四方海話 30

第十一話    — 海の生き物 —    その1

‥ 海の生き物 ‥

1 メガロドンの話

 正式な学名は未定ながら、オトドゥス・メガロドンあるいはカルカロクレス・メガロドンと呼ばれ、和名をムカシオオホホジロザメ(昔大頬白鮫)と名付けられています。

 英国の大学との共同研究では、歯の化石を基に数学的計算により体長等を試算したところ、

  •  体長 18㍍  尾の長さ 3.85㍍  背びれの高さ 1.62㍍
  •  体重 48㌧  噛む力 10㌧以上

にまで成長するという結果が出たとのことです。

メガロドンの顎の化石(レプリカ:京急油壷マリンパーク展示物:左写真下部矢印はたばこの箱

 一般的には約2300万年前~約150万年前(地質時代の新生代、新第三紀、中新世:海水温が比較的高かった時代)にクジラ、アザラシ、セイウチ、アシカなどの先祖を餌にして生存していたとしていますが、現在でも深海で生息しているとの説もあります。

 日本でも各地で歯の化石が出土していて「天狗の爪」あるいは「天狗の爪石」と呼ばれ珍重されています。

メガロドンの歯の化石:油壷マリンパーク展示

2 マッコウクジラとダイオウイカ

 クジラはヒゲクジラ(髭くじら)とハクジラ(歯くじら)に分けられます。マッコウクジラ(抹香鯨)は、体の大きさのわりに下顎が細く、歯が生えているので「歯くじら」に分類されています。また、腸内に「龍涎香」(りゅうぜんこう)と呼ばれる結石が形成されることがあり、これが「抹香」(まっこう)に似た香りを放つので抹香鯨の名の由来となっています。主食は深海に生息するダイオウイカやダイオウホウズキイカ、ヤリイカなどでスケトウダラ、メヌケ、フリソデウオ、ツノザメなど大型深海魚類も餌としているらしい。

マッコウクジラ

 マッコウクジラは深海性の動物で、生涯の3分の2を深海で過ごすのだそうで、潜水可能深度は2000㍍を超えるそうです。

 さらに、このクジラにはイルカやコウモリと同様に反響定位(エコーロケーション:指向性が高い超音波〈クリック音〉を発信し反響音を受信して周囲の状況を知る:潜水艦が装備しているアクティブソナーと同じ原理)能力を備え、真っ暗な深海でも餌探しができるうえ、一説によれば1000キロ㍍以上離れた仲間と交信が可能なのだとか。

 マッコウクジラの頭部は体長の約3分の1を占め、内部は「鯨蝋」(げいろう:メロンと呼ばれるワックス成分)で満たされていて、昔は「高級蝋燭」「石鹸の原料」「照明用油:灯油」「機械油」「精密機械用潤滑油」として利用されていた。このため、米国においては18~19世紀にかけて、自国周辺のマッコウクジラを捕り尽くしたうえ、日本に近い北西太平洋に進出し、捕鯨船の補給基地として日本に開国を迫ったことは頷けます。米国捕鯨船の北西太平洋への進出は、日本の当時の廻船の遭難、漂流事故の救助者となった事例も少なくありません。

 ダイオウイカダイオウホオズキイカはマッコウクジラの餌食となっていますが、現在のところ世界最大の無脊椎動物として知られ、ヨーロッパの船乗りに言い伝えられている「クラーケン伝説」のモデルと考えられています。眼球の直径が30㌢ほどもあり、暗い深海での活動にこの視力が有効と思われますが、両イカとも筋肉中にアンモニア成分を含み食用には適さず、生態についてはまだ不明な部分が多く、今後の調査研究が待たれるところです。

ダイオウイカ:出典ウィキペディア(彩色)

 ‥ クジラのヒゲ(髭) ‥

 ヒゲクジラのヒゲは、クジラが餌(オキアミや小魚)を濾過して摂食するための重要な役割を持っていますが、引張強度があって軽く、弾力性があって加工しやすいため、プラスチックの普及以前は「釣り竿の穂先(先端)」「傘の骨」「扇子」「ゼンマイ」「バイオリンの弓」など用途に用いられていました。特にセミクジラ科の髭は比較的長く、柔軟で貴重とされていたため、乱獲の原因となりました。

セミクジラの画像  出典:ウィキペディア

3 ダイオウグソクムシ

 深海に棲むエイリアンの形相です。メキシコ湾や西大西洋周辺の深海(200~1000㍍)の海底砂泥地に生息、最大50㌢、体重1㌕を超える。外見は「ダンゴムシ」、分類上は「フナムシ」に近いのだそうですが、大きさが違い過ぎます。

 極めて小食で、2007年9月から三重県鳥羽水族館で飼育した体長24㌢の個体は、2009年1月に50㌘のアジを食べて以来2014年2月に死亡するまでの間(1.869日間)餌を口にしなかったとのこと。前述のダイオウイカとともに「深海巨大症」(無脊椎動物やその他深海で生活する動物が、浅いところに棲む近縁の動物より巨大化する傾向にある旨の学説)の例として引用されています。

ダイオウグソクムシの画像:出典ウィキペディア

4 カイコウオオソコエビ

 このエビは北西太平洋の海溝に分布していて、「マリアナ海溝」、「フィリピン海溝」、「日本海溝」、「伊豆・小笠原海溝」、「カムチャッカ海溝」で採集した実績がある由です。

 超深海(6000㍍以上)のみに生息、世界最深のマリアナ海溝「チャレンジャー海淵」(10.920㍍)にも分布し、地球の最深部に棲む動物の一種として話題になりました。

 生息域が深海底のため、まだ詳しい生態は不明ですが、体長4.5㌢、目は完全に退化、短い触覚を持ち、腹部の脚による高い遊泳力を備えているほか、植物性の多糖類を分解する数種類の消化酵素を持っているのだそうです。

カイコウオオソコエビ画像  新江ノ島水族館展示:薬品漬けのため赤い色素が喪失している。

カイコウオオソコエビ画像(三態) 新江ノ島水族館展示:同上

5 ゴエモンコシオリエビ

 九州の西方から台湾北部の深海(700~1600㍍:沖縄トラフ)にある熱水噴出孔の周辺に生息している。体長約5㌢、体の表面は多数の毛で覆われ目は退化している。体表の毛には熱水に含まれる硫化水素メタンをエネルギー源として取り込み化学合成を行うことができる特定の外部共生菌(化学合成細菌とメタン酸化細菌)が生息していて、ゴエモンコシオリエビは顎脚(がっきゃく:手のような器官)でこの外部共生菌が付着した毛をこそいでこの菌を餌としているのだそうです。

ゴエモンコシオリエビ画像  出典:ウィキペディア(国立科学博物館標本)

沖縄トラフの概位  国土地理院地図上に作図

四方海話 30  第十一話  — 海の生き物 —   その1  「おわり」

次回は   四方海話 31   第十一話  — 海の生き物 ―  その2  です。

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