四方海話 46

―  ときの話題  ー   その5

・・・ 1.5℃の約束 ・・・

  出典:国連広報センター資料より

「1.5℃の約束」とは、2015年にフランスのパリで開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で示された目標で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下、できる限り1.5℃に抑えるというものです。この目標を達成するためには、CO2の排出量を、2030年までに2010年と比べて約45%削減する必要があるとしています。しかしながら、現在の各国の削減目標では、2030年までに2010年比でわずかに1%減にとどまるのだそうで、各国ともにさらに強力な取り組みが必要な状況です。我が国では「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を掲げ、CO2の大幅な削減を目指しているところです。

 また、「1.5℃の約束」キャンペーンは、2022年に国連広報センターとSDGメディア・コンパクト(:2018年に国連が主導して世界中の報道機関とエンタテイメント企業に対し、SDGs達成のために協力を促し、発足した)に加盟する日本のメディアが共同してスタートしたもので、気候変動対策への行動を呼びかけることを目的とするものです。

 今年(2023年)の3月20日から12月31日の間、2年目のキャンペーン期間として定められていて、国内の各メディアによる情報発信を通じて、

「世界の平均気温の上昇を抑える」

ために個人や組織に対して行動を促し、その必要性についての理解を広めています。

ですが、われわれ一般国民の視点からすると「今年の夏は暑かったネ!」「やっと涼しくなってきたネ!」「テレビでは異常気象などと言ってるけど、涼しくなってきたジャン!」程度なのです。切迫した危機感はあまり感じられない。

 EV(電気自動車)は徐々に増えているのは実感できますが、価格が割高だし、一回の充電で可能な走行距離が短いことに加え、地方に行くと充電可能なスタンドが無かったり、マンション暮らしの人達は立体駐車場で充電設備がないなど、普及にはまだまだハードルが高い。

 JRの貨物列車に海上コンテナを積んで輸送するためのテスト走行が行われる旨の報道がありましたが、結果はどうだったのでしょうか?

 横浜の主要道路には一般車両、ダンプカーに混じって、相変わらず海上コンテナを乗せたトレーラーがたくさん走っています。また、新しく拡張している横浜港のコンテナヤードには線路を引き込む予定はないようです。コンテナヤードでのコンテナ移動は電動の台車にする、あるいは岸壁まで貨物列車を引き込んでコンテナは船から直接列車に積んでしまうなどの工夫が必要かもしれません。また、国交省が主唱するモーダルシフト*の実現には、内航コンテナ専用船の建造や岸壁の改造、鉄道貨物車の製造、改良など巨額の費用と長い時間が必要となるようで、2030年までにはあと7年、とても間に合いそうにありません。

*モーダルシフト:トラック等の自動車で行われている長距離貨物輸送を環境負荷が小さい鉄道や船舶での輸送に転換することをいいます。また、ドライバー不足や働き方改革(長時間労働の軽減)の点からも注目されています。

 国連は個人でも実行可以下の10項目の呼び掛けをしています。 

  1. 家庭での節電・・家庭でのエネルギー消費量を減らす。
  2. 外出には徒歩、自転車、公共交通機関の利用する。
  3. 野菜、果物、穀物、豆類、ナッツ類、種子の摂取を増やし、肉や乳製品を減らす。
  4. 長距離の移動手段を考える。飛行機は✖、列車○、可能ならオンライン利用、不要不急の旅行は思いきって中止する。
  5. 廃棄食品を減らす。購入した食品はなるべく使い切り、残したものは堆肥にする。
  6. リデュース(抑制)、リユース(再使用)、リペア(修理)、リサイクル(再生)の徹底。
  7. 家庭のエネルギー源を替える。ソーラーパネルの利用など。
  8. EV(電気自動車)にする。
  9. 環境に配慮した製品を選ぶ・・地元の食品、旬の食材の利用など。環境問題への意識が高い企業の製品を選ぶ。
  10. 声を上げる・・隣人、同僚、友人、家族と環境問題について話し合う。    

 既に日頃から実践している項目もあり、我が家ではできない項目もありますが少しでも貢献できるよう頑張ります!

