ー ときの話題 ー §13
海底熱水鉱床
太古の大陸?
アトランティス大陸・ムー大陸・レムリア大陸
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海底熱水鉱床
深海底に存在し、地殻の深部に浸透した海水がマグマ等により加熱され、地殻に含まれた有用金属成分が溶け込んだ「熱水」が海底に噴き出した後に周囲の海水で冷却され、付近の海底に沈殿・堆積したものです。
経済産業省の*¹「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」(2019年)の中での位置付けは
『陸域の金属鉱物資源に乏しい我が国は、その需要量のほぼ全てを海外からの輸入に頼っている。我が国の周辺海域に賦存する海洋鉱物資源は、他国の政策等の影響を受けにくい安定的な資源供給源を持つという観点からその開発に向けた取組が進められてきた。
海底熱水鉱床は、海底の地下深部に浸透した海水がマグマ等の熱により熱せられ、地殻に含まれている有用元素を抽出しながら海底に噴出し、それが冷却される過程で、熱水中の銅、鉛、亜鉛、金、銀等の有用金属が沈殿したものである。我が国周辺海域では、島弧ー海溝系に属する沖縄海域及び伊豆・小笠原海域において、水深700m~2,000mの海底に多くの海底熱水鉱床の兆候が発見されており、比較的近海かつ浅海に賦存しているため開発に有利と期待されている。』(『』内は「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」 第3章 海底熱水鉱床 3.1背景 前文、出典:経産省、原文のまま)
*¹「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」:経済産業省が策定した、日本の領海、延長大陸棚を含むEEZ(排他的経済水域)内の海底に広がる資源を有効活用していくための中長期的計画のこと。この計画は「海洋基本法」(2007年7月施行)に基づいて作成され、海洋エネルギー・鉱物資源(メタンハイドレート、石油・天然ガス、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥)ごとに開発目標と達成までの道筋、技術開発、官民分担などについて定められています。

海洋エネルギー・鉱物資源の概要(出典:資源エネルギー庁資料)
熱水鉱床は、日本のEEZ内では「沖縄海域」(沖縄トラフ周辺)や「伊豆・小笠原海域」の伊豆・小笠原火山列島狐に沿ってベント、チムニーと呼ばれる「熱水噴出孔」(*²「ブラックスモーカー」や *³「ホワイトスモーカー」)が発見されていて、この付近に鉱床が存在する。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の2007年1月の発表によれば、同機構所属の有人潜水調査船「深海6500」を使用した沖縄トラフでの調査で、石垣島の北西約50㌖付近の鳩間海丘(はとまかいきゅう:水深1470㍍付近)で「ブルースモーカー」を発見した旨の報告もありました。

我が国EEZ内の海洋鉱物資源分布図(出典:経産省資料)
*²「ブラックスモーカー」:海底でおよそ300℃以上の高温の熱水が噴き出す噴出孔(チムニー)で、地殻から熱水に溶け込んだ高レベルの鉛・亜鉛・銅・鉄などの金属硫化鉱物が多く含まれ、海水と反応して、噴き出す熱水が黒色に見えるためブラックスモーカーと呼びます。

ブラックスモーカーの熱水噴出の様子(出典:ウィキぺディア)
*³「ホワイトスモーカー」:熱水の温度がブラックスモーカーに比べて低く、含まれる金属(バリウム、カルシウム、シリコンなど)が比較的に少ない場合、噴出する熱水が白色に見えるためホワイトスモーカーと呼ばれています。
熱水噴出孔付近の生物
高圧でしかも真っ暗な深海底でも、熱水噴出孔から噴出する熱水に含まれるミネラル分を頼りに、太陽光の恩恵を受けずに生きている生物がいます。
「アーキア」(古細菌:単細胞生物で、細菌〔バクテリア〕、真核細胞(ユーカリオタ)とともに生物界を三分する原核生物で、細胞に核を持たない生物群。極限環境微生物として知られる種も多く、熱水鉱床付近に生息する「超好熱菌」、温泉などに生息する「好熱好酸菌」、死海など高塩分の湖などにいる「高度好塩菌」、牛の胃の中に存在する「メタン生成菌」などがこの仲間なのだそうです。)のほか、メキシコ沿岸の深さ2,500㍍に位置するブラックスモーカーの周辺では、光合成細菌(緑色硫黄細菌)が発見され、太陽光ではなく熱水噴出孔から発せられる微弱な赤外光を利用して光合成をしているとのことです。熱水噴出孔付近では、これらの細菌が増殖してマット状に広がり、これを餌とする小さな甲殻類が集まり、さらに巻貝(ウロコフネタマガイ:インド洋:絶滅危惧種)、二枚貝(シロウリガイ、シンカイヒバリガイ)、エビ(ゴエモンコシオリエビ,オハラエビ)、カニ(イバラガニの仲間など)、*⁴チューブワーム、深海魚など、我々の想像以上に多彩な生物が生態系を形成しているらしい!

