ー ときの話題 ー §40
1 ワシントン条約で「ウナギ属」全種が対象に⁉
2 SAAとは・逆磁束パッチって?
3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 海水から水素燃料⁉
⑵ スルメイカ騒動!
⑶ COP30開幕
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1 ワシントン条約で「ウナギ属」全種が対象に⁉
ワシントン条約(CITES)事務局(スイス・ジュネーブ)は、ニホンウナギを含むすべてのウナギ属(Anguilla属)を国際取引の規制対象(付属書Ⅱに含める)にすべきだとするEUからの提案について、「採択を勧告する」という最終評価を公表しました。
この提案が11月24日~12月5日にウズベキスタンで開かれる締約国会議で採択されれば、ウナギの輸出入には科学的根拠に基づいた許可書の発行が必要になるなど、かなり厳しい規制の対象となる可能性があり、日本のウナギ文化や流通にも大きな影響が出るかもしれません。
ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)
1973年に米国・ワシントンD.C.で採択された。〔2025年現在、ワシントン条約の締約国は184か国+欧州連合(EU:27か国)、日本は1980年11月に締約国入り〕乱獲や過剰な取引で絶滅しそうな動植物を保護するため、付属書Ⅰ~Ⅲのカテゴリーに分け、国際的な売買(輸出入)を許可制あるいは禁止することで生物資源を守ろうとしています。
- 付属書Ⅰ:絶滅の恐れが非常に高く、国際取引によって影響を受ける可能性がある種・学術研究などの特別な目的を除いて、商業目的の取引は原則禁止されている。(例、ジャイアントパンダ・ゴリラ・ウミガメ類〔一部を除く〕・アジアアロワナ・オランウータンなど)
- 付属書Ⅱ:今は絶滅の恐れがそこまで高くないが、規制しないと将来的に危ない種・商業目的の取引は可能だが、輸出許可書が必要とされる。(例、ヨーロッパウナギ・ホッキョクグマ・イリエワニ〔オーストラリア個体群〕など)
- 付属書Ⅲ:特定の国が自国の保護のために、他国の協力を求めて掲載する種・輸出許可書または原産地証明書が必要とされる。(例、セイウチ〔カナダ〕・ワニガメ〔アメリカ〕・タイリクイタチ〔インド〕・モモイロサンゴ〔中国〕など)
ウナギ属(Anguilla)
世界中の熱帯から温帯にかけて分布しているウナギ科ウナギ属に属する魚類。一般的には約19種類前後とされていますが、種の数は分類学の研究による改訂や遺伝子解析の結果により変動することがあります。このうち、日本にはニホンウナギ(Anguilla japonica)、オオウナギ(Anguilla marmorata)、ニューギニアウナギ(Anguilla bicolor pacifica)、およびウグマウナギ(Anguilla luzonensis)の4種が生息しています。
- ニホンウナギ:朝鮮半島・中国大陸・フィリピンなど東アジアを中心に分布し、マリアナ海嶺付近で産卵していることが近年の調査で明らかにされています。
- オオウナギ:分布はより広範囲で、アフリカ東岸からフランス領ポリネシアに至り、産卵場はフィリピン南部の深海と推測されています。
- ニューギニアウナギ:環境省のレッドリストにおいて、ニホンウナギとともに「情報不足」のカテゴリーに分類されていましたが、日本に実際に分布しているかどうかは不明なままであったところ、2000年代に屋久島で稚魚が、さらに八重山列島で成魚が発見されたことにより、日本での自然分布が確かめられました。
- ウグマウナギは2009年にフィリピン(ルソン島)を主として生存域が確認され、日本国内では、沖縄本島での2018~2019年の調査で得られた稚魚に基づき、2021年にその自然分布が公式に記録されました。
大西洋に生息するウナギ属
大西洋に生息するのはヨーロッパウナギとアメリカウナギ の2種だけで、前者はヨーロッパ全域と地中海沿岸の北アフリカ、後者は北アメリカから南アメリカ北東部にかけて広範囲に分布し、いずれもサルガッソー海を産卵場としているとされ、ほぼ定説となっていましたが、標識放流による回遊調査でサルガッソー海より遥か東方の大西洋中央海嶺上の火山列島、アゾレス諸島(ポルトガル領・本土から約1,000kmの大西洋上に存在する9つの島からなる。首都リスボンから約1,500km、北アメリカの東端からは約3,900kmの位置にある)付近海域が産卵海域であることが確認されています。
インド洋・太平洋に生息するウナギ属
インド洋から西部太平洋にかけての熱帯・温帯域がウナギ科魚類の分布の中心であり、特にインドネシア周辺での多様性が顕著で約14種が確認され、フィリピンのルソン島・ニュージーランド・ニューギニア島の東部、中国大陸などでは固有種も存在しています。インド洋においてはパキスタン・インドなど南アジアに分布する インドベンガルウナギ や、ケニアから南アフリカに至るアフリカ東岸を中心に分布する アフリカベンガルウナギ などおよそ5種が生息していて、このうちの数種は、マダガスカル島東方沖の深海で産卵していると推定されています。
二ホンウナギについて
二ホンウナギの生態は「謎」とされる部分が多かったものの、調査・研究が進み徐々に明らかになってきています。
ニホンウナギの一生

二ホンウナギの一生(出典:水産庁〔ウナギをめぐる状況と対策について〕より)・not edited.
黄色の実線は明らかになっている移動経路、点線は不明部分
レプトセファルス:(レプトケファルス)は、ウナギ(アナゴ、ハモなど)の仲間が海で生まれたときの透明で平たい幼生のことで「葉形仔魚」と呼ばれ、ヒラヒラと海流に乗って漂いながら「マリンスノー」(海中の微細な有機物)などを食べながら成長するとのこと。
シラスウナギ:ウナギの稚魚。レプトセファルスが成長し、全長5~6㌢で透明な細い体形となり、河口に集まって遡上が始まる。貴重かつ高価で、養殖ウナギは、このシラスウナギを捕まえて養鰻場で飼育、成長したもの。
河口での採捕を免れたシラスウナギは河川を遡上(なかには遡上せず海に留まり、沿岸部の汽水域や沖合で生活するもの、海と河川の往復を繰り返す個体も居る)し、成長につれ徐々に体の色が黒褐色に変化して「クロコ」となり、一般的に5~7年(養鰻場では2~3年)で「銀ウナギ」(産卵回遊前の成熟個体:平均サイズは雄52.9㌢、雌62.3㌢)に成長します。

シラスウナギの採捕量の推移(出典:水産庁、「ウナギをめぐる状況と対策について」より)・not edited.
シラスウナギ:体長約6センチ、体重約0.2㌘のウナギの稚魚・クロコ:シラスウナギが成長して黒色になったもの
産卵のための大航海⁈
- 雄も雌も、群(むれ)で移動することなく単独で、それぞれが日本沿海から産卵海域のマリアナ海嶺(北緯15度・東経140度付近、水深200〜400メートル程度の海嶺の中でも海山の頂上付近)まで昼夜の別なく大航海(2,000~2,500㌖を約半年かけて泳ぎ切る!)するとされています。
- その間は餌を食べずエネルギー補給しない。
- 体力を温存するため、波や海流の影響を受けない深海(200㍍程か?)を目的地まで直進するルートを辿るとされていますが、その間の針路はどのように決定するのでしょう?(一説には地磁気の変化を感知して利用しているということですが、通過した経験がないルートのデータは記憶されていないのではないでしょうか?
- 新月のタイミングに合わせて一斉に産卵するらしい。
- 生涯一度だけ産卵し、その後死んでしまう。
などの仮説が提唱されていますが、筆者としては俄かには信じ難く、今後、専門家による研究と成果の発表に期待します。
ニホンウナギの性別
ニホンウナギの性別は「生まれたときに決まっている」のではなく、育つ環境によって分かれるのだそうで、一般的に体長が15〜23cmの頃に性別分化が始まり、この時期に生殖腺が、精巣か卵巣かに分かれていくとされています。密度が高い養鰻場ではウナギが密集して育つことから、ストレスや四囲からの刺激で雄が多くなる傾向があり、また、本州北部ではオスとメスの割合がほぼ1対1ですが、南に行くほど雌の割合が減るという報告もあります。
ウナギのヌルヌルは何のため?
