ー ときの話題 ー §33
1 国連海洋会議(UNOC3)が閉幕しました。
2 海洋生物と医療
3 気になるニュース・話題・心配ごと
① また、戦争が始まった!
➁ 漁業資源の減少
➂ 黒潮大蛇行収束と巨大地震?
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1 国連海洋会議(UNOC3)が閉幕しました。
フランスのニースで、約70カ国の首脳や関係機関、およそ120の国や各国の代表団、国連機関、非政府組織、学術専門家、民間セクター、市民グループなどが参加し、6月9日から13日まで間、開催されました。日本からは笹川平和財団の理事長、日本郵船株式会社の代表取締役、外務省の地球規模課題審議官が出席し、日本の閣僚以上の参加は見送られ、石破首相はビデオメッセージだけでした。また、米国はホワイトハウスの環境担当官がオブザーバーとしての出席したに留まりました。
主な議題
- 海洋生態系の保全と持続可能な開発
- プラスチックごみなどの海洋汚染対策
- 気候変動の影響と対策
- 持続可能な漁業および海洋経済
- 生物多様性の保全
石破総理のビデオメッセージ
日本国内閣総理大臣の石破茂です。この度、フランス政府及びコスタリカ政府のリーダーシップの下、「第3回国連海洋会議」がフランスのニースで盛大に開催されておりますことを心よりお慶(よろこ)び申し上げます。日本国政府といたしましても、海洋の保全と持続可能な利用に関する国際的な連携が一層強化されるよう、この会議の成功に向け、尽力をいたしてまいります。
海洋は、魚介類を始めとする多様な生物の生息域であり、また、海運による経済活動の場でもあり、さらには、再生可能エネルギーの創出といったイノベーションの舞台でもあります。四方を海に囲まれた日本は、海洋の保全と持続可能な利用を通じて経済振興を進める「海洋立国」として、アジアの国々、世界の国々に範をお示しし、国際連携をけん引できるよう、引き続き、取り組んでまいります。
本サイドイベントに御列席の皆様には改めて申し上げるまでもありませんが、海洋をめぐっては、水産資源の枯渇、地球温暖化に伴う海水温上昇、環境汚染など様々な課題が存在しております。そのことが、海洋から恵みを受けてきた地域社会、地域経済にも大きな影響を及ぼしております。
海洋を極力健全な状態で次の世代に引き継いでいくことは、我々の世代の責務であります。日本国政府は、真の「海洋立国」としての役割を果たしていけるよう、民間セクターの企業や専門団体とも十分に連携しながら、海洋をめぐる課題の克服に向けて取り組んでまいります。そうした中で、今般、「日経ブルーオーシャン・フォーラム有識者委員会」において、水産資源、気候変動、資源循環、金融、地方創生といった5つの重要なテーマを対象に議論が行われ、海洋を保全し、ブルーエコノミーを推進する戦略が全世界に発信されることは大いに歓迎すべきものであり、今後の更なる展開についても期待をいたしております。
私自身、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」、いわゆる「オーシャン・パネル」のメンバーとして、共同議長を務められるストーレ・ノルウェー首相及びウィップス・パラオ大統領を始めとする各国の首脳の皆様方と共に、海洋の保全と持続可能な海洋経済の実現に尽力してまいります。
今回の第3回国連海洋会議サイドイベントが、「日経ブルーオーシャン・フォーラム有識者委員会」の御提言の幅広い共有も通じて、海洋の保全と持続可能な利用の実現に向けた実りあることを心よりお祈りし、私の御挨拶といたします。
(首相官邸HPより・全文)
日経ブルーオーシャン・フォーラム有識者委員会とは
海洋経済や海洋環境の持続可能な活用に関する先進的な知見を有する専門家たちが集まるアドバイザリ―委員会で、日本経済新聞社グループが主導しています。
持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(オーシャン・パネル)とは
海洋環境の健全性や豊かな海洋経済の実現のために、再生可能エネルギー、持続可能な漁業、沿岸地域の環境保全などの多岐にわたる課題に対して、各国の政府高官や専門家が一堂に会して意見交換や政策調整を行い、協議・提言を通じて、2030年までの具体的目標達成を目指しています。
今回の会議で何が決まった?(主な動き)
① クリーンオーシャンイニシアティブ2.0(COl2.0)が始動
海洋プラスチック汚染を削減するための国際的な取り組みの進化版で、前回(2018年発足時)の目標が達成されたことを受け、さらに2026年から2030年までの間に、30億ユーロ(約5,010億円)を投じて汚染対策をさらに強化することが合意されました。
2018年の発足時には公的開発銀行5行(フランス開発庁・欧州投資銀行〈EU〉・ドイツ復興金融公庫・カーザ/デポジティー/エ/プレスティティ〈イタリア〉・欧州復興開発銀行)に加えアジア開発銀行も新規参入することとなりました。
アジア開発銀行(ADB)とは
アジア太平洋地域の経済発展を支援するための国際開発金融機関(本部:マニラ)で、1966年に設立されました。主にアジア太平洋地域の開発途上国を対象としていますが域外の加盟国への資金援助も含まれており、日本やアメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツなどが資金を拠出しています。
➁ 公海保護協定(BBNJ協定:2023年6月国連で採択)については?
