四方海話 57

ー ときの話題 ー  §14

ADIZ って?

ソマリア海賊復活⁉

大西洋子午面循環(AMOC)が崩壊⁉

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ADIZ って?

 Air Defense Identification Zoneの略で、アジズ、アディズ、アディーズなどと呼ばれていますが訳は防空識別圏。海には直接関連がありませんが、国土の防空上の必要から領空とは別に設定している空域を言います。

日本と近隣国の防空識別圏(青線は日本、赤線・中国、緑線・韓国、オレンジ線・台湾)〈出典:ウィキぺディア〉

作者マクシミリアン・デルベッカー(チュムワ), CC BY-SA 2.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0

 防空識別圏(ADIZ)は各国で常時監視され、事前の飛行計画なしに圏内に侵入した航空機に対しては識別と証明が求められ、領空侵犯の恐れがある航空機については軍事的な予防措置(いわゆるスクランブル:緊急発進)を発動されることもあります。

 元々は、日本が1941年、アメリカ合衆国に対し真珠湾攻撃を仕掛けたことに端を発しています。「高速で領土・領空を目指して接近する航空機に対して、領空を侵犯してから対応するのでは迎撃するのに時間的に間に合わない」との考え方に基づくものです。(1941年と現在とでは飛行機の速度は格段に速くなり、さらにADIZの外側からでも相手国の国土を攻撃できる「巡航ミサイル」も備えられている現代ですから、あまり意味がないとも思うのですが⁉)

 1950年にアメリカ合衆国が設定して以来、これに倣いカナダ、フランス、ソビエト連邦、イギリスが追随し、今では韓国、台湾、中国が線引きをしています。日本は戦後の占領下、日本の国土防衛を担うべく当時の*¹GHQが設定したものを、1952年平和条約が発効し防空任務も引き継がれ、我が国のADIZもほぼGHQが決めたまま継承されています。この中で中国は、2013年11月に近隣諸国と協議することなく一方的にADIZを設定しましたが、尖閣諸島領空を含む東シナ海の広い範囲に及んでいて、日本政府は厳重抗議しています。

 *¹GHQ:連合軍最高司令官司令部・General Headquarters(1945~1952)  

 ADIZの設定については、「シカゴ条約」(1944年成立、正式名称は「国際民間航空条約」、2011年時点で191ヶ国が加盟)で云うところの「公空の自由の原則」の立場から、法学者たちからは国際法違反であるとの指摘がありましたが、1950年アメリカ合衆国は世界初のADIZを設定し、航空機に対し位置報告と飛行計画の提出を義務付けました。

 防空識別圏(ADIZ)は、根拠となる国際法上の規定がありません。排他的経済水域(EEZ)同様、設定に対して明確な根拠がほしいところです。

 領空

 「領空」とは、「国家が領有する領土・領海上の空域」となります。

 領空の上限はどこまでなのか?については諸説があり、大気圏の限界までとする説、航空機が飛行できる最大高度とする説、*²カーマン・ラインまでとする説などがあるそうです。

「領空」の模式図(出典:ウィキぺディア)

 *²カーマン・ライン:海抜高度100㌖に引かれた仮想の線(面)で、国際航空連盟(FIA)が支持している。この線の外側(上空)が宇宙空間で、下側が大気圏であると定義されています。

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ソマリア海賊復活⁉

 ソマリア沖やアデン湾での海賊行為の発生件数は、関連各国の国際協力により2014年以降沈静化し、昨年(2023年1月)には国際海事局による「インド洋高危険区域」の指定が解除されましたが、イエメンの反政府組織(フーシ派)による紅海での通航船舶への攻撃に乗じて、活動を活発化させているようです。

  • 2023年11月 英国の石油タンカーが襲撃を受け、小型ボートで逃げようとするソマリアの海賊とみられる(米国防省の見解)襲撃犯5名を拘束しました。
  • 2023年12月 マルタ船籍の商船が拿捕され、乗組員が人質となりました。
  • 2024年1月 インド海軍がソマリアの海賊に捕らわれた2隻の船から、乗組員を救出したと発表しました。

