四方海話オリジナル宝船絵図

ー ときの話題 ー §26
Ⅰ 気候変動の将来
Ⅱ タコブネ
Ⅲ 日本のSDGsの進捗状況
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Ⅰ 気候変動の将来
「1.5℃の約束」を横目に見ながら、現時点では、先進国と途上国の溝が埋まらず、有効な手立てを講じることができないでいる人類と地球の将来は???
1.平均気温の上昇
気候変動の中でも最も深刻かつ重大な問題です。もう既に地球全体の平均気温は上昇して、海面水温の上昇・熱波・干ばつ・洪水など極端な気象現象が発生しています。下図は気象庁が公表している「世界の年平均気温偏差」(上)と「日本の年平均気温偏差」(下)です。トレンドは、日本が世界に比べて約2倍となっていることが読み取れます。これは気温の上昇が日本で特に顕著であることを表わしています。

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。
基準値は1991〜2020年の30年平均値。
世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2024年:速報値)(出典:気象庁資料)・not edited.

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。
基準値は1991〜2020年の30年平均値。
日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2024年:速報値)(出典:気象庁資料)・not edited.
➀ 平均気温の上昇が世界の漁業に与える影響
- 魚の分布の変化:日本近海でこれまで獲れていた魚が居なくなったり、南方で獲れていた魚が東北地方や北海道付近まで北上が確認されている(クロマグロ、サバ、ブリ、サワラなど)一方、冷水域で漁獲されていた魚類の回遊が少なくなる(スルメイカ、サンマ、サケ)など生息域や回遊ルートの変化が現れているようです。外国での事例は情報が少なく、よく判りませんが、多少の差があるとはいえ同様の傾向がみられるものと思われます。
- 漁獲量の減少:海水温度の上昇により、餌となる動植物プランクトンの減少や海洋酸性化の影響もあり、魚類の減少につながるとの指摘もあります。
- 沿岸漁業資源への影響:日本では藻場の減少や磯焼けによりワカメやコンブ、ウニ、サザエ、アワビなどの漁獲高が減少傾向にある他、世界の熱帯・亜熱帯域ではサンゴ礁の白化現象も進んでいます。中でも藻場の減少は水産物の資源保護の視点からするとたいへん重要で、ホンダワラなど浅い磯場に生息する褐藻類(かっそうるい)は、成長すると波や潮流により基質部(根っこ部分)から引き剝がされ、葉の一部が変形した気泡の浮力により海面に浮き上がって、流れ藻となり海上を漂いますが、光合成により自らも成長しながらその周囲でプランクトンや小エビ、小魚、幼魚を養いながら漂流して、それ等を餌にする中大型の魚類や海鳥も集まってくる。いわば、『海の保育園』の役目を果たしています。しかしながら、昨今は海洋プラスチック(マイクロプラスチック、ナノプラスチック)さらにはゴーストギア(漁業活動に伴う廃プラスチック類)も一緒に漂流し、小さな魚類が誤食やゴーストフィッシングにより命を落としているのが実状です。海洋プラスチックは魚類などの食物連鎖のなかに入り込み、その影響は魚を食べる人間だけでなく海棲動物や海鳥にまで範囲が広がっています。

「ホンダワラ」(出典:ウィキペディア PD)・not edited.

