ー ときの話題 ー §49
1 パフィン(ダイビングも得意な海鳥)
2 日本版ウェルビーイングとCDMと海上交通安全
3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 南極海の氷山「A23a」崩壊⁈
⑵ 今年の夏はエルニーニョ?
⑶「1.5℃の約束」の達成状況
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1 パフィン(ダイビングも得意な海鳥)
あまり馴染みのない「パフィン」と呼ばれる「海鳥」の仲間は、以下の3種類が居ます。
パフィンの種類(3種類)
- ニシツノメドリ(Atlantic Puffin):最も有名なパフィンですが日本には来ない。顔が白く、くちばしは赤と黄色。北大西洋(アイスランド・ノルウェー・英国など)に分布する。
- ツノメドリ(Horned Puffin):目の上に“角”のような黒い模様がある。顔は白、くちばしはオレンジ。アラスカ周辺の北太平洋に生息している。日本では繁殖例がなく、飛来数も極端に少ない「迷い鳥」扱いだそうです。
- エトピリカ(Tufted Puffin):日本でも見られる種類で、黒い体に金色の“耳毛”が特徴。北海道・千島列島・アリューシャン列島など北太平洋に分布している。

エトピリカの画像(AI生成:Copiⅼot)
「エトピリカ」は日本では北海道東部の「ユルリ島」・「モユルリ島」(国指定の鳥獣保護区・北海道指定天然記念物=原則立ち入り禁止)に繁殖地がある。昔見た写真に、飛んでいる「エトピリカ」が小魚をたくさん咥えているシーンがあり、「なぜ綺麗に並べて咥えることができるのか?」不思議に思っていましたが、
綺麗に並べて咥えることができる理由
そのメカニズムは嘴の内側にある細かいトゲ状の突起と表面がザラザラとした舌、それと鳥類に共通である下顎の柔軟性にあり、嘴の先端で小魚(イカナゴなど)やオキアミ捕まえては順次喉元まで送り舌で保持し、これを繰り返して画像のように何匹も咥え、巣に持ち帰って雛に与えるという子育てパターンのようです。パフィンは他の海鳥のように、一度飲み込んでから吐き戻して雛に餌を与えることはありません。
エトピリカの分類・生態・特徴など
分類: チドリ目ウミスズメ科ツノメドリ属
大きさ:体長40㌢弱、体重約700~900㌘
夏羽と冬羽
- 夏羽:白い顔・黄色い飾り羽・橙色の大きな嘴(上記イラスト参照)
- 冬羽:灰色の顔・飾り羽は消える
名前の由来:アイヌ語で「美しいくちばし」の意味
生息環境と分布
- 北太平洋の亜寒帯海域に広く分布(アラスカ〜千島〜北海道)
- 一年の大半を外洋(洋上)で生活し、繁殖期のみ陸に戻る
- かつては北海道東部の島々で多数繁殖していましたが、現在は根室(花咲)港沖の(ユルリ島・モユルリ島)のみとなってしまいました。

根室(花咲)港沖のユルリ島とモユルリ島(国土地理院地図上に著者作図)
繁殖(4〜8月)
- 繁殖場所:天敵が少ない断崖上部の草地や土中に巣穴を掘る(くちばしと足で掘る)か岩の隙間を利用することもある。
- 産卵数:1シーズンに1個のみ。
- 抱卵期間:42〜46日(雌雄交代で)。
- 巣立ち:孵化後44〜47日で巣立ち。
餌と潜水能力
- 餌:イカナゴ・ニシン・カタクチイワシなどの小魚、オキアミなどの甲殻類、イカなど。
- 潜水能力:通常水深10㍍前後まで潜水して餌を確保する。(最大40㍍、一説には60㍍まで潜るとされていますが、40㍍以上となると暗くて魚を追えないのでは?)、水中で翼を使って素早く泳ぐことができる。
絶滅危惧種?
- 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、北太平洋全域に数百万羽規模で生息しているため、LC(Least Concern/低危険)と評価している。
- 日本の「環境省レッドリスト」では、CR(絶滅危惧IA類)に分類 ⇒ 日本での繁殖地が狭い地域に限定され、個体数が十数羽レベルにまで減ってしまっているため、ごく近い将来絶滅の危険が極めて高いとされています。
- 1970年代以降、個体数は急減した!
