第二十話 ー 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー その3
5 南シナ海(九段線)問題
南シナ海のことだから日本から遠いしあまり関係ないと思いがちですが、大間違い!下図は中国と台湾(中華民国:台湾の主張は11段線)が主張する九段線の位置を示しています。

南シナ海で中国が主張する九段線の位置(出典:ウィキぺディア・一部筆者強調加筆)

南シナ海で台湾が主張する11段線(出典:ウィキペディア・一部筆者強調加筆)
九段線(11段線)に関する中国の考え方は
- 島嶼帰属の線:線内の島嶼、東沙群島、南沙群島、中沙群島、西沙群島及び周辺海域は中国に属しており、中国が管轄し統制する。
- 歴史的な権利の範囲:線内の島、礁、浅瀬、砂州は中国の領土であり、内水以外の海域は排他的経済水域と大陸棚となる。
- 歴史的な水域線:中国は線内の島、礁、浅瀬、砂州および周辺海域の歴史的権利を有するのみならず、線内の全ての海域が中国の歴史的な水域とされる。当該水域において外国船舶は許可なしで航行、通過することができない。
- 伝統境界線(国境線):線内の島、礁、浅瀬、砂州および周辺海域は中国に属しており、線外の区域は公海または他国に属する。
としており、この一方的な主張は、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイなどと対立し、これら周辺諸国は「国連海洋法条約」に基づき、それぞれ自国の領有権を主張している。
フィリピンが海洋法条約に基づき、常設仲裁裁判所(国際紛争平和的処理条約に基づく常設の国際法廷<オランダ・ハーグ>)に違法性について申し立てていたところ、2016年7月、裁定が下されフィリピンが勝訴したものの、中比両国はこの判決を「棚上げ」して不可解な協力関係を構築している。
去る7月12日、外務省から「南シナ海に関する比中仲裁判断発出から7年を迎えて」と題した林芳正外務大臣の談話が発表されました。筆者としては内閣総理大臣談話にしてほしかったのですが!曰く
「本日、南シナ海に関する比中仲裁判断の発出から7年が経過しました。国連海洋法条約の規定に基づき、仲裁判断は最終的であり、紛争当事国を法的に拘束するもので、当事国であるフィリピンと中国は仲裁判断に従う必要があります。中国による仲裁判断を受け入れないといった主張は、国連海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会における基本的価値である法の支配を損なうものです。我が国は当事国がこの判断に従うことにより、南シナ海における紛争の平和的解決につながることを強く期待します。(中略) 我が国は引き続きASEAN諸国を始めとする関係国とも連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を推進していきます。」
というものでした。
6 列島線
1982年、当時の中国共産党最高指導者「鄧小平」の意向で、人民解放軍海軍司令官「劉華清」が作り上げた中国人民解放軍近代化計画のなかの概念であったらしい。東西冷戦の終結などの国際情勢変化の過程で、1993年には「李鵬」首相が全国人民代表大会で「防衛の対象に海上権益を含める」旨を表明、近代海軍への変革を本格化させ、「海軍発展戦略」を打ち出し、第一・第二列島線の概念が協調された。
・ 第一列島線
中国はこの線の内側の海域を「海洋領土」と呼び、中国固有の領土として安全保障、海洋権益は中国の手により保全するべきであるとし、南シナ海問題、尖閣諸島問題、東シナ海ガス田問題などが未解決のまま強引に押し通そうとしています。

・ 第二列島線
台湾有事を見据えて、台湾へのアメリカ海軍の増援部隊を阻止、妨害する最終防衛線とも考えられますが、現状の米中海軍の軍事バランスからするとあまり意味をなさないと思われます。
7 日本の領土・領海・EEZ・大陸棚
下図は、日本の領土と領海、排他的経済水域(EEZ)と大陸棚を表した図ですが、国連の大陸棚限界委員会で大陸棚として延長が認められた区域とさらに勧告が先送りされた部分(区域)が明示されていて分かりやすい。

我が国の領土・領海・EEZ・大陸棚(出典:海上保安レポート2022)
領土・領海はいいけど、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚などの用語は、身近な言葉ではないため理解が浅いと思われますので復習します。これらの用語は「海洋法に関する国際連合条約」(一般呼称国連海洋法条約:日本は1996年<平成8年>6月批准、同年7月20日発効<海の日>、2023年<令和5年>5月現在169ヵ国が締約)に用いられています。
・ 排他的経済水域(EEZ)・
領海の外側に、領海の基線から200海里を超えない範囲内で設定が認められている。(相対国又は隣接国の間におけるEEZの境界画定は、衡平な解決を達成するために国際法に基づいて合意によりおこなう。)
沿岸国は、EEZ(海底及びその下を含む。)において、天然資源(生物・非生物を問わない。)の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利(:国家が他国からの干渉を排して独自の意思決定を行う権利である。出典:コトバンク)を有する。
沿岸国は、EEZにおいて、人工島、施設及び構築物の設置及び利用、海洋環境の保護及び保全、海洋の科学的調査等に関する管轄権を有する。
・ 大陸棚 ・
領海を超える海面下の区域の海底及びその下であって、領海基線から原則として200海里の距離まで(地質上及び地形上の一定の条件を満たす場合には、さらに外側の一定の限界まで。)を沿岸国の大陸棚とする。
沿岸国は、大陸棚を探査し及びその資源を開発するための主権的権利を行使することが認められている。

海域の概念図と説明(出典:外務省資料)
国民の祝日のひとつ、「海の日」(7月第3月曜日・今年は7月17日)は「海洋国日本の繁栄を願う日」です。これを機にもう一度「国連海洋法条約」をおさらいしてみては如何でしょうか?
四方海話 38 第二十話 ー 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー その3 「おわり」
次回は 四方海話39 第二十話 ー 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー その4 です。

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