「潮目に沿って漂流するホンダワラなどの流れ藻」(出典:ウィキペディア PD)・not edited.
➁ 平均気温の上昇が世界の農業に与える影響
- 作物の生産量と品質の低下:米や麦の収穫量の減少、病害虫の異常発生、果物の生育異常や着色不良、日焼けなどにより生産量、品質ともに低下傾向にあります。
- 栽培適地の変化:いままでの地域での農作物の栽培が難しくなり、好適地が変化する可能性があります。
- 家畜への影響:特に夏季の高温による家畜への被害は深刻な状況となっていますが、ウシ(乳用・肉用)、ブタ、ブロイラー等について暑さに対する低減策として冷房装置の利用が考えられるもののコストの負担が増加します。一方で、餌(飼料)へのビタミン剤の添加、人工授精の手法改善、剪毛や暑さに強い種を選抜して飼育するなどの研究が進められています。
- 病害虫による被害拡大:病害虫の発生や分布・生息域が変化し、また、一部の害虫は世代数が増加(年に複数回の発生)することがあるとの研究結果が報告されています。
➂ 平均気温の上昇が人の健康への影響
- 熱中症の増加:気温の上昇は熱中症の増加につながります。特に高齢者や子供についてはリスクが高くなります。
- 感染症の拡大:蚊やダニなど媒介生物が増加して病原体を運び、マラリア・デング熱・ライム病・エボラ出血熱、ラッサ熱などの感染拡大が懸念されます。
- 呼吸器系疾患の増加や悪化:気温の上昇に加え大気汚染物質の増加により、気管支喘息や閉塞性肺疾患など呼吸器系疾患の増加や悪化が考えられます。
- 栄養不良と食料不足:農作物の収穫量減少は、人間の栄養不良と食料不足に直接関わる重大な問題です。アフリカやアジアの一部地域では既に深刻化しています。
- 精神的な健康への懸念:災害の増加などによる生活環境の急変は、人に大きなストレスや不安を与え、うつ病などの精神的疾患が増加する可能性があります。
2 生物生態系への影響
- 生息域の変化:動植物が気温や海面の上昇によって、現在の生息地域では生存できなくなっています。極地の海氷や氷河の面積が減少しホッキョクグマやペンギンの生息地が脅かされています。
- 多様性の減少:多くの動植物に絶滅の危機が襲い、多様性が縮小することにより生態系のバランスが崩れてしまう可能性があります。
- 繁殖への影響:動植物の繁殖成功率や繫殖地の変化により個体数や密度の減少が考えられます。
- 固有種の減少:絶妙な地域独特の生態系バランスの中で、固有種として命を繋いでいるおよそ100万種の動植物が激減してしまう可能性が指摘されています。
3 海面上昇
① 海岸線の変化
平均海抜の低い国々(モルディブ、ツバル、キリバス、マーシャル諸島、カタール、オランダ、ガンビア、エストニアなど)では国土の保全が深刻な問題となっています。海面上昇が続けば、住居の移動や浸水対策などのインフラ整備に巨額の費用がかかり、その国の経済を圧迫します。
➁ 沿岸部の生態系の変化
干潟(湿地)やマングローブ林に変化をもたらし、その効用が失われてしまいます。
干潟(湿地)、マングローブ林の効用
- 生物の多様性に寄与:小型甲殻類や貝類、小型魚類の生息、繁殖地であるとともに、渡り鳥などにとっては渡り途上の休息地あるいは餌場にもなっています。
- 水質浄化:干潟を構成する泥や砂は、汚染物質を吸収・固定し水質の浄化に役立っています。
- 海岸の保護:波や高潮から海岸を守り、侵食を防いでくれています。
- 炭素の吸収・固定:大量の炭素を吸収・固定し、気温上昇の緩和に寄与しています。
➂ 淡水資源への影響
海水が内陸に侵入することにより淡水と海水が混ざり合って、農業用の灌漑用水や飲料水の供給に支障が出ることが考えられます。
④ 住民の健康への影響
前述した1-➂各項目の他、海面上昇による家屋の浸水や洪水の発生によって、居住地の衛生環境の悪化や感染症拡大の心配があります。
4 世界経済への影響
- 自然災害の増加:災害が増加し、対策費用をはじめ、インフラの修復や被災者の救援に多額の費用が必要となり、経済基盤の脆弱な途上国単独では対応できなくなる可能性があります。
- 農作物の収穫量の減少:収穫量が少なくなり、価格が高騰して食料不足による飢餓がさらに深刻化するものと思われます。
- 漁獲量の減少:魚類の生息域や回遊パターンが変わり漁獲量が減少することにより、漁業に依存している地域経済が大きな打撃を受けることとなります。
- 第三次産業への影響
- 保険業界:自然災害により保険金の支払いが増加し、保険料が上がることになります。
- 観光業界:観光地の環境が変わり、観光客の減少に繋がります。
・・SDGsの進捗状況・・
持続可能な開発目標報告書(SDGsレポート2024)が2024年6月末公表されました。この報告書の冒頭、グテーレス国連事務総長は次のように指摘しています。
この「SDGs報告書2024」は、悲痛な内容を含んでいる。それによると、SDGsのターゲットのうち予定通りに進んでいるのはわずか17%だけであり、半数近くがごくわずか、あるいは緩慢な進捗にとどまっている。また残りの3分の1以上のターゲットの進捗は、停滞しているか後退している。
2024年9月の「未来サミット」では「未来のための協定」が採択されましたが、気候変動に関しては、2050年にはGHG排出量を正味ゼロとする目標を実現するためにエネルギーシステムにおいて化石燃料から脱却し、持続可能な開発に対して災害リスクに基づいたアプローチを推進する必要性を確認するとともに、持続可能な消費・生産パターンの推進、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある合意の締結、生物多様性の喪失の反転や生態系の保護など、環境に関する取り組みを加速させることももとめています。(2024年11月29日、国連から発表された「未来サミット」日本語版資料から)
この約2ヵ月後に開催された「第29回国連気候変動枠組条約締約国会議」(COP29)の結果は「四方海話69」にまとめたとおりです。