ゴエモンコシオリエビの標本(国立科学博物館蔵)(出典:ウィキぺディア)
*⁴チューブワーム:口も消化管もなく、バクテリアを体内に寄生させ、先端の毛状の赤い部分で硫化水素・酸素・二酸化炭素などを取り込んで特殊なヘモグロビンと結合させ、硫黄酸化物を体内に共生するバクテリアに供給し、その代償としてバクテリアは有機化合物を合成してワームに供給していて、双利共生(そうりきょうせい:いわゆる持ちつ持たれつ)の関係にあるそうです。

ブラックスモーカーの周りに群生するチューブワームの例(出典:ウィキぺディア)
昨年(2023年)11月、「海底熱水鉱床開発計画・総合評価報告書」が経産省資源エネルギー庁から発出され、今後の展望が示されている。曰く、
資源量調査:これまでの調査により、沖縄海域と伊豆・小笠原海域で合計5,180.5万㌧の概略資源量を把握しているが、さらにマルチビーム音響測深機・自立型無人潜水機・深海曳航体等、最新の技術を導入して調査を実施すべきこと。
環境影響評価:長期に渡る作業により継続的に発生する濁りの拡散や再堆積の範囲を予測する。商業生産時の環境影響を監視するためのモニタリングのあり方の検討。生物多様性の保全のために保護すべき範囲の設定。
採鉱・楊鉱技術:世界的にも海底熱水鉱床開発の事例がないため、商業化に向けて採鉱・楊鉱システム構成機器の技術・信頼性を向上させる。環境影響を考慮したうえシステムを改良し、生産効率、経済性の向上を図る。
選鉱・製錬技術:選鉱工程のコストダウンと製錬技術(精鉱中の不純物除去)の改良。
法制度のあり方の検討:ISA(国際海底機構:国連海洋法条約により深海底〔沿岸国の大陸棚の外側のいずれの国の管轄権も及ばない海底及びその下〕の鉱物資源の管理を目的とする。1994年に設立された国際機関で、日本はその理事国になっています。本部はジャマイカのキングストン)で議論されている国際的ルールの策定に貢献するとともに、現行国内法の条文解釈と国際ルールとの整合を図る。
としています。下図は現在確認されている熱水噴出孔の分布図です。

熱水噴出孔の分布図(出典:ウィキぺディア)
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太古の大陸!
アトランティス大陸
アトランティス大陸の存在を最初に言い出したのは、古代ギリシャの有名な哲学者「プラトン」なのだそうです!著書の「ティマイオス」と「クリティアス」という対話集(題名はいずれも人名で、しかもクリティアスの方は未完)の中で記述された伝説上の大陸・帝国で、今から約12,000年前ころ海没したと記されています。

プラトンの肖像画・ラファエロ〈アテナイの学堂〉の一部 (出典:ウィキぺディア)
下図は、「アタナシウス・キルヒャー」という17世紀、ドイツ出身の学者・司祭が描いた「アトランティス大陸」の絵地図で、1699年にアムステルダム(オランダ)出版された。南北が反転して描かれているので、画面の左にジブラルタル海峡がある。