- 主な要因
- 漁業による混獲(1970〜1990年代、サケ・マス流し網や沿岸の底刺し網に多くの成鳥が絡まり死んでしまった、また、越冬期の沖合流し網の影響もあった。)
- ネズミ(外来捕食者)による卵・雛の捕食(2013年の駆除活動でネズミ根絶に成功したが、個体数回復にはつながらなかった。)
- 他の海鳥(カモメなど)による餌の略奪・雛の捕食、オジロワシによる捕食・乱獲。
- 観光船などによる攪乱:島への上陸は禁止されているものの、海上からの接近は制限がなく、繁殖行動への影響が懸念されている。
- 気候変動による海洋環境の変化
- 海水温上昇 は 餌となる小魚等の分布を変化させ 採餌効率の低下につながるとして長期的減少要因として国際的にも指摘されている。
- 主な要因
北の海の夏を彩る「エトピリカ」は、いま日本では、道東の小さな島を訪れるだけの貴重な鳥となってしまいました。鮮やかな夏羽の美しさも、荒海を生き抜く力も、その全てが海の豊かさを映し出す物語の一部です。彼らがこれからも日本の北の空を飛び続けられるように、海とともに生きる私たちもまた、海洋環境と向き合い、可能な限り、保全のための努力を積み重ねていきたいと思います。
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2 日本版ウェルビーイングとCDMと海上交通安全政策
「ウェルビーイング」ってなに?
国の経済活動を計る指標として「GDP」(国内総生産:一定期間に国内で生み出された財・サービスの付加価値の合計)が使われますが、「GDPだけ見ていても国民の生活実態は分からない。」として2008年にフランス大統領ニコラ・サルコジ氏が設置した国際委員会(サルコジ委員会:委員長はノーベル経済学賞受賞者2名+フランスの経済学者1名)が提唱しました。曰く、
- GDPは経済の量を測るだけで、生活の質を反映していない。
- 「生活の質(Quality of Life)」を政策の中心に置くべきである。
- 主観的幸福(生活満足度)も正式な政策指標に入れる必要がある。
というものでしたが、現在は「経済協力開発機構」(¹OECD)の国際標準カテゴリーとして、「現在のウェルビーイング:11分野」と「将来のウェルビーイング:4資本」が示されています。
¹OECD:国連の専門機関ではなく独立した国際組織で、経済成長・途上国支援・自由貿易という3つの目的を掲げ、 国際経済の協調とルール形成を進める「世界最大の政策シンクタンク」(本部はフランス・パリ)。参加国38ヵ国(2026年現在):「オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国、イタリア、日本、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、チェコ、ハンガリー、韓国、ポーランド、スロバキア、チリ、エストニア、イスラエル、スロベニア、ラトビア、リトアニア、コロンビア、コスタリカ」⇒ 加盟交渉中の国:「ブラジル、アルゼンチン、ペルー、インドネシア、ルーマニア、ブルガリア」
現在のウェルビーイング:11分野
- 所得と富(Income & Wealth)
- 雇用と仕事の質(Jobs & Job Quality)
- 住宅(Housing)
- 健康状態(Health)
- 知識と技能(Education & Skills)
- 環境の質(Environmental Quality)
- 主観的幸福(Subjective Well-being)
- 安全(Safety)
- 仕事と生活のバランス(Work–Life Balance)
- 社会とのつながり(Social Connections)
- 市民参加(Civic Engagement)
将来のウェルビーイング:4資本
- 自然資本(Natural Capital)
- 経済資本(Economic Capital)
- 人的資本(Human Capital)
- 社会関係資本(Social Capital)
日本版ウェルビーイングとOECDのウェルビーイング指標
日本版ウェルビーイング(所管:内閣府)は 「主観的幸福度を政策に反映するための国内向け指標体系」となっている。 OECDのウェルビーイング指標(Better Life Index)は 「国際比較のための標準指標」で、その 目的・構造・測定方法・扱いにかなりの違いがみられます。
日本がOECDのウェルビーイング指標をそのまま採用しないのは、国際比較用の粗い?指標では日本の政策課題を十分に捉えられないため。日本版は、主観的幸福度や将来不安など、日本社会の特性に合わせて最適化された「国内向けの政策ツール」であるとされるが、
- 主観指標の扱いが曖昧で、科学的妥当性が弱い。
- 政策との因果関係が不明確である。
- OECDなど国際指標との互換性が低いため比較できない。
- 指標が多すぎて、優先順位が不明確。
- 自治体版ウェルビーイングとの連携が脆弱である。
- 政策反映の仕組みが弱く、実効性に疑問がある。
- “幸福度”の概念が曖昧で、哲学的議論が不足している。
などの批判があり、科学的妥当性・国際比較性・政策反映の仕組みが弱く、「ただ測るだけに終わってしまう」危険性を抱えている。
CDM(Construction Design and Management Regulations:英国の建設業の安全衛生規則)とは?