世界の平均気温変化グラフ(出典:IPCC「気候変動に関する政府間パネル」資料

・・・ 津波 ・・・

 10月9日朝、なんとも奇妙な津波が発生しました。「地震が伴わない津波?」

 津波の発生メカニズムは「地震」→「海底の隆起・沈降」→「海面の変動」→「波の伝播」だと理解していましたが、原因となる地震が感知されなかったとのことですから、津波が到達してから「津波注意報」が発表されたのも無理からぬ事と思います。

 鳥島近海では10月2日から地震活動が活発となり、5日にはマグニチュード6.5の地震があり、八丈島で30㎝の津波が観測されています。気象庁では、9日朝4時から6時の間、規模の小さい地震が14回観測されていたそうですが、「注意報」でなくても「情報」だけでもいいから「何等かの周知」が必要だったのではないでしょうか?

 文部科学省所掌の「地震調査委員会」委員長は「稀な現象で、大きな揺れを伴う地震がなくても津波が起こることがある。性質の違う現象が起きた!」と話し、元気象庁長官は「海底地すべりの可能性」と「噴火はしていないが、火山活動の影響による海底の上下」について言及しています。

 下図は鳥島付近の海底地形図です。いかにも「地すべり」が起こりそうなデコボコな地形の海底ではありますが、津波を起こすほどの大規模の山や崖はないようにも見えます。

 今後、現地での最新機材を使った原因調査が期待されます。もしかしたら、隕石の破片が海底に落ちているかも知れません⁈

鳥島付近の海底地形図(出典:海上保安庁海洋情報部「海しる」より)

・・・ ジーランディア(:タスマンティス)・・・

 こちらも「海底」の話です。ニュージーランドからニューカレドニアに至る海底に横たわる大陸地殻をいいます。(下図の桃色線に囲まれた範囲)

 ジーランディアの範囲(出典:ウィキペディア)

 大陸の慣習的な定義は「有意な水域で切り離された、充分に広く、連続的で、各々が独立していると認識される陸地」とされているそうで、現在は一般的に「ユーラシア大陸」「アフリカ大陸」「北アメリカ大陸」「南アメリカ大陸」「オーストラリア大陸」「南極大陸」の六大陸を指しますが、七番目の大陸地殻として(陸地ではないのだからカウントはできないとしても)存在している。

 ジーランディアは約1億3000万年前~8500万年前(中生代白亜紀)にオーストラリア大陸とともに南極大陸と分裂し、さらに約8500万年前~6000万年前にオーストラリア大陸と分裂して約2300万年前ころに殆どが海面下に沈んだのではないかと推定されています。また、ジーランディアが海面上に現れないのは、地殻の厚さが約20㎞と他の大陸より薄い(大陸部の地殻の平均的な厚さは30~40㎞、造山部では50~60㎞)ために、密度が大きいマントルの上では現在の海水面より上に出るほど高く浮かびあがることができないからなのだそうです。

 この大陸地殻の一部であるニュージーランドはトンガ諸島の東にあるトンガ海溝*に続いて、ケルマデック海溝⁑の南端に位置し、日本と同様に地震が多く、2011年2月に発生した「クライストチャーチ地震」では28名の日本人留学生が犠牲となったほか、2021年3月には大地震が短時間に続けて発生しています。

 日本の地球深部調査船「ちきゅう」の海底ボーリングにより採取した地質サンプルには生物の化石や植物の花粉も見受けられ、ジーランディアが海に沈む前には陸生生物が存在していた可能性もあるそうですが、サンプルの分析が進み、結果の公表が待たれます。

*トンガ海溝:南太平洋のトンガ諸島の東側にある海溝、最深部のホライゾン海淵は水深1万800±10mで、世界最深のマリアナ海溝のチャレンジャー海淵(1万920±10m)に次ぐ水深がある。

⁑ケルマデック海溝:トンガ海溝の南側に位置し、最深部は1万47mで南半球ではトンガ海溝に次ぐ深淵部がある。

 この海溝には、インド・オーストラリアプレート(ケルマデックプレート)と太平洋プレートの境界があり、ケルマデックプレートの下に太平洋プレートが沈み込んでいるとされ、地震活動がたいへん活発な海域です。

四方海話 46  - ときの話題 -  その5   「おわり」

次回は  四方海話 47   ー ときの話題 ー  その6  です。

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