アトランティス大陸の絵図・南北が逆に描かれていることに注意(出典:ウィキぺディア)
地中海の西の端、ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の沖、大西洋の中央部にアトランティス大陸があった。資源が豊富なうえ農業・牧畜も盛んで、豊かな帝国は強力な軍隊を持ち、大西洋を中心として地中海の西部を含む広い領土を支配していた。王家はポセイドン(ギリシャ神話上の海と地震を司る神)末裔だったものの、人間との混血が進むにつれ堕落し、物質主義に走ったうえ領土の拡大を図り荒廃していった。ギリシャ(アテナイ=アテネ)は近隣諸国と連合してアトランティス帝国と戦い勝利したが、その直後、一夜にしてアトランティス大陸は海中に没し滅亡したとされ、これを神々の罰(神罰)であるとしています。
1870年、フランスの作家「ジュール・ベルヌ」のSF海洋小説「海底二万海マイル」が発刊され、海中に没したアトランティス大陸が描写され、大衆文化の中にアトランティスブームが起きました。また、1882年、アメリカの政治家(下院議員:共和党)で作家の「イグネイシャス・ドネリー」が「アトランティス・大洪水以前の世界」を出版し、大人気となり、アトランティス大陸の実在がクローズアップされたそうです。
アトランティス大陸の実在については様々な説があり
- 地中海説:現在のギリシャ・サントリーニ島であると主張して、クレタ島のミノア文明がアトランティスだったとする説
- 大西洋説:プラトンの記述のとおり大西洋に実在したとする説
- 南極大陸説:アトランティスは現在の南極大陸であり、氷の下になっているとする説
さらに、2013年「海洋研究開発機構」(JAMSTEC)が「しんかい6500」使って実施した、ブラジル・リオデジャネイロ南東約1,500㌖沖の大西洋の海底(水深約1,000㍍)に存在する「リオグランデ海膨」(かいぼう)の調査で、通常海底の岩盤には無いとされる「花崗岩」が大量に発見され、アトランティス大陸を発見したとして同機構とブラジル政府が共同発表したが、海底の花崗岩はジーランディアやインド洋・セイシェル周辺、あるいは小規模ながら日本海の大和堆(やまとたい)にも例があり、さらに文明・建造物の形跡の発見がなかったことなどから、アトランティス大陸とは無関係であると結論付けられました。
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ムー大陸
こちらの言い出しっぺは、自称元英国陸軍大佐(在籍記録なし=経歴詐称?)でアメリカのジェームズ・チャーチワードという作家が、1926年と1931年の著書で「失われたムー大陸」として述べている。

ムー大陸の絵図・チャーチワード作(出典:ウィキぺディア)
太平洋の中央に東西7,000㌖、南北5,000㌖の大陸があり、6,000万人以上が暮らしていたとされ、ハワイ諸島、マリアナ諸島、イースター島など南太平洋に点在する島々はもともと陸続きで、高度な学問、文化と建築能力、航海術を持ち、支配者が白人である超古代文明が繁栄していたが、神の怒りを買い(理由は不明)、約12,000年前、巨大地震と火山噴火、大津波で一夜にして海底に没したとし、古代の碑文や石板の絵文字の存在、あるいは旧約聖書の「創世記」の物語はムー大陸滅亡の記録であると主張した。
チャーチワード氏の経歴詐称が発覚するとこれらの資料の存在自体に疑義を持たれ、20世紀後半に至り海底探査技術の発達により、複数の海底調査の結果「太平洋の海底は、数千万年前からずっと海だった」ことが判明している。
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レムリア大陸
1874年、イギリスの動物学者「フィリップ・スクレーター」がアフリカ・マダガスカル島の固有種「キツネザル」の進化についての研究で、キツネザルの祖先の化石がインドで発見されたこと、また、近縁の原猿類がアフリカ中部と東南アジア・マレー半島のインドネシアに生息・分布することから、「5,000万年以上前のインド洋に、インド南部・マダガスカル島・マレー半島に跨る大陸が存在したのではないか」と考え「レムリア大陸」(キツネザルの英名Lemur:レムール)が存在したとして大陸説を提唱した。一方、ドイツの「エルンスト・ヘッケル」という医師・生物学者は、自著「自然創造史」でレムリア大陸こそは「人類発祥の地」であると主張した。

レムリア大陸の位置図(出典:ウィキぺディア:赤囲い強調は筆者)
(人類を12人種とし「レムリア」からの拡散を推定した19世紀の地図:作者不詳〔ヘッケルか?〕)
1950年ころまではレムリア大陸の実在が優勢でしたが、1960年代の後半「プレートテクトニクス理論」が大勢を占め大陸移動説が確実なものとなって、レムリア大陸説は否定されることとなりました。
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四方海話 56 ー ときの話題 ー §13 「おわり」
次回は 四方海話 57 ー ときの話題 ー §14 です。

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