英国で、建設プロジェクトにおける安全衛生管理の責任を明確化にし、労働災害を減らす目的で1994年に導入された。建設に関わる発注者・設計者・施工者の安全責任を明確化し、事故を未然に防ぐための法制度で、英国の建設業界では、建設工事中の死亡災害を大幅に減らしたとして高く評価されている労働安全衛生にかかる規則です。
その中のTWC制度(Temporary Works Coordinator 制度)は直接的には「仮設構造物の安全を、現場で“唯一の統括責任者が管理する制度」で、CDMの基本理念を実現するために、仮設構造物の設計段階でのチェック・登録・停止権・文書化により事故の未然防止を図ろうとするものですが、この制度に学び、実践していれば、今年4月7日 夕刻に発生した「神奈川県川崎市扇島でのアンローダークレーン解体工事中の事故」を回避できた可能性は極めて高い。
これらは「安全文化」という深層的な要素を測り、改善する仕組みであり、ウェルビーイングの「Safety領域」を強化するための具体的で有効な手段になり得ます。
日本版ウェルビーイングは、生活者の主観的幸福を重視する点で重要な一歩ではありますが、深層の安全文化や制度成熟度を測る仕組みが欠落しているため、政策の実効性に限界が見て取れます。英国のCDM制度は、こうした深層指標の導入こそがウェルビーイングの質を高める上で不可欠であることを示しています。
日本がウェルビーイングを政策の中心に据えるのであれば、縦割り行政の構造的制約やムラ社会の壁を超え、CDMのような深層指標を取り入れることが求められています。
日本版ウェルビーイングと海上交通安全政策
日本版ウェルビーイング(Well-being)政策では、「安全・安心」を幸福の基盤と位置づけており、海上交通安全政策もその“安全領域”を具体的に担う政策分野とされてはいますが、海を利用する者全体の安全意識向上に繋げることができるかがキーポイントです。
2023年3月に発出された「交通政策審議会海事分科会・船舶交通安全部会」の「新たな時代における船舶交通をはじめとする海上の安全のための取組」(答申)は3年を経過し、次に発出されるのはまだ先ではありますが「第6次交通ビジョン」で、「日本版ウェルビーイング」が「OECDのウェルビーイング」(国際標準)にどこまで迫り、どのように反映され示されるのか、おおいに期待しているところです。
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3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 南極海の氷山「A23a」崩壊⁈
A23a 氷山にいま何が起きている?
「A23a」1986年に南極のフィルヒナー・ロンネ棚氷から分離して誕生、 その後30年以上海底に座礁しウェッデル海に留まり、2020年に再び動き出して、南大西洋のサウスジョージア島近海まで漂流して一旦動きを止め(座礁)、ペンギン・海獣などを脅かし、2025年7月ころ再びドリフトが始まりました。その後、サウスジョージアの東および北を通過し、2025年9月には海水温が高い海域で一部崩壊が観察されましたが、さらに急速に崩壊が進み、40年近く漂い続けた「かつての世界最大級の氷山」は、2025〜2026年に最終段階に入りました。

4月3日現在の「A23a」の衛星画像
(出典:https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/megaberg-ends-its-long-odyssey-at-sea/・著作:NASA)・not edited.

A23aの漂流の軌跡
(出典:https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/megaberg-ends-its-long-odyssey-at-sea/・著作:NASA)・not edited.
A23a の崩壊の影響
負の影響
- 氷片の大量拡散、漂流による船舶航行リスク増大
- 漁場の閉塞・氷片拡散による危険回避
- 生態系への影響・ペンギンやアザラシの餌場へのアクセス悪化(サウスジョージア島周辺)
- 海底生態系の破壊・氷山が海底を削ることで、底生生物群が破壊される
- 冷たい淡水が多量に海洋へ放出されることにより、表層の塩分濃度低下、海水密度の変化、局所的な海流の変化などがプランクトン分布や魚類の回遊に影響する可能性がある
正の影響
- 氷山融解は、海洋に 鉄分などの微量栄養素を供給し、 植物プランクトンの増加が見込まれ、以下の可能性が指摘されている
- 食物連鎖の基盤を強化
- 一時的な生産性向上
- 炭素吸収(生物ポンプ)の促進
海洋と大気の炭素循環・栄養塩循環・海氷形成の局所的変化などに影響するため、地球規模の気候システム研究上重要なケーススタディとなっているとのことです。
⑵ 今年の夏はエルニーニョ?