国連が採択した国際的な取り組みで、国家管轄権外区域(公海や深海底)の生物多様性の保全と持続可能な利用を目的としています。フランスのマクロン大統領は「パリ協定」採択から10年目にあたる今回の海洋会議を環境保護の新たな節目として60ヶ国の締結を目指していましたが、未だ50ヶ国に留まっています。
協定は60カ国が締結すると120日後に発効することになっていますが、日本は署名済みではあるものの、まだ締結まで至っていません。
➂ 「公海鉱物資源開発に関する規則と手続きの策定を推進する政治宣言」の採択
政治宣言の内容
A 規則と手続きの進展:公海での鉱物資源の開発について、規則や手続きの策定が進んでいることを評 価し、国際的な枠組みをさらに強化する。
B 海洋保護区の設定を促進:生態系保全のため、特に鉱物資源の採掘による影響を最小限に抑える目的で国際条約に基づいた保護区の設置を推進する。
C 国際協力の重要性の強調: 持続可能な資源利用を達成するために、各国が連携しながら技術的、科学的な知識を共有する努力を求める。
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2 海洋生物と医療
2008年にノーベル化学賞を受賞した「下村脩博士」(1928~2018)が研究し、発見したのは「オワンクラゲ」の緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)でした。

オワンクラゲの画像・鶴岡市立加茂水族館の飼育個体
(出典:ウィキぺディア・クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際・トッティさんの作品)・not edited.
緑色蛍光タンパク質は、特定の波長(約395-475nm)の光(紫外線や青色光)の刺激を受けると、鮮やかな緑色の蛍光を放つ性質を持つタンパク質です。この特性を生かして、医療分野では細胞内や生体組織内での遺伝子発現(細胞がDNAを使って必要なタンパク質を作るプロセスのこと)、タンパク質の局在(細胞内で各タンパク質が特定の場所に「住む」ことで、その場所で所定の機能を果たす現象)、細胞間の相互作用(各細胞が互いに情報を伝達し合う仕組みのこと)などを可視化するための「レポーター」として広く利用されています。
海洋生物は厳しい環境の中で生活しているため、独特の生体機能に基づいた多彩な薬理作用を持つ化合物を合成しています。以下、現時点で利用され、あるいは期待されて研究途上にある医薬品を列記してみます。
- 抗がん剤:エリブリン(Eribulin:薬剤名)は、海洋生物由来の抗がん剤で、この薬は特に乳がんや悪性軟部腫瘍の治療に用いられ、多くの国で承認されています。がん細胞の分裂を止め死滅させる仕組みを持っています。エリブリンの元となった成分は、三浦半島のクロイソカイメン(黒磯海綿)から発見されたハリコンドリンBという物質に基づいています。
- 鎮痛剤:コノトキシン (Conotoxin) は、イモガイ(刺されると死に至るほどの猛毒を持つ危険生物であり、要注意生物の筆頭に挙げられている)が生成する神経毒の一種で、ペプチドの混合物(ペプチドはアミノ酸がつながった鎖状の化合物で、さまざまなペプチドが一緒に混合している状態)は神経伝達の制御に関与するさまざまな分子に作用し、神経信号を遮断する。モルヒネに代わる鎮痛剤として研究・開発が進められています。
- 抗菌剤:海洋微生物が生産する抗菌性代謝物は、自然界での競争や防御の一環として作り出される化学物質ですが多様な生物活性を持っています。例えば、放線菌や真菌類による二次代謝産物が挙げられます。これらは抗菌作用だけでなく、抗炎症や抗ウイルス、さらには抗腫瘍作用を示すことが知られています。海洋環境の特殊な条件、例えば高圧、極寒、高塩分といった過酷な状態では、微生物が通常の環境では見られないような独自の代謝物を生成する背景となっています。その中には、医薬品の開発に繋がる可能性がある特異な化学構造や活性を持つものもあり、科学者たちが新薬探索のために研究を進めていて、現在進行中の分野です。
