ー ときの話題 ー §26
Ⅰ COP29
Ⅱ 海洋プラスチック
Ⅲ PFAS・PFOA
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Ⅰ COP29
「第29回国連気候変動枠組条約締約国会議」(COP29)がアゼルバイジャン共和国のバクーで11月11日~24日の間開催され、成果が報道されました。
COP29での決定(合意)事項と問題点
1 資金の増額
途上国への気候変動対策資金を、今までは年間1,000億ドル(約15兆3,400億円)とされていましたが、2035年までに今までの3倍の年間3,000億ドル(約46兆円)とすることが決定されました。
増額は決定されたものの、関係者や専門家からは以下の理由でこの額では充分ではないとの指摘があります。
- 開発途上国が気候変動に適応し、さらに温室効果ガスを削減するためには少なすぎる。
- インフレ率が仮に年間5%とすると、2035年までに3,000億ドルとは実質的に1,750億ドル程度に減少してしまう可能性がある。
- 気候変動の影響を受け、あるいは受けやすい地域やコミュニティーに対する適応策が充分に実施されない可能性がある。
- 公的資金だけでなく、民間資金を始めとして他の資金調達方法も必要である。
- 途上国のなかには、既に巨額の債務を抱えている国も多く、気候変動対策に支出できる資金は少ないのが実情である。
途上国は、会議に先立ち1兆3,000億ドル程度の先進国からの支援合意を求めていたものが、3,000億ドルに留まり、「あまりに不充分で手遅れ」「はした金」の声が上がり、島嶼国からも「私たちの島々は海に沈みつつある。一体どうやって、わたしたちの国々の国民のもとに不充分な合意を持って帰れというのか」との不満も漏れていた由。
2 炭素市場の運用上の問題点
パリ協定に基づく、炭素市場(カーボンクレジット)の運用方法について合意したものの、さらにいくつかの解決すべき重要事項が指摘されています。
- 国際基準を設ける上での調整の困難性。
- 透明性と公正性の確保。
- 価格変動に対するリスクの軽減対策。
- 取引の手続きに伴う報告要件が複雑・多岐にわたるため、参入への障壁が高くなる可能性がある。
- 市場における不正行為や詐欺のリスクに対する厳格な対策。
これらの問題を解決するため、厳格な規制と国際間の協力がより重要となる。
3 適応策の強化
途上国への気候変動に対する耐性や回復力への支援策は
- 地域社会の適応力の向上:地域ごとの気候変動の影響に対応するための戦略や計画が策定され、地域社会の適応力を高める。
- 持続可能な農業への支援:洪水や干ばつに対する対策や農作物の適応策に対する戦略や計画を支援するとともに、持続可能な農業技術の導入を推進する。
- 気候変動に対する保障:災害発生後の復興支援のあり方や保険制度を整備し、気候変動によるリスクを軽減する。
- 技術移転と資金援助:途上国への気候変動に適応するための技術移転やそれに伴う資金援助が強化された。
問題点
- 適応策を推進するための資金が充分に確保されていない。
- 合意された適応策が実際上どのように実行されるのか、具体的な計画が示されていないか、不足している。
- 国際協力体制が不充分:国際協力により効果的対応が可能であるという期待がある一方で、この体制が不充分だという意見がある。
- 適応策の実施・進捗状況を明確にし、各国が約束を誠実に守っているか否かを確認するための透明性が充分に確保されていない。
などの指摘があります。
・・・ COP29 開催期間中のエピソード・・・ 《メディア拾い読み》
・米次期大統領の話題
アメリカの次期大統領が決定したことにより、エネルギー政策が変更され「気候変動枠組条約締約国会議」(COP会議)そのものの存続を含む将来を危ぶむ声が上がった。
・先進国と途上国の溝が拡大
資金の拠出額をめぐって、先進国に対する途上国の不満が高まった。
・日本「特大化石賞」受賞
日本は「*¹気候変動枠組条約付属書Ⅱ国」の一員としてNGO団体から「*²特大化石賞」を受賞した。
受賞理由:資金の提供不足と資金目標の交渉を加速させる努力を怠っていると指摘された。
*¹気候変動枠組条約付属書Ⅱ国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、欧州委員会(EC)、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ
*²特大化石賞:「今年、最も交渉の進展やパリ協定の実施を妨げた」と判断された国がNGO団体(CAN)によって選ばれ、授与される。
次回のCOP30はブラジルのアマゾン地域の都市「ベレン」で、2025年11月10日~22日の間、開催が予定されています。
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Ⅱ 海洋プラスチック
「海洋プラスチック問題」については、昨年(2023年)9月公開の「四方海話 44」で詳述しましたが、先月(2024年11月)25日~12月1日にかけて、韓国の釜山で、プラスチック汚染を根絶するための法的拘束力のある国際文書(条約)制定に向け、最終とされていた委員会「第5回政府間交渉委員会(INC-5・177か国が参加)が開催され交渉を進めたところ、最終合意が得られないまま中断して来年(2025年・会期未定)に持ち越されてしまいました。