5月12日気象庁の大気海洋部からエルニーニョ監視速報(No.404)が発出されました。
現在は「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、エルニーニョ現象時の特徴に近づきつつある。今後、夏までにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(90%)。
との内容でした。

エルニーニョ監視指数の経過と予測(出典:気象庁、エルニーニョ監視速報)・not edited.

エルニーニョ監視指数の確率予測(出典:気象庁、エルニーニョ監視速報)・not edited.
エルニーニョ現象発生時の状態
エルニーニョ現象が発生している時には、東風が平常時よりも弱くなり、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まっています(下の図)。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなっています。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります。(気象庁の解説)

エルニーニョ発生時の模式図(出典:気象庁HP、「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」より)・not edited.
エルニーニョ発生時の夏季の日本への影響
エルニーニョ発生時の日本の夏(6〜8月)は、統計的に「冷夏・多雨・日照不足」になりやすいのが基本的なパターンですが、近年は温暖化の影響で「エルニーニョでも猛暑」が増えており、従来の典型パターンが崩れつつある?
2026年は「エルニーニョ=冷夏」という従来の図式が通用しないほど、温暖化と大気循環の変質が強く、結果として“エルニーニョでも猛暑”が起きやすい条件がそろっている由。
2026年が「エルニーニョでも猛暑」になりやすい理由
- 地球温暖化による“気温の上昇が圧倒的に強い
- 2020年代の日本の夏は、平年より+1〜2℃高いのが新しい平年となりつつあり、そのため、 エルニーニョによる冷却効果(−0.3〜−0.5℃)を上回る
- 2023年もエルニーニョ年だったが、日本は観測史上1位の猛暑となった
- 太平洋高気圧の張り出しが強くなる年が増えている
- 今までは、エルニーニョ時には「太平洋高気圧が弱い」⇒「梅雨前線が停滞しやすい」⇒「冷夏になりやすい」のパターンだったが、太平洋高気圧が“東西に広がる”タイプのエルニーニョ現象が増え、日本付近まで高気圧が張り出す猛暑パターンとなっている
- インド洋の海面水温が高く、アジアモンスーンが強化される
- インド洋が温かいと上昇気流が強まり、その反動で日本付近に下降気流(=晴れ・高温)が発生、このことはエルニーニョの冷夏効果を打ち消す ⇒ 2026年はインド洋が高温傾向で、「エルニーニョ+インド洋高温=猛暑」の組み合わせとなる?
- 偏西風の北偏が強まりやすい
- 偏西風が北へ押し上げられると、 日本列島は太平洋高気圧の直下に入りやすくなる ⇒ 2026年春〜初夏の予測では偏西風が北寄りとなり、冷気が日本に入りにくく暑さがこもりやすくなる!
- 黒潮の影響により日本周辺の海面水温が高い
- 黒潮・黒潮続流が高温傾向で、日本の沿岸海域の海面水温も平年より高い ⇒ 海水温が高いと、夜間の気温が下がらず、熱帯夜が増える ⇒ 最低気温の上昇
2026年は、エルニーニョが本来もたらす冷夏要因よりも、温暖化・インド洋高温・偏西風北偏・太平洋高気圧の強化といった“暑くする要因”が圧倒的に強いため、エルニーニョでも猛暑になりやすいとされています。
我ら日本人は ²「安禅(あんぜん)必ずしも山水を須(もち)いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」の境地で乗り切りましょう!