 アデン湾に面するソマリアの北西部は、内戦の末一方的に独立を宣言した「ソマリランド」が実効支配しています。国境を接する内陸国「エチオピア」との間で、軍港の貸与契約を結び、引き換えに国家承認を約束したのだとか?これに対しソマリア政府は猛反発しているとのことで、対立が激化すれば海賊対策への対応力が低下し、再び海賊行為が増加しかねない。

ソマリアの勢力図(2017年4月現在)・黄色の部分がソマリランド(出典:ウィキぺディア)

 日本の自衛隊は 、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」海賊対処法)に基づいて、海上保安官が同乗した護衛艦1隻と対潜哨戒機1機を派遣している他、支援隊として海上自衛隊と陸上自衛隊とを統合した部隊もジブチの拠点に、その維持・管理等にあたっています。

派遣中の海上自衛隊P3-C対潜哨戒機(出典:海上自衛隊ホームページ)

派遣中の護衛艦(出典:ウィキぺディア)

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大西洋子午面循環(AMOC)が崩壊⁉

 海水は常に海流により海洋を循環しています。大西洋子午面循環(AMOC)は、大西洋での暖かい表層流(メキシコ湾流等)が北上し、北大西洋を横切りながらノルウェー海から北極圏のバレンツ海に至り、冷却されて密度が大きくなり深海に沈み込み、深層流となってグリーンランドの東を通り大西洋を南極海まで長い年月をかけ、非常にゆっくりと流れているのだそうですが、この流れは海水の温度と塩分による密度の差によってもたらされる非常にゆっくりとした動きで「熱塩循環」と呼ばれ、そのスピードがさらに遅くなっていることがアメリカの科学誌に発表された由。

 AOMCは、地球規模のベルトコンベアーの役目を果たしていて、北半球に熱を供給し地域を比較的温暖に保っている一方、海洋生物に必要な栄養分を運搬している。気候変動に伴う海洋の温暖化や南極大陸などの氷の融解により、海流の強さを決定する熱と塩分のバランスが乱れ、AOMCが弱まっているとして研究者たちが警鐘を鳴らしているところです。

 この循環が止まったらどうなるのか?後氷期の初期、グリーンランドや北アメリカの氷床の融解によって低密度(低塩分)の淡水が海洋に大量に流入し、北大西洋での深層水の形成や沈み込みが極度に阻害され、これがヨーロッパの気候変動*³「ヤンガードリアス」イベントを引き起こしたとも考えられています。

 *³「ヤンガードリアス」:12,900年前~11,500年前頃、最終氷期が終り温暖化が始まった状態から急激に寒冷化に戻った気候変動現象。

深層循環の模式図(出典:気象庁HP)

 海洋の循環を表層と深層の二層で単純化したもので、青い線は深層流、赤い線は表層流を示す。〔IPCC(2001)をもとに作成〕(気象庁注)

 上図は、気象庁のホームぺージに掲載されている「深層循環の変動について」の付図、深層循環の模式図です。説明文曰く、

 海洋の深層循環は、海水の水温と塩分による密度差によって駆動されており、熱塩循環と呼ばれています。熱塩循環は、現在の気候において、表層の海水が北大西洋のグリーンランド沖と南極大陸の大陸棚周辺で冷却され、重くなって底層まで沈みこんだ後、世界の海洋の底層に広がり、底層を移動する間にゆっくりと上昇して表層に戻るという約1000年スケールの循環をしています。(気象庁HPより、原文のまま)

 ヨーロッパの某大学の研究チームは、2025年中にも熱塩循環が止まるとの研究結果(コンピュータ・シミュレーション結果)を公表しました。

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四方海話 57   ー ときの話題 ー  §14   おわり

次回は 四方海話 58  ー ときの話題 ー  §15  です。

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