SDGsの進捗状況(出典:国連広報センター資料)・not edited.
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タコブネの写真三態



タコブネの画像(著者撮影)
雌のアオイガイ(葵貝:名前は貝だが小型の蛸、別名カイダコ【貝蛸】、他の蛸と同様頭足類に分類されている)が卵を守るために貝殻様の防護ケース(殻の厚さは薄く、軽い)を造り、産卵し、自身も中に入って海上を漂流しながら生活するのだとか。殻のみが海岸(砂浜)に漂着することもあるらしい。殻(タコブネ)の大きさは最大8㎝程度、雄のアオイガイはたいへん小さく4㎜程度だそうですから、これを見たことがある人は非常に少ない!
漂流中の実物を見たことはありませんし、生態もよく分かっていませんが、食性(肉食性:小魚や甲殻類)と生まれた赤子の成長の糧を考えると、流れ藻を拠り所としながら一緒に漂流しているのではないでしょうか?熱帯から温帯にかけての海域に、多少形態を異にしながら広く分布しているそうです。
タコブネとアオイガイは別の生き物であり、近縁種であるとする説もあります。また、食べてみた人も居るらしいですがあまり旨くなく、そもそも小さすぎて腹の足しにならないのだとか。
水族館での飼育はとても難しく、漁業者の網に掛かったとして持ち込まれることがあるものの一週間程度で死んでしまうらしいので、公開の情報があれば是非一度見に行ってみたいと思っています!
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Ⅲ 日本のSDGsの進捗状況
2024年の日本のSDGs(持続可能な開発目標)達成度ランキングは167ヶ国中18位でした。(Sustainable Development Report 2024年版:第一位はフィンランド、第二位スウェーデン、第三位デンマーク、四位~十位、ドイツ、フランス、オーストリア、ノルウェー、クロアチア、イギリス、ポーランド)
日本のSDGsの進捗状況図

日本のSDGsの進捗状況図(出典:Sustainable Development Report 2024)・not edited.
国連が設定している17項目の目標の中で「達成」とされているのは「目標9」(産業と技術革新の基盤をつくろう)のみでした。「さすが技術大国日本」と考えるのか、「一項目だけなの?」とするのかは読者諸氏にお任せしますが、私としては「チョッと寂しい」気がします。
以下はSustainable Development Report 2024での日本の評価です。
【課題が残る】(図で薄いオレンジで表示)されている目標
- 目標1 ・・・ 貧困をなくそう
- 目標3 ・・・ すべての人に健康と福祉を
- 目標4 ・・・ 質の高い教育をみんなに
- 目標6 ・・・ 安全な水とトイレを世界中に
- 目標16 ・・・ 平和と公正をすべての人に
【重要な課題が残る】(濃いオレンジ)
- 目標2 ・・・ 飢餓をゼロに
- 目標7 ・・・ エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 目標8 ・・・ 働きがいも経済成長も
- 目標10 ・・・ 人や国の不平等をなくそう
- 目標11 ・・・ 住み続けられるまちづくりを
- 目標17 ・・・ パートナーシップで目標を達成しよう
【深刻な課題が残る】(赤)
- 目標5 ・・・ ジェンダー平等を実現しよう
- 目標12 ・・・ つくる責任、つかう責任
- 目標13 ・・・ 気候変動に具体的な対策を
- 目標14 ・・・ 海の豊かさを守ろう
- 目標15 ・・・ 陸の豊かさも守ろう
となっています。
C3S(コペルニクス気候変動サービス:欧州連合【EU連合】の地球観測プログラム「コペルニクス」の一環として運営されているサービスで、気候データの収集、分析、提供を行い、気候変動に関する科学的な情報を提供することを目的としている)が発表した2024年の世界の平均気温は15.1°Cだったそうです。これは産業革命前の気温よりも1.6℃高く、パリ協定に基づいて設定された目標1.5℃を超えてしまいました。目標の達成期限は2030年とされています。あと6年しか残されていません‼
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四方海話70 ー ときの話題 ー §26 おわり
70回を一区切りとして、次回からは記事を最初からブラッシュアップをしたいと思います。

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