四方海話 13

第五話 ― 海の怪物(魔物・妖精)―    その2 海外編 

・ カリュブディス

 ギリシャ神話に出てくるポセイドン(前述)と「ガイア」夫婦の娘で極度に肥満していた由、飽くなき食欲を満足させるため「ヘラクレス」の牛を盗んで食べてしまった。このことが全知全能の神「ゼウス」の怒りに触れ、彼女は怪物の姿に変えられてしまい、以来メッシーナ海峡(イタリア半島とシチリア島の間の海峡)で船を襲い、日に三度の食事の時間には巨大な渦巻きが起こして大量の海水とともに船もろとも飲み込み食欲を満たしている。

 メッシーナ海峡大橋:イタリア本土とシチリア島を結ぶ吊り橋で完成すれば世界最長となる予定のところ、膨大な工事費と耐震懸念のため中断が繰り返され現在中断中!(現在世界最長はトルコのチャナッカレ1915橋。明石海峡大橋は現在世界第2位)

・ バクワナ

 フィリピンの神話に登場する海竜、天空の神「バサラ」が生み出したとされる7つの月のうち6つを飲み込んでしまった。大きな口、赤い舌、長いひげ、鰓(えら)呼吸をし、2対の翼を持つ、今でも残ったただ1つの月を飲み込もうと狙っているらしい。

・ ケートス

 ギリシャ神話上の海獣、頭部は犬、胴体はイルカ、下半身は魚、尾鰭は扇形。個別の存在だけでなく巨大な海洋生物全般を指す場合もある。

・ アスピドケロン

 巨大な海亀、背に苔や海藻が生え動作は緩慢、船乗りが島だと思い上陸して焚火をしたところ、気が付いて動き出し、振り落とされた船乗りは船もろとも行方知れずとなった。

・ レイン・クロイン

 スコットランドの伝説上の海竜。一度に大型のクジラを7頭食べる。小さな魚に化けて漁師をおびき寄せ、釣り上げたとたん釣った漁師を食べてしまう。

・ クラバウターマン

 バルト海や北海に伝わる妖精で亡くなった人の霊として樹木に宿り、その木が船の材料として使われたとき妖精として現れる。木製ハンマーを持っていて甲板を叩くなどの悪戯をするのだとか!人気海賊アニメの「ワンピース」にも登場する。

・ デビルホエール

 「悪魔のクジラ」と呼ばれる海獣、船を一隻丸ごと飲み込んでしまうほど巨大で、前述の「アスピロドケン」と同様海面に出た胴の部分が島のように見えるらしい。

・ ヒュドラ(ヒュドラー)

 こちらもギリシャ神話に登場する9つの頭を持つ「水蛇」(みずへび)、ギリシャのアルゴス地方(ペロポネソス半島東部)の沼地に住んでいた怪物です。怪力の英雄「ヘラクレス」により退治されるものの、ヘラクレスも最後はヒュドラの猛毒によって侵され自身を死に追いやることとなる。ヒュドラは死後、天の星座「うみへび座」となったとされている。

 九つの頭がある水蛇が英雄に退治されるストーリーは日本の「九頭龍伝説」を連想させますが、それぞれ独立した伝説なのか?日本に伝来した物語なのか?確かによく似ています!また、沼に住む「水蛇」がなぜ「海蛇座」になったのか?も疑問が残るところではあります。過去、何方かの研究者が論評済みかとも思いますがあらためて調べてみたいと思っています。

・ クラーケン

 ノルウェーやグリーンランド沖の北極海で船乗りに目撃された。船をも破壊する巨大なタコまたはダイオウイカやダイオウホウズキイカに似た怪物。

・ セイレーン

 美しい女性と鳥が一体化した鳥獣。海岸の岩礁地帯に棲み、美しい歌声で航海者を惹きつけては喰い殺してしまう怪物。罠にはまった船乗りの骨は岩礁の小島に山積みとなっていたとか。 

 ギリシャ、アテネ国立考古学博物館所蔵・BC330年頃のセイレーン像・出典ウィキペディア

・ ヤクママ 

 南米のアマゾン川河口部に暮らす先住民族の伝承、全長50メートルに達する巨大な蛇≒アナコンダのことか?