²「安禅必ずしも山水を須いず、心頭滅却すれば火も自ら涼し」(伝承では甲斐・恵林寺〔臨済宗〕の住職、快川紹喜〔かいせん じょうき〕が、1582年武田氏滅亡後に恵林寺が織田軍の焼き討ちにあった際、快川国師が炎に包まれながらこの句を唱え、寺の本堂もろとも亡くなったと伝えられています):大意「安らかな心を得るために、必ずしも山や川のような静かな場所は必要ではない。心を極限まで澄ませば、燃える火の中でさえ涼しく感じられるほどだ」⇒ 核心的な意味(禅的解釈)「心が澄み切れば、外の苦しみは苦しみでなくなり、真の安らぎは環境ではなく、心の在り方にある」とする。(原作者は杜荀鶴〔とじゅんかく〕:唐代末期〜五代初期に活躍した官僚〔進士〕で詩人、社会の矛盾や民衆の苦しみを鋭く描いた社会派詩人)。
⑶「1.5℃の約束」の達成状況
目標の達成状況(2026年)
各国の排出削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution/国が決定する貢献:パリ協定に基づき「全ての国が5年毎に提出する温室効果ガス削減の国家目標」)が必要とされる削減量に全く届いていないため、2026年時点で「1.5℃の約束(1.5℃目標)」は「達成から大きく外れている」というのが現状で、各国の2035年NDCを合計しても 2019年比で12%減にしかならない(必要量の約1/5程度)⇒ 現行政策では1.5℃は達成不可能というのが国際的な多数意見となっています。
目標達成に必要な削減量
2030年までに2010年比でCO₂を45%削減し、2035年までに2019年比で60%削減 、2050年には世界全体で実質ゼロ(Net Zero)とすることが求められていました。
達成が難しくなっているのはなぜか?
- 排出量は依然として増加傾向にある
- 各国のNDCが必要とされる水準に届かず、未提出の国も多い
- 化石燃料フェーズアウトの合意が進まない ⇒ COP交渉で工程表が弱体化し、脱化石の足並みが揃わない
- 途上国への支援(適応資金)が不足している
- 自然の炭素吸収源の弱体化
世界の気温はすでに1.5℃に接近し、レッドゾーンに入っている?!
- 2023〜2025年の世界平均気温は産業革命前比 +1.48℃(±0.13℃)⇐世界気象機関(WMO)
- 2025年単年では +1.44℃(±0.13℃)⇐世界気象機関(WMO)
- 現行政策では1.5℃達成はほぼ不可能である
- 排出削減スピードが圧倒的に不足している
- 化石燃料依存の構造が続き、資金も不足
- 気温はすでに1.5℃に迫っている
日本の最新NDC(令和7年2月18日提出)の概要
- 目標年と削減率:2030(▲46%目標)、2035(▲60%)、2040(▲73%)、2050ネットゼロ
- 主要な手段:再エネ・原子力発電の最大活用、・³LNGのトランジション利用・CCUS(CO2の回収・貯留・利用)・水素導入・石炭火力のフェードアウト
- 分野別の施策:産業界の省エネ・設備更新、運輸の次世代燃料・EV化、住宅・地域の省エネ化、⁴Scope3対応
³LNGのトランジション:LNG(液化天然ガス)を “脱炭素への移行期に使う橋渡し的な燃料(Bridge Fuel)として位置づける考え方” のこと。(LNGは燃焼時に排出するCO₂は石炭の約半分程度であり、同じ発熱量を得る場合のCO₂排出量は 石炭:原油:LNG ≒ 10:7.5:5.5 とされています。
⁴Scope3:自社の外側で起きる、事業に関連したすべての間接排出。 すなわち、原材料の調達から、物流、製品の使用・廃棄、投資までを含む“サプライチェーン全体のCO₂排出”のことを指します。
「1.5℃の約束」実現と現下の世界情勢についての国連の認識?
国連は、地球温暖化を1.5℃以内に抑えるという国際目標について、「依然として達成可能ではあるものの、極めて危機的な状況にある」と警告している。近年の地政学的リスクの高まり(ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の不安定化、エネルギー安全保障上の制約)は、短期的に脱炭素移行の進展を弱め、各国の気候対策に影響を及ぼしている。国連環境計画(UNEP)の分析によれば、各国が現行政策を維持した場合、2100年の世界平均気温は2.5〜2.9℃上昇する見通しであり、1.5℃目標とのギャップは拡大している。必要な低炭素技術はすでに存在し、実装可能性も高いにもかかわらず、排出削減を加速するために不可欠な政治的意思、政策の実行力、資金動員が決定的に不足していることが最大の課題であるとし、各国政府および企業は、これらのギャップを早急に埋めるため、政策強化、投資拡大、国際協力の加速を図る必要があるとしています。
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四方海話93 ーときの話題ー§49 おわり
次は 四方海話94 ーときの話題ー§50 です。

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