四方海話(号外・MSJCからの提言)

宇部港沖・底引き網漁船「石川丸」衝突転覆海難事件

事件概要

 8月3日(日)夜間~8月4日(月)早朝、山口県宇部市南南東およそ10マイルの周防灘で操業中の底引き網漁船「石川丸」(総トン数4.89㌧、夫婦2名乗組み)が操業中、大型船に衝突され転覆し、船長(夫)は船底に掴まって漂流中のところを仲間の漁船により救助され軽傷、奥さんは船内で発見されたが死亡していた由。

国土地理院地図に筆者作図

事故の経緯  

  • 4日0545頃、漁協から「石川丸が戻ってこない」旨の通報あり。
  • 4日0610頃、仲間の漁船が、転覆し漂流中の石川丸を発見した。
  • 船長は船底に掴まっていたところを救助(軽傷)、奥さんは船内で発見されたが死亡していた。

当て逃げの疑いと捜査

  • 船長は「操業中大きな船に衝突された」と証言した。
  • 石川丸の船底には衝突が原因とみられる大きな穴が確認された。
  • 宇部海上保安暑は当て逃げの可能性ありとして捜査に着手。

容疑者逮捕

  • 8月8日(金)、活魚運搬船「第三十八しんこう丸」(199㌧、6名乗組み)が事故発生当時現場を航行していて、操船していた機関員(26才)が逮捕された。
  • 「第三十八しんこう丸」は衝突した後、現場を離れていたが、船体に付着していた塗料が一致したことなどから特定に至った。

気象・海象

 ① 2025年8月4日の月齢は「29.2」でほぼ新月なので、闇夜といって差し支えない状況だった?

 ➁ 天気図:朝鮮半島に小さな閉塞前線が見られるものの、事故発生海域(周防灘)はほぼ平穏?

2025年8月4日0300の天気図(出典:気象庁HP)・not edited.

再発防止に向けた教訓と課題

 事故に至る詳細な経緯や原因は今後の捜査・事故調査を待たなければならないが、現在可能な最善の方法は、小型船舶にもAIS(船舶自動識別装置)の搭載を義務付けることである。「そんなことは分かっている」と言われる方々は多いと思いますが、簡易型のクラスBシステム対応機器の価格も安価なものとなってきています。

現行のAIS搭載義務区分

総トン数20㌧未満の小型船舶については任意搭載となっている。

 零細な個人経営の漁業者に装備を義務化することは負担が大きく、無理だと指摘されるもしれませんが、漁業協同組合からの低利融資や水産庁からの支援のほか、漁船保険の保険料負担の軽減なども考えられ、導入できる可能性は充分にあると考えます。小型漁船は元より、プレジャーボート、小型貨物船、遊漁船、小型タンカー、小型作業船等々、搭載義務がない小型船舶全てに当てはまります。

 一方、国際VHF無線装置については、2008年2月に発生した護衛艦「あたご」と、まぐろはえ縄漁船「清徳丸」の衝突海難事件を契機に船舶の規模・用途を問わず共通に通信できるシステムの整備が課題となり、総務省は検討会を発足し、翌年、「国際VHFを任意設置である100トン未満の船舶へも普及を図ること」と報告されましたが、免許制度の改正(三級海上特殊無線技士の資格を設け、操作範囲を5W携帯形〔ボディートーキ型〕まで)とし、非常時に有効なDSC機能(デジタル選択呼出装置:DSCボタンを押すだけで、自船の位置情報〔GPS連携〕と救助を求める信号を周囲の船舶や海岸局へ送信できる)を備えたものの操作はニ級海上特殊無線技士の資格が必要であるとされた。この制度については「三海特でも、5W携帯形止まりでなくある程度遠距離交信可能な10W程度までとすることに加え、非常時にも有効なDSCを使用できるように操作範囲を緩和してほしい」、「北米や欧州に倣って、国内通信に限定したチャンネルを割り当て、これには資格は不要とし、免許を届出制にしてほしい」など一層の緩和を求める意見は多い。

 ことは人の命に関わること!とはいえ、早急には出来ません。東京湾や瀬戸内海など、所謂「ふくそう海域」から着手するなど、小型船の「AIS ClassB」「国際VHF無線装置」の装備を推し進め、「我が国周辺海域での海上交通の安全・安心への歩を進める」ことが肝要で、ITの時代にあって「進めざるは人命軽視」と受け止められよう。

 MSJCとは:More Safety Japan Coast・「日本の海の安全・安心」を考える、非営利グループです。 

・ご意見をお聞かせください! メールアドレス 「msjc2511@yahoo.co.jp

  

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