ヌルヌルの正体は「ムチン」という動物の上皮細胞から分泌される高分子の糖タンパク質で、
- ウナギはエラ呼吸だけでなく皮膚呼吸もでき、ムチンの保水力で皮膚表面の水分を保ち、水中でも陸上でも呼吸が可能なのだそうです。
- 海水と淡水を行き来するウナギにとって、体内の水分バランスを保つ必要があり、浸透圧の調整のためにムチンが体を覆っているのだとする。
- 体が岩や砂利に擦れても体が傷付き難くくなる。
- 粘液には雑菌や寄生虫から身を守る抗菌成分も含まれていて、病原体からも自身を守る。
などの効用があるとされています。
二ホンウナギの完全養殖
国立研究開発法人の水産研究・教育機構は、人工シラスウナギを親魚まで育て、その親魚から得た卵を孵化させる完全養殖に世界で初めて成功。現在では計画的な採卵と年間数万尾のシラスウナギの生産が可能、になったとしていますが、人工シラスウナギの生産コストが高く、コストダウンを含め効率的かつ安定的な大量生産技術の開発が最大の課題であると説明しています。(太字部分は国立研究開発法人水産研究・教育機構の説明文より)
ウナギ属の国際自然保護連合 (IUCN)レッドリスト一覧

出典:水産庁、「ウナギをめぐる状況と対策について」(R7・6月)・not edited.
ワシントン条約(CITES)事務局の勧告に対する日本の対応は?
前農水大臣は「反対します!」と明言していましたが、現大臣もウナギ属に対する「ワシントン条約事務局の勧告」に対する直接的発言はないものの、同様の立場を引き継ぐ可能性が高いと思われます。
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2 SAAとは?・逆磁束パッチって?
欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency、ヨーロッパ各国共同で設立された宇宙開発・研究機関)が運用する地球観測衛星(Swarm〔スワーム〕:衛星3基で構成され、異なる高度で同時観測を行うことで、地磁気の時間的・空間的変化を高精度に観測することができる)の11年間に及ぶ観測データを解析した結果、主に南米のブラジル沖から南アフリカ方面にかけての大西洋上空に磁場が異常に弱くなっている地域(南大西洋異常帯〔 SAA:〔South Atlantic Anomaly〕)が急速に拡大していることが明らかになりました。

ROSAT(ドイツのX線観測衛星)が撮影した南大西洋異常帯(SAA)の画像(出典:ウィキぺディア、PD)・not edited.
著者:スティーブ・スノーデン (米国ROSATサイエンスデータセンター)
ROSAT:1990年代に運用されていたドイツのX線観測衛星。1990年6月1日、米国ケープカナベラルから打ち上げられ、1999年まで約8年間実働、2011年ベンガル湾上空で大気圏に再突入し燃え尽きた。
地磁気の効果・ヴァン・アレン帯の存在
ヴァン・アレン帯は、地球の磁場によって宇宙空間から捕らえられた高エネルギーの荷電粒子(主に電子と陽子)が集まって形成された放射線帯です。地球を取り巻くように存在し、内帯(約1,000〜12,000 km)と外帯(約13,000〜60,000 km)の二重構造を持っています。この放射線帯は、地球を宇宙の放射線から守る“バリアー”のような役割を果たしていて、太陽から放出される高エネルギー粒子や宇宙を飛び回る放射線が地球に直接到達するのを防ぎ、生命の維持にも重要な役割を担っています。また、人工衛星や宇宙ステーションがこの帯を通過する際には、電子機器の故障や通信障害のリスク回避のため、一時的に電源を切るなど、慎重な運用が求められています。

ヴァン・アレン帯の模式図(出典:ウィキぺディア・PD)・not edited.
右下の矢印が南大西洋異常帯(SAA)の概略位置を示す。
SAAの影響
この異常帯の拡大は、人工衛星や宇宙望遠鏡、国際宇宙ステーションなどに搭載された太陽電池、集積回路、各種センサーなどが放射線によって損傷を受ける可能性があり、さらに、電子回路と論理回路等の小型化とデジタル化により、人工衛星は放射線に対してより脆弱になったと云われています。また、現時点では船舶航行に対する直接的なリスクや脅威は限定的とされているものの、衛星を利用した電子航法機器に障害が発生する恐れがあるほか、GPSや通信機器に一時的な不具合が生じることも考えられます。
SAA急速拡大の原因
- 核・マントル境界(¹CMB:Core-Mantle Boundary)での異常活動:CMB付近で「²逆磁束パッチ」と呼ばれる局所的な磁場反転が発生し、これが南大西洋上空の磁場を局所的に弱めている。
- 地磁気軸の傾き:地磁気軸が地軸と約11度傾いているため、ブラジル上空で地球の磁場が最も弱くなり、ヴァン・アレン帯が地球に接近している。・・・ヴァン・アレン帯の模式図参照。
- 地磁気の動的変化:SAAはアフリカ大陸方向へ広がっており、これは一時的な現象ではなく、地球内部構造の変化に起因している可能性が高いと考えられている。
¹CMB:地球の外核と下部マントルの間にある境界のことで、深さ約2,900㌖、温度約4,000K(ケルビン)=約3,727℃、圧力約136万気圧(atm)=約1,404,000 kgf/cm²、(下図Ⓑ)

地球の断面図(出典:ウィキぺディア、クリエイティブ・コモンズ表示-継承2.5ジェネリック)・not edited.
著者:DAKEさん
図の説明
①大陸地殻 ➁海洋地殻 ③上部マントル ➃下部マントル ⑤外核 ➅内核
A:地殻‐マントル境界(モホロビチッチ不連続面〔モホ面〕)
B:コア‐マントル境界(グーテンベルク不連続面)
C:外核と内核の境界(レーマン不連続面)
²逆磁束パッチ:(reverse flux patch)地球の外核(コア)と下部マントルの境界(³グーテンベルク不連続面)付近で発生する局所的な磁場の反転領域を指します。通常、地球の磁力線は外核から外向きに流れていますが、このパッチでは磁束が内向きに流れるため、地表の磁場が弱まる原因となります。
³グーテンベルク不連続面:地球の下部マントルと外核の境界面のことを指し、地震波の観測からその存在が明らかになった。この面では、地震波のうちP波(縦波)の速度が急に遅くなり、S波(横波)がまったく伝わらなくなるという特徴があり、これは、外核が液体であることを示していて、1926年に地震学者ベノー・グーテンベルク(ドイツ生まれのアメリカ人、地震学者・地球科学者)によって発見されました。
参考
- モホロビチッチ不連続面〔モホ面〕:地球の地殻とマントルの境界を指す面で、地震波(特にP波:縦波)の速度がある深さで急に速くなる。地殻内ではP波の速度が約6〜7㌖/秒なのに対し、マントルでは約8㌖/秒に上がり、速度が急に変化することで知ることができます。(モホロビチッチ博士:クロアチア出身の地震学者)
- レーマン不連続面:レーマン(デンマークの女性地震学者)は1936年に、感度の良い地震計で地震波の反射を精密に観測することにより、外核と内核の境界を発見しました。彼女が観測結果から推測した内核の半径は 約1400 ㌖で、現在広く受け入れられている 1221 ㌖ に近い値だったそうです。なお、この値を地表からの深さに換算すると約 5100㌖になります。
SAAは地磁気逆転の前兆と捉えることはできるか?