プラスチック廃棄物の発生量の推移(出典:環境省・環境白書資料)・not edited.
会議では、プラスチック素材の生産削減目標の設定を求める国々と、生産量規制に関する条文を盛り込むことに反対する産油国の間で意見の隔たりが大きく、条約文の初稿(文案)さえも完成に至らなかった由。
産油国は、2022年の第一回会議から一貫してプラスチックの生産削減に法的拘束力を持たせることに強硬に反対してきましたが、今回も妥協の余地なく態度の変化も見られず、会議期間中、議長(エクアドル大使:ルイス・バヤス・バルディビエソ氏)が非公式文書で、生産量削減の義務化の文言が削除されたものの産油国は絶対反対の立場を崩さず、さらに、委員会の開催国である韓国政府からリサイクル素材の使用拡大の他、ペットボトルの再生材の含有率を上げることなどの妥協案を提出し、調停をはかりましたが効果はなかったと報道されています。
また、生産プラスチック製品と関連化学物質の管理方法や義務を果たすための資金確保の点についても意見に隔たりが大きく、合意に到達できませんでした。
次回のINC会議(第5-2次会議【INC5-2】)は開催時期未定、開催国・都市はケニア・ナイロビでの開催になるらしいです。

「海洋プラスチックゴミが絡まっているウミガメ」(出典:令和2年版環境白書)・not edited.
お正月休み中、海辺に出る機会もあるかと思いますが、白砂青松(はくさせいしょう)は昔の話!よく見ると、渚にはカラフルなマイクロプラスチックと漂着ゴミ、港はコンクリートの護岸とテトラポットに囲まれ、その隙間にはペットボトルや発泡スチロール、廃漁具、プラスチックゴミなどが挟まっています。なんとも、表現する適当な言葉が見当たりません!
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Ⅲ PFAS・PFOA
国土交通省と環境省は共同で、日本全国の水道事業者、水道用水供給事業者が各家庭に供給している水道水に含まれるPFAS・PFOAについて水質検査を行い、その集計結果が公表・報道されました。
検査の結果、*¹暫定目標値を超過した事業は、令和2年度は11事業ありましたが、年々減少し、令和5年度は3事業、令和6年度(9月 30 日時点)は0事業でした。なお、令和5年度までのいずれかで暫定目標値を超過した全14 事業において、最新の検査結果では、全て暫定目標値を下回っています。(令和6年11月29日、国交省、水管理・国土保全局水道事業課の広報資料から、原文のまま)
これをもって、水道水(飲み水)の汚染問題は一件落着⁈・・・なのか?
*¹ PFOS及びPFOAの暫定目標値:令和2年度に水質管理目標設定項目に位置づけ、暫定目標値として、PFOS及びPFOAの合算で50ng/Lを設定。体重50kg の人が水を一生涯にわたって毎日2リットル飲用したとしても、この濃度以下であれば人の健康に悪影響が生じないと考えられる水準を基に設定されたもの。
日本では今年(2024年)4月から、これまで厚生労働省が一元的に行なってきた水道に関する政策のうち、水質基準の策定、水道整備・管理のうち水質・衛生が環境省に、水道整備・管理のうちの水質・衛生以外は国土交通省に移管されました。専門性への配慮・効率的運営・法規制(環境基本法、水質汚濁防止法、水道法、建築基準法など)の整合性の保持・災害対応の迅速化などを目的としているそうですが、管理体制が複数の省庁に分散するより、アメリカの*²米国環境保護庁(EPA)の規制やヨーロッパ(EU)の*³REACH規則による規制のほうが優れていると感じるのは私だけでしょうか?
*²米国環境保護庁(EPA):アメリカ合衆国の連邦政府機関で、環境保護と人々の健康を守るための規制や政策を実施しています。環境規制の制定と施行・研究と情報提供・環境教育と啓発を主な任務とする。
*³REACH規則:EUが制定した化学物質の登録、評価、認可、および制限に関する規則です。この規則は、化学物質の安全性を確保し、人の健康と環境を保護することを目的としています。
・米国環境保護庁(EPA)の、PFAS(有機フッ素化合物)に関する水道水の規制値
PFOA: 4 ppt(ng/L)・PFOS: 4 ppt(ng/L)
・REACH規則の規制値 PFOA: 0.1 µg/L・PFOS: 0.1 µg/L
・日本の暫定目標値 PFOAとPFOSの合計で : 50 µg/L
岡山県吉備中央町での事件はメディアで大きく取り上げられ記憶に新しいところですが、原因としてPFAS除去のために使われた使用済み活性炭を川の上流の資材置き場に長期間放置していたためだと報道されています。除去に有効な方法も処理を誤ればかえって有害となってしまいます。使用済み活性炭の適正な後処理方法についても厳格な法整備が必要なのかも知れません。
以上は水道水(飲み水)の話ですが、PFASは別名「永遠の科学物質」と呼ばれるほど自然には分解されません。既に自然環境の中(土壌、河川、地下水、海洋、海底、大気中)に大量にバラ撒かれてしまっています。回収や処理方法について研究されてはいますが、自然環境が相手では人類の力は及ばないのではないでしょうか⁈
農林水産省では、水産物(マイワシ、カツオ、マダラ、アサリ、アユ)についてのPFAS・PFOAの予備的調査を行ったとして調査結果を公表しています。【有害化学物質リスク管理基礎調査委託事業調査結果(令和3・4年度)】参照。
令和6年度の発表分の「農畜水産物のPFASの含有実態調査」では、PFOS、PFOA、PFNA、PFHxSの4種について調査する。としていますが、結果は未発表です。
日本の過去の公害事件での国の対応は「事後対応」が中心となっていました。健康被害が拡大してからでは遅いのです。早急に「予防原則」にシフトして、先手✖2で手を打っていかなければならない問題だと思いますが、読者諸氏はどう考えますか?
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四方海話 69 ーときの話題 ー§26 終わり
四方海話 70 ーときの話題 ー §27 です。

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