。
    • その費用を通航船舶に課すことはできない。

 国際海峡の法的地位は、UNCLOS の条文だけで完結するものではなく、沿岸国の利害、歴史的経緯、そして国際慣行が折り重なった動的な均衡の上に成り立っている。 現在、この世界経済を支える要衝は、国際法の抽象原理と現実の国際関係が交差し、その運用のあり方が問われ続ける最良の教材であると同時に、時に戦争の駆け引きの道具ともなっている。 だからこそ、海図に刻まれたこの狭隘な水域は、国家間の思惑や力学に左右されることなく、国際社会の理性に基づき、通航するすべての船舶の安全が確実に保障されるものでなければならない。


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3 気になるニュース・トピック・心配ごと

⑴ クジラの化石(広島県庄原市)

 庄原市の位置

日本の地形図、広島県を含む地域の地図です。

広島県庄原市の位置(赤丸):国土地理院地図に著者作図

 庄原市では過去40年で少なくとも19体以上ものクジラ化石が確認されているとのこと。その中のひとつは、1982年(昭和57年)8月、広島県庄原市門田町を流れる西城川河床の、約1600万年前の砂岩層(備北層群)で発見され、発掘・調査の後、「ショウバラクジラ」と名付けられました。庄原地域で発見された他の複数の中新世クジラ化石とともに「庄原市立比和自然科学博物館」に展示・公開され、また、2023年には3体分の新たな化石(うち1体はほぼ全身骨格)が確認されたそうです。

 「ショウバラクジラ」の概要

  • 学名:Diorocetus shobarensis(ディオロケトゥス・ショバレンシス)
  • 生存年代:新生代新第三紀中新世前期中葉(約2043万年前から約1597万年前・⁵バーディガリアン全期
  • 分類:鯨偶蹄目・ヒゲクジラ亜目・ナガスクジラ上科・ディオロケトゥス科・ディオロケトゥスに分類される
  • 産出層:広島県北部〜岡山県に分布する中新世の地層群(備北層群:海成層と陸成層が混在し、化石(貝・植物・クジラなど)を豊富に含む堆積層)で産出、生存当時は「⁶古瀬戸内海」と考えられる浅海堆積環境だったとしています。

 ⁵バーディガリアン:地質時代区分⇒中期中新世(約2043万年前~約1597万年前)に相当する。この時代の地球は、現在より温暖(全球平均気温は現在より 3〜5℃ 高かった?)で海が広がり(海水面は現在より 40〜60 m 高かった?)、サメ類(特にメガロドンの祖先)やクジラ類が多様化した「海の黄金期」。大陸縁辺部の日本列島は徐々に大陸から離れつつあり、古瀬戸内海が形成され、庄原の地は浅い内海としてクジラが回遊・繁殖する環境にあった。

 ⁶古瀬戸内海:約2000万年前~約1600万年前、広島・岡山・島根・愛媛など、現在の中国・四国の内陸部まで海が入り込んでいたとされ、外洋とのつながりはあったものの静かな「内海」を形成していた由

 庄原市で化石が発見された「ショウバラクジラ」以外のヒゲクジラ

  • ヒロセヒバクジラ(Hibacetus hirosei):庄原市で発見されたヒゲクジラ化石中、唯一の新属新種で原始的ヒゲクジラの特徴(顎の形態や頭骨の構造)を残す。ディオロケトゥス科(Diorocetidae)に近縁ではあるが、形態が独特で、既存属に分類できなかった。体長は推定3〜5mで中新世の中型ヒゲクジラとされている。
  • ヤマオカクジラ(Parietobalaena yamaokai):中新世のヒゲクジラで、外洋性の特徴を備えることから、当時の庄原が外洋とつながる広い内海だったことを示す。顎の構造や頭骨の比率が現代のヒゲクジラに近く、体長は推定5〜6m前後とやや大きい。

 クジラに限らず海棲動物の化石は世界中の砂漠や山地からも見つかり、その場所が太古には海だったことを物語っています。庄原市での発見もその一つですが、ここでは複数種のヒゲクジラに加え、6〜8体もの子クジラが含まれている点が際立っています。「親子だったのか?」「何を食べ、どのような生活をしていたのか?」「なぜ内陸の狭い地域にこれほど集中するのか?」など、1600万年前の海に生きたクジラたちの姿は、今も私たちの想像力や好奇心を強く掻き立て、揺さぶり続けています。


⑵ イワシ・クロマグロ大漁・スルメイカ(マイカ)の不漁

 今年の春は、日本海側で「イワシ」・「クロマグロ」ともに豊漁との報道がありました。特に、新潟県佐渡ヶ島・石川県・福井県を中心に両種が大漁由。

 まず、「イワシ」についてですが、主な漁法は「巻き網漁」です。

魚群を囲む漁船と漁網のイラスト
まき網漁

巻き網漁の画像(出典:農水省HP)・not edited.

  マイワシ(対馬暖流系群)の分布と漁獲量の推移

マイワシ(対馬暖流系群)の分布図(左)と漁獲量の推移(右)(出典:水産庁HP)・not edited.

  • 分布域:東シナ海北部から日本海北部に広く分布する。産卵場は日本の沿岸。分布域、産卵場は資源量とともに変化すると考えられている。(水産庁)
  • 漁獲量の推移:漁獲量は、1970年代から増加し、1983〜1991年は100万トンを超えた。その後急速に減少し、2001年には1千トンとなった。2011年以降は増減しながら横ばいで推移し、2023年に10万トンを超え、2024年は14.4万トンであった。(水産庁)

 カタクチイワシ(対馬暖流系群)の分布と漁獲量の推移

カタクチイワシ(対馬暖流系群)の分布図(左)と漁獲量の推移(右)(出典:水産庁HP)・not edited.