SAAの変化は「地磁気逆転につながる可能性を示す重要な観測証拠のひとつ」として注目されているところですが、この現象が単独で“地磁気逆転の前兆”と判断するには不十分で、古地磁気記録・数値ダイナモモデル(地球の磁場がどのように生成され、変動し、逆転するのかをコンピュータ上で再現・解析するための物理モデル)・他の衛星観測データなどとの組み合わせによる総合的な評価が必要だとしています。
南大西洋異常帯(SAA)がグーテンベルク不連続面の単なる「ゆらぎ」の結果であることを願っています。
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3 気になるニュース・トピック・心配ごと
⑴ 海水から水素燃料⁉
CO₂を排出しない次世代のエネルギーとして「水素」が期待され、「ゼロエミッション船構想」のなかでも「アンモニア燃料」「LNG」「メタノール」と並んで「水素燃料」に大きな期待が寄せられています。
「水素」を手に入れるためには、現状、化石燃料をベースとして燃焼ガスの中から水素をとりだす「改質」と呼ばれる製造方法が採られています。火力発電所や製油所、セメント工場等から排出される排気ガスなどを改質して水素をつくる方法(水蒸気改質法)は、すでに工業分野で広く利用されているところです。これら化石燃料をベースとした水素は製造方法と製造に係るCO₂の排出量により「グレー水素」(化石燃料〔天然ガス・石炭など〕を改質したもの)や「ブルー水素」(製造はグレー水素と同様だが、CCS技術を用い、CO₂を回収し、地下あるいは海底下に貯留するもの)と呼ばれています。
中学生のころ、学校の理科の実験で学んだ「水の電気分解」〔2H₂O → 2H₂ + O₂〕と基本的に同じ原理で海水を電気分解して水素を取り出し、燃料として利用しようとする研究」がほぼ実用の域に達しています。電気分解ですから電力が必要となりますが、太陽光発電や風力発電の電力を利用すれば「CO₂」の排出は無くなり「グリーン水素」と呼ばれています。
海水から水素を取り出す技術は、現在進行形で国立大学の研究室やエネルギー関連企業などで研究・開発途上にあります。
- 静岡大学+コスモ石油:⁴COCR技術(Carbon dioxide Ocean Capture and Reuse)を活用した水素の製造。⁵CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)の実現も目指す。
- 筑波大学:海水の電気分解の際問題となる電極の腐蝕を防ぐため、貴金属を使わない合金電極を開発した。チタンやクロムなど9種の⁶卑金属を使った合金で、10年以上の耐久性が確認された。
- 東京大学+pHydrogen社(東京大学発のスタートアップ企業):海水を中性に近い条件で電気分解して水素を製造する革新的な技術(中性海水電解システム)を使って腐食や副生成物の問題を抑えつつ、低コストでグリーン水素を生み出すことを目指しています。
⁴COCR技術:海水中のミネラル成分を活用してCO₂を固定化しながら水素を製造する革新的な技術(海洋二酸化炭素回収・再利用技術)。①海水を電気分解して水素を製造する際、海水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを利用して、CO₂を炭酸塩などの形で固定化する、即ち、水素製造と同時にCO₂の資源化できる。➁固定化された炭酸塩は、建材や工業原料として再利用することも可能だとしています。
⁵CCU:発電所や工場から排出されるCO₂を分離・回収して、燃料・化学品・建材などに変換して資源として再利用する。また、カーボンリサイクルとも呼ばれ、温室効果ガスの削減と経済価値の創出を両立する技術のこと。
⁶卑金属:空気や水分と反応しやすく、酸化や腐食(錆び)を起こしやすい金属のことで、安価で大量に産出される。(例、鉄・アルミニウム・亜鉛・ニッケル・錫・鉛・チタン・クロムなど)
既に、自動車の水素燃料電池として実用化されていますが、水素燃料を使用する大型舶用機関も実用化に向け、A重油と水素の混焼ではありますが、12気筒・2,200馬力×2基(≒4,400馬力)の主機関を積み、約250㎏/㎠の高圧縮水素燃料タンクを備えたタグボートが竣工したそうです。
水素(H₂)の基本的物性
- 分子量 約 2.016
- 色・におい 無色、無臭
- 比重 約 0.0695(非常に軽い)
- 密度 約 0.0899 kg/m³(空気の約1/14)
- 融点 約 -259℃
- 沸点 約 -253℃
- 自然発火温度 約 500~571℃
- 爆発範囲濃度(空気中) 約 4~75%
- 最小着火エネルギー 約 0.02 mJ(非常に小さい)
- 炎色 無色透明
- 発熱量(高位) 約 12.8 MJ/m³(0℃, 1気圧)
- 特性 拡散性が高く漏れやすいうえ爆発濃度範囲が広く着火しやすい。燃焼(酸素と反応)すると水になる。
水素は、船舶燃料としてはたいへん扱いにくく、国際海事機関(IMO)では9月の会合で、水素燃料船の安全基準案(ガイドライン)が国際的に合意され、来年(2026年)5月のIMO・海上安全委員会で正式承認される予定です。さらに、水素燃料船だけでなく代替燃料船に乗り組む船員の能力要件に関するガイドラインの策定も進行中だそうです。
水素燃料基地計画
神奈川県川崎市川崎区扇島東部の製鉄会社跡地に世界初の商用規模の液化水素サプライチェーン拠点(下図参照)が計画されていて、2030年度までに性能・安全性・経済性などを実証する予定とのことですが!