- 抗ウィルス剤:ホヤやカイメンなど移動しない海洋生物からは抗ウィルス性を発揮する化合物が発見されている。ヒト免疫不全ウィルス(HIV)や新型ウィルス感染症の治療薬として注目されています。
- 免疫調整剤:海藻類が作り出す海洋性多糖類(アルギン酸、フコダインなど)が免疫系を活性化させる効果を持つことが確認されていることから、免疫不全の治療や新しいワクチンの開発に役立つ可能性があります。
- 酵素治療:深海微生物が作り出す安定性の高い酵素は、ヒトの治療にも活用できる可能性が高いとして、新しい消化酵素の開発が期待されている。
以上のように海洋生物は、我々人類にとって欠くことのできない生物群と云うことができます。新薬の開発や新しい治療法の確立に非常に重要な役割を担っていることをお忘れなく!
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3 気になるニュース・話題・心配ごと
① また、戦争が始まった!
6月13日に始まったイスラエルとイランの軍事衝突が2週目に突入し、両国間で激しい報復の応酬が続いています。6月22日にはアメリカのB2爆撃機によるバンカーバスター攻撃のニュースもありました。
国際海峡であるホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の船舶の安全航行が確保できるよう、早期停戦が望まれます。
➁ 漁業資源の減少
2024年度の水産白書が、令和6年6月初旬に水産庁から公表されました。2023年までの集計で特に目を引くのは、サンマ・スルメイカ・サケの漁獲量の減少が挙げられ、海水温の上昇、海流の変化が適温水域で回遊する魚類の分布や資源量に影響を与え、また、漁場が遠くなったこととにより、燃料油購入やその他の費用がかさみ漁業経営にも大きな影響が及ぼしていると指摘しています。

サンマ・スルメイカ・サケの漁獲量の減少状況(出典:水産庁・水産白書)・not edited.
➂ 黒潮大蛇行収束と巨大地震?
気象庁の発表では、まだ「収束の兆し」段階で「収束宣言」は出ていませんが、地震の発生と他の現象との相関関係について多くの研究がある中で、過去、大蛇行終息期(非大蛇行期)に入ってから数ヵ月以内に、太平洋側でM7超の海溝型地震が発生する事例が集中している(例:関東大震災、東南海地震など)としています。ただし、現時点では直接的な因果関係を立証する科学的証拠はなく、「相関は認められるが因果は未確定」という仮説段階に止まっています。
そのメカニズムは、黒潮の蛇行パターンが海底の水圧分布を大きく変動させ、プレート境界の応力の集中(実際に断層を滑りやすくする力)に影響を及ぼす可能性があるという仮説です。大蛇行時に海底が「押し付けられる」ように加圧され、終息後に急激に水圧が変化することで、すでに限界に近い南海トラフの断層が臨界点を越えて破壊に至りやすくなるというものです。
黒潮大蛇行の収束が南海トラフ巨大地震の“引き金”になり得る可能性は完全には否定できないものの、断層力学的に確立されたモデルや観測データはまだ不足しています。今後は、海底圧力計や地殻歪観測装置を用いたリアルタイムデータの取得、数値シミュレーションによる応力変化の精密評価などによって、この仮説の検証が求められています。
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四方海話77 ー ときの話題 ー §33 終わり
次回は 四方海話78 ー ときの話題 ー §34 です。

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