  • 分布図:日本海では日本・朝鮮半島・沿海州の沿岸域を中心に分布すると考えられている。これに加えて、日本海の中央部や間宮海峡以南の北西部においても本種の分布報告があることから分布域は沿岸域から沖合域まで広範囲に及ぶと考えられる。(水産庁)
  • 漁獲量の推移:シラスを除いた漁獲量は1990年代後半には10万トンを超えていたが、2004年には6万1千トンとなり、2005~2008年にかけて9万7千トンまで増加し、その後は4万4千トンから6万4千トンの範囲で推移している。2020年の漁獲量は4万6千トンであった。(水産庁)

 ウルメイワシの日本海側漁獲量は、 マイワシ・カタクチイワシほど大規模ではなく、数千〜1万トン台なので省略します。

 クロマグロの大漁

 イワシの群れを追って「クロマグロ」も日本海を北上し、5月中旬~下旬にかけて、新潟県佐渡ヶ島・石川県・福井県では例年の数倍規模のマグロ来遊があり、定置網が揚がらず止む無く放流したとの報道もありました。

 津軽海峡の「スルメイカ」(マイカ)不漁

 例年であればスルメイカは6月ごろから津軽海峡に滞留するが、2026年は異常高水温と強い対馬暖流に加え、津軽海峡周辺に来遊したクロマグロの大群による捕食圧も重なり、群れが早期に散開して太平洋側へ抜けた可能性が高い。

 函館でのイカ漁の漁期は 毎年 6月1日 解禁 ~ 12月ごろまでで、漁期が始まったころには群れが逃げてしまった後であった可能性があります。

 「スルメイカ」(マイカ)はどこに行ったのか?

 現状では、三陸沖、下北半島太平洋側、道東沖(釧路〜根室〜厚岸〜花咲岬沖)で好漁が続いているとのことです。

 暖流(黒潮・対馬海流)の強度と海面水温

6月1日の海流(左)と海面水温(右)(出典:気象庁、海洋の健康診断より)・not edited.

 気候変動による海水温の上昇と海流の変化は、イワシの増加、クロマグロの大量来遊、スルメイカの不漁という状況は、地域の漁業と食文化を同時に揺さぶっている。これは単なる資源変動ではなく、水産政策・流通インフラ・地域経済の脆弱性を露呈させた構造的課題です。変化する海に対し、従来の漁場や季節性を前提とした制度は限界を迎えている。いま求められているのは、科学データに基づく柔軟な資源管理、変動に対応できる流通・加工の体制、そして地域の食文化を守るための政策的支援である。気候変動による海の変化を前提に柔軟な社会システムを構築できるかどうかが、これからの日本の水産と食文化の持続を左右する。


⑶ ヨーロッパも熱波!

 2026年5月、ヨーロッパは、「異常レベルの熱波」に襲われ、 35〜40℃超の高温が広域で発生し、観測史上記録を次々更新した。 熱波の主因は、サハラ砂漠由来の高気圧(ヒートドーム)と気候変動による気温の上昇だとし、6月に入ってもその傾向が続いている由。

 季節外れの猛暑(5月)

  1. イギリス:ロンドンで35.1℃(5月ある日最高気温:観測史上最高)
  2. フランス:37.1℃(同上)、死者7名が報告されている。
  3. スペイン・ポルトガル:40℃超(同上:平年より+10〜16℃) 

 熱波の主因

 サハラ砂漠から張り出した高気圧がヨーロッパを直撃、熱気が滞留し(ヒートドームを形成)し、急激な気温上昇(+10〜15℃)を引き起こしたとされている。

 ヒートドーム現象?

 大気が蓋や帽子で覆われたように熱い空気を閉じ込めることで発生する、深刻な暑さを伴う気象現象である。ヒートドームは、強い高気圧が異常なほど長時間停滞することで対流や降水が妨げられ、熱気が特定の領域内に「閉じ込められる」ことで発生する。(Wikipedia)

高気圧のシンボルと地図を示す気象図

 ヒートドーム現象の模式図・北米大陸の例(出典:ウィキぺディアPD・著者:アメリカ国立気象局/国立海洋局)・not edited.

 ヨーロッパ熱波の今後の見通し?

 ECMWF(ヨーロッパ23か国が共同運営する“世界最高精度の中期気象予報センター)やNOAA(アメリカ海洋大気庁)などの各気象機関の予測も「2026年のヨーロッパは、5月末の歴史的熱波を引き金に、6月以降もヒートドームが再形成されやすい大気パターンが続くため、夏全体で熱波が断続的に発生し、干ばつ・山火事リスクが高まる見通しである。」としています。

 ヒートドーム現象と日本?

 日本の猛暑の背景には、太平洋高気圧とチベット高気圧が重なる「二階建ての高気圧」がつくる強力な「熱のフタ」=「ヒートドーム」が深く関わっているとされています。さらに黒潮の高い海面水温やフェーン現象が加わると、熱が地表に閉じ込められ、40℃級の極端な高温が発生しやすい大気構造が生まれます。2018年・2022年・2023年の記録的猛暑は、このヒートドーム型の典型例で、日本は今後も気候変動の影響でより強く・長く続くヒートドームに直面すると見られています。


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四方海話94 ーときの話題ー§50 おわり

次は 四方海話95 ーときの話題ー§51 です。

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