四方海話 49

― ときの話題 —   その8

??? スーパーエルニーニョ ???

 ・・ エルニーニョ・ラニーニャのおさらい ・・

 エルニーニョ現象とは、太平洋赤道付近の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より0.5℃以上高くなり、その状態が長期間続く現象で、その反対に海面水温が低くなるのがラニーニャ現象と呼ばれ、どちらも日本を含め世界中の異常な天候の要因となりうるとされています。(気象庁)

エルニーニョ現象:1997年11月(左)・ラニーニャ現象:1988年12月(右)・模式図(出典:気象庁HP)

 気象庁がエルニーニョ・ラニーニャ現象を監視している海域は、太平洋の赤道上の西経90度~同150度までの下図の海域で、観測衛星「ひまわり」や「しずく」による観測データを基に気象庁のスーパーコンピュータで解析しているのだそうです。

エルニーニョ・ラニーニャ監視海域(出典:気象庁HP:赤丸強調加筆)

 11月10日、気象庁が発表した「エルニーニョ監視速報」では(以下本文、原文のまま)

  • 10月の実況:今年の春からエルニーニョ現象が続いている。10月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は+2.2℃で、8月と9月と同じ値となり、基準値より高い値だった。エルニーニョ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の8月の値は+1.9℃で、上昇傾向が続いている。太平洋赤道域の海面水温は日付変更線付近から東部を中心に平年より高かった。海洋表層の水温は太平洋赤道域の日付変更線付近から東部を中心に平年より高かった。太平洋赤道域の日付変更線付近から東部の対流活動は平年より活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年より弱かった。このような太平洋赤道域の海洋と大気の状態は、エルニーニョ現象時の特徴を示している。以上から、今年の春からエルニーニョ現象が続いている。
  • 今後の見通し:今後、来年の春にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(80%)。実況では、太平洋赤道域の中部から東部にみられる海洋表層の暖水と、東部の海面水温が高い状態を維持している。大気結合モデルは大平洋赤道域の中部から東部にかけて海洋表層の暖水の東進が続き、予測期間中、エルニーニョ監視海域の海面水温が基準値より高い値で推移する可能性が高いと予測している。以上のことから、今後、来年の春にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(80%)。

としています。

エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値(出典:気象庁)

 上のグラフは2023年8月までの経過折れ線グラフ、黄色のボックスは気象庁のスーパーコンピューターで「大気海洋結合モデル」を使用した予測範囲(70%の確率でその範囲に入ると予測される)、ピンク色の範囲に入るとエルニーニョ現象、薄い青色の範囲に入るとラニーニャ現象の発生期間。エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値とは、その年の前年までの30年間の各月の平均値をいう。

 ・・ スーパーエルニーニョ ・・

 今年(2023年)の冬から来年の春は「スーパーエルニーニョ現象」になるのでは?との予想があります。

 スーパーエルニーニョ現象とは、エルニーニョ監視海域で海面水温が基準値よりもさらに1.5~3.0℃以上高くなる現象をいいます。典型的な例は過去3度記録されていて、以下にその際の状況を列記します。

  • 1982年(昭和57年)春~1983年(昭和58年)秋
    • 1982年(昭和57年)日本では、梅雨入りが遅く、記録的な少雨だった。7月には梅雨前線が活発となり関東以西では一転して多雨傾向となった。梅雨明けは関東、甲信、東北で8月上旬まで遅くなった。また、特に西日本では7・8月の平均気温が低く、多雨、日照不足で冷夏となり農作物に大きな被害があった。加えて、7月下旬には長崎県が集中豪雨に見舞われ(長崎大水害・昭和57年7月豪雨)が発生しました。
    • 1983年(昭和58年)は、全国的な長梅雨、梅雨寒が続き、6・7月には北日本で低温被害、山陰では豪雨災害が発生した。
  • 1997年(平成9年)春~1998年(平成10年)夏
    • 1997年(平成9年)西日本・中部地方で低気圧と梅雨前線の影響により大雨、鹿児島県では広範囲に土石流が発生しました。
    • 1998年(平成10年)8月、新潟県で豪雨災害(平成10年8月新潟豪雨)発生したほか、8月末に栃木県、茨城県、福島県で台風の影響による大雨で河川の氾濫が記録されています。
  • 2015年(平成27年)春~2016年(平成28年)春
    • 2015年(平成27年)9月、関東地方北部・東北地方南部を中心として、台風崩れの温帯低気圧に後続の台風から湿度が高い風が吹き込み、線状降水帯を形成して集中豪雨がありました。
    • 2016年(平成28年)発生時期が8月下旬で、スーパーエルニーニョとの関連は不明ですが、「平成28年台風第10号」として記録に残る特異な台風の発生がありました。どこが特異なのか?「非常に珍しい進路をとり、本土接近の途上2回もUターンした」「気象庁が台風に関する統計を取り始めて以来、初めて東北地方太平洋側(岩手県大船渡市)に上陸した」。この台風により岩手県や北海道で死者26人、行方不明者3人、負傷者14人の人的被害と、5,600棟以上の住宅被害があったほか、北海道の東部では大雨により鉄道路線網が寸断され、収穫期にあった「タマネギ」「ジャガイモ」「小豆」等の出荷や収穫に大きな影響が出ました。北海道原産のジャガイモを原料とするポテトチップスの発売延期や発売休止となったことで記憶に残っている方も多いと思います。

平成28年台風10号の進路図(出典:ウィキペディア)

 気象庁は、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差の先月(2023年10月)までの経過(折れ線グラフ:移動平均値ではないことに注意)と今後の予測を、エルニーニョ監視速報と同時に発表しています。(下表)

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差の先月までの経過(折れ線グラフ)と大気海洋結合モデルから得られた今後の予測(黄色のボックス)

(出典:気象庁、エルニーニョ監視速報)

 スーパーエルニーニョ現象については、地球上のどの地域でどのような現象が想定できるのか、地球温暖化や海洋熱波とどのような関係があるのか、あるいは相乗効果で異常気象として何が起こるのか等々、未解明の事柄も多い。

 国連の世界気象機関(WMO)は、『今後5年間が記録的暑さとなり「地球の気温は未知の領域に入る」』と警報を発しています。

 今月(2023年11月)末、UAEのドバイで「COP28」(COP:国連気候変動枠組条約締約国会議)が開催予定です。気候変動対策の強化に向けて、世界全体の取り組みの現状と今後の行動の道筋が示されるものと大いに期待します。

四方海話 49  ー ときの話題 ー  その8   「おわり」

次回は  四方海話 50  ー 第50号記念・宝船と七福神 ー  です。 

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