・ シーモンクシービショップ

 「海の修道僧」を意味する未確認生物。1546年デンマーク、シェラン島(バルト海にあるデンマーク最大の島)沖で発見された。大型のカス鮫やエイの一種なのか? 現代では推定するのみですが、日本(鹿児島県など)にも生息する「モノノケトンガリサカタザメ」(後述)と同種のエイを見たのではないか?

コンラート・ゲスナー(スイスの著名博物学者1516-1565・スイスフラン紙幣に肖像)著「動物誌」のイラスト(出典ウィキペデア)

・ レヴィアタン(リヴァイアサン)

 旧約聖書に登場する聖獣。口には巨大で鋭い歯、炎を吐き鼻からは煙を吐く、鎧のような鱗で覆われていて狂暴、ギラギラと光る眼で獲物を探しながら海面を逆波を立てて移動する。大航海時代には船の周りを泳いで渦巻きをつくり一飲みにしてしまうとして船乗りに恐れられていた。

・ ブリスター

 クジラの一種で、怒らせて暴れだすと大型の船をも沈める。全長約90メートルほどで、ときには海面からジャンプして吸い込んだ海水を頭上から浴びせかけるほか、海水を体内に溜め込み甲板に躍り上がってその重さで船を沈める。ラッパの音や大砲の音など鋭い高い音を苦手とする。

・ ロッカス

 巨大なエイ。遭難して泳いでいる人を海岸まで運んでくれる。硬い毛あるいは骨で全身が覆われ、怒ると鰭で船を転覆させる。

・ ゼファイス

 フクロウのような顔をしていて背中には刃のような鋭い背鰭を持つ。北方の冷たい海に棲み船体に穴を開け沈めることもあるらしい。

* 半魚人のいろいろ

 体の一部が魚類で残りの部分が人類の特徴を持つ伝説上の生物。英語で「マーフォーク」、男性を「マーマン」、女性を「マーメイド」と称される。前述したシーモンク・シービショップも半魚人の範疇に入るのかもしれない。

・ イプピアーラ  

 南アメリカの先住民族トゥピ族に伝わる伝承に登場する妖怪。獰猛で人を殺し食べてしまう。

・ ダゴン(ダガン)

 ユーフラテス川(ペルシャ湾最奥部に河口がある西アジア最長の川)の中流域に起源をもつ神として古代「ペリシテ人」が信仰していたが、キリスト教圏では怪物、悪神として語られる。大型の魚の頭部を残し、腹開きにして頭に被るイメージの絵画が残され、「魚のアプカルル」「オアンネス」と同一視されることもある。

・ オアンネス 

 バビロニア(現在のイラク南部、ティグリス川とユーフラテス川下流の沖積平野一帯を指す歴史的および地理的領域)に伝わる半魚人で、ペルシャ湾に棲み昼間は陸に揚がって「シュメール人」に文字、建築法、法律、灌漑事業、美術、陶芸などの知識を7日間で伝授したとされ、夜は海底に帰って行った。人類に知恵をもたらした者として本来なら神の範疇に入るのかもしれない。

・ 魚のアプカルル

 メソポタミア神話では大洪水時代以前(およそ4800年前)、「エリドゥ」(現イラク南東部の都市の名前)の神「エア」により、人々に文明をもたらすため人間界に「7人の賢人アプカルル」が送り出されたとされていて、アプカルルの筆頭者は「アダパ」は半魚人の姿だったらしい。

・ 中国の半魚人

 ・ 陵魚鯪魚(りょうぎょ)

 最古(BC4世紀~BC3世紀)の地理書「山海経」(せんがいきょう)に記述があるそうで、人  面、魚体、手足がある半魚人。

 ・ 鮫人(こうじん)

 東晋時代(317年~420年)の「捜神記」(そうじんき:「干宝」という政治家で文人が、伝承を基に書き記した短編逸話集)に記載があり、南海の水中に棲んで、機織りが得意、なぜか泣き虫で落ちた涙は真珠になるのだそうです。また、織る布は蛟綃紗龍紗)<読み不詳>と名付けられ、この布で服を作り着用すると水に入っても濡れることがないのだとか。

 第五話 ― 海の怪物(魔物・妖精)―  その2海外編  「おわり」 

次回は 四方海話 14  第五話 ―海の怪物(魔物・妖精)―  その3 人魚のいろいろ  です。 

コメント

四方海話をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました