― ときの話題 ー その9
変な津波・その後
去る10月9日に発生した、地震がないのに押し寄せた「変な津波」(謎の津波?)の続報です。
海洋研究開発機構(JAMSTEC:横須賀市)の海底広域研究船「かいめい」(5.747㌧)が11月10日~12日の間、鳥島の周辺海域を緊急調査したところ、鳥島の南約76㎞にある「孀婦岩」(そうふいわ)の西30~50㎞に直径約6㎞ほどの海底カルデラ地形が観測され、カルデラ内に火口も確認されたとのことです。

鳥島・孀婦岩の位置図(出典:国土地理院地図・著者加工〔赤矢印〕)
地震の震源地の特定や津波の有無については、通常、地震によって発生して地殻内を伝播するP波やS波を検知することによって判定されるところ、今回のこの地震は振幅が非常に小さく、約30倍に増幅すると検知できる程度の規模だった由、また、父島での観測記録によれば、T波(海水中を伝播する地震波)が10月9日04:00~06:30にかけ14回観測されていたとのことです。
下図は、海上保安庁海洋情報部「海しる」の海底地形図を使って、孀婦岩付近の海底地形を確かめてみましたが、画像を見てみると確かにカルデラらしい窪地をおぼろげながら見ることができます。(私自身のスキルが低く、画像不鮮明をお詫びします。興味ある方は「海しる」で是非とも確かめてみて下さい。)

震源域?図(出典:海洋状況表示システム〔http://www.msil.go.jp/〕を加工して作成)
孀婦岩は東京から約660㎞南に位置する絶海の孤立岩です。下の写真は、同じく「海しる」に掲載されている画像ですが、私には火山列島のなかに佇み、日本列島を見守る観音像に見えるのですが如何でしょうか?「南海のゴジラ」などと呼ばずに「小笠原観音」にしませんか?

孀婦岩画像(出典:海洋状況表示システム〔http://www.msil.go.jp/〕)
ダイポールモード現象?
日本ではあまり馴染みのない気象現象ですが、エルニーニョ・ラニーニャのインド洋版です。太平洋のエルニーニョ現象とは東西が逆、インドネシアのスマトラ島・ジャワ島西岸の海水温度が低温傾向となり、アフリカ大陸東岸(主にアフリカの角と呼ばれるソマリア東岸、ケニア、タンザニアなど)の海水温度が高温傾向となる(正のダイポールモード現象)ことを指します。海水の高・低温が入れ替わると負のダイポールモード現象と呼びます。海洋研究開発機構(JAMSTEC)所属の山形俊男博士や会津大学教授ハミード・サジ博士がこの現象を発見しました。

正のダイポールモード現象の模式図(出典:ウィキペディア)
正のダイポールモード現象はインド洋で南東からの貿易風が強くなると東側(スマトラ島やジャワ島の西側海域)にあった高温の海水が西方に吹き寄せられ、加えて深海部から低温の海水が湧昇することにより海面温度が低下し、インドネシアでは降水量が減少、東アフリカ沿岸では海水温度が上昇して蒸発が盛んになり降水量が増加します。
正・負のダイポールモード現象は *「テレコネクション」(遠隔相関)により、エルニーニョ・ラニーニャ現象の引き金になることもある他、日本を含むアジア各地だけでなく地中海沿岸諸国の気候変動とも密接な関係があることが解明されつつあります。
* テレコネクション:遠隔相関、遠隔結合のこと、離れた地域で気圧がシーソーのように連動して変化する現象。気圧の変化は大気と海洋の相互作用で、気象(気温・降水量・大気循環など)の変化に大きく影響します。
2021年、2022年は負のダイポールモード現象が発生し、東アフリカは大規模かつ極端な干ばつに見舞われ、2023年には正のダイポールモード現象の影響により、インドネシアやオーストラリア西部では降水量が減少して、水不足による農作物への影響や山火事が増えた一方、北アフリカのリビアを襲った地中海ハリケーンによる洪水をはじめ、東アフリカ、インド洋沿岸のエチオピア、ソマリア、ケニア、タンザニアなどでも洪水被害が発生しました。
気象庁が発表した3ヵ月予報(2023年12月~2024年2月)では「正のインド洋ダイポールモード現象」の発生を論拠として、日本付近の偏西風が北に蛇行するため冬型の気圧配置が弱まり、冬の期間を通して暖冬となり全国的に雪は少ないものの、降水量は平年並みか多い。冬の間、一時的に強い寒気が入る可能性もあり「ドカ雪」に注意!としています。
海賊復活?
紅海への南側出入口、「バブ・エル・マンデブ海峡」はイエメン共和国とジブチ共和国の間にある、いわゆるチョークポイント(戦略的に重要な海上水路)です。

バブエルマンデブ海峡画像(出典:ウィキペディア、名称加筆)
この付近の海域で、11月19日に日本郵船が運航する「GARAXY LEADER」(自動車専用船、バハマ船籍、48.710G/T)が、29日には「CENTRAL PARK」(ケミカルタンカー、リベリア船籍、12.145G/T)が拿捕されたとの報道がありましたが、G号についてはイエメンの反政府組織が、C号につては実行犯(5名、ソマリア人?)が米軍に拘束され、船は解放されたようです。続いて、今月4日には「UNITY EXPLORER」(バルカー、バハマ船籍、35.898G/T)、「No.9」(コンテナ専用船、パナマ船籍、総トン数不詳)の2隻がアデン湾でイラン製のドローンによる攻撃を受け、コンテナ専用船は損傷を受けたなどの報道がありましたが、この海域で事態がさらにエスカレートすることとなれば、安全上、アフリカ大陸南端の喜望峰を回るコースを選択するしかなく、時間と費用のロスは計り知れないものとなってしまいます。
2002年、アメリカ海軍を中心として、紅海・ペルシャ湾・アデン湾・オマーン湾・アラビア海・インド洋での対海賊・テロ抑止・海上治安維持のため国際的な海軍の合同海上部隊(CMF)が編制され、民間商船の安全航行に寄与している。担当海域や任務によって3つの部隊に分けられ、要員や艦船は33ヵ国から拠出されています。(出典:ウィキペディア〔要約〕)
海賊対策のために派遣されている日本の護衛艦には今のところ被害が及んでいないようですが、イエメンの反政府組織は対艦弾道ミサイルも備えているようなので、ミサイル防御システムをフル稼働させて任務遂行にあたるしかないようです。そして、戦争に巻き込まれることのないよう切望します。
ーときの話題ー・のまとめ
- 四方海話 42 『デカッ!』「太古の巨大クジラ」「巨大コンテナ船」「気候変動」
- 同 43 『東京湾が危ない』「日鉄君津シアン化合物排出」「PFAS問題」
- 同 44 「海洋プラスチック問題」「えーッ!」
- 同 45 「旅客船KAZUⅠ沈没事故・事故調査報告書を読んで」
- 同 46 「1.5℃の約束」「津波」「ジーランディア」
- 同 47 「海洋国家」「元寇に使用された船」「東京都がPFASの追加調査」
- 同 48 「海洋熱波」
- 同 49 「スーパーエルニーニョ」
- 同 50 「宝船と七福神」
- 同 51 「変な津波・その後」「ダイポールモード現象?」「海賊復活?」「ときの話題のまとめ」
四方海話 51 ー ときの話題 ー その9 「おわり」
次回は 四方海話 52 ― ときの話題 ー その10 です。

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