「多額の補助金が出る」「産業転換のチャンスだ」など魅力的な言葉が並び、「結論ありき」で議論を進めてしまうと、「安全性」や「都市部との共生」が置き去りになってしまう危険性があります。
東京湾の海上交通はすでに飽和状態で、各種危険物タンカーやコンテナ船、自動車専用船、フェリー、貨物船、漁船、作業船、艀(はしけ)、プレジャーボート等が複雑に行き交っています。そんな中で水素燃料基地を新設するとなると、当然、海上輸送にかかる事故発生リスクが高まり、特に爆発力が高い水素などの危険物を積んだ船が事故を起こした場合には、爆発・火災・環境汚染・海上交通の遮断などの影響が海上だけに留まらず広範囲に及ぶ可能性があります。過去、東京湾で発生した事故を想起・再検証し、安全対策をさらに充実させたうえでの議論が必要です。
この際、「船舶ふくそう海域」である東京湾を航行する法的搭載義務のない小型船についても、VHF送受信機(出力5㍗以下のボディートーキ型)と船舶自動識別装置(AIS ClassB)の備付けを促し、航行中の聴取・作動を義務付けるほか、主に湾内の通航する船舶の運航に携わる者、海上工事に従事する者はもとより、小型船舶操縦士免許所持者の再講習制度を創設するなどの安全教育の徹底が必須です。また、VHFやAISの備付けは「テロ対策」や「不審船対応」の一助にもなります。

出展:川崎市広報資料を参考として国土地理院地図上に著者が作図
⑵ スルメイカ騒動!
スルメイカの豊漁が伝えられていますが、⁷TAC枠以上に獲れすぎてしまったため、水産庁から小型イカ釣り漁船(5トン以上30トン未満)の出漁停止措置が採られ、函館市長の水産庁への陳情騒動が報じられましたが、道知事の判断で、⁸道総研(北海道立総合研究機構)の資源調査の名目で特別採捕許可がなされ、11月10日から出漁できるようになりました。1隻あたりの漁獲上限は1日当たり500㎏までとされているそうです。
⁷TAC枠:漁獲可能量(Total Allowable Catch)のこと。水産資源の保全を目的に、特定の魚種ごとに年間漁獲高の上限を定める制度で、水産政策審議会の資源管理分科会など専門家会合で議論され水産庁が設定し、獲りすぎを防ぐことで持続可能な漁業を目指す。日本ではサンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、サバ類、スルメイカ、ズワイガニ、クロマグロなどがTAC対象魚種になっていて、今後、対象魚種は拡大される予定由。
⁸道総研:北海道立総合研究機構の略称、北海道が設立した地方独立行政法人で、農業、水産業、林業、工業、食品産業、環境、地質、建築などの分野で研究・技術支援を行っている機関のこと。2010年に設立されて以来、北海道内の産業振興や道民の暮らしの向上を目的に、22の試験研究機関を統合して運営されている。
⑶ COP30開幕
「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議」(COP30)が11月10日から21日までの予定で、ブラジルのベレンでスタートしました。注目ポイントは
- 2035年に向けた新たな削減目標(NDC)の提出と評価
- COP29で合意された気候資金、1.3兆ドル(約200兆円)ロードマップ(先進国が途上国に対して約束した気候変動対策資金の提供計画)の実行
- 森林保全(特にアマゾン熱帯林)の仕組みづくり
- 適応策の指標合意(Global Goal on Adaptation):従来のCOPで理念的に語られてきた「気候変動への備え」(適応策)を、測定可能で評価可能な枠組みに変えることへの合意
- エネルギー転換(化石燃料からの公正な移行)の進捗状況の確認
などが挙げられます。
「パリ協定採択から10年」これまでの「約束が本当に実行されているかを問う会議」、として位置付けられています。
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四方海話84 ーときの話題ー§40 おわり
次回は 四方海話85 ーときの話題ー §41 です。

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