四方海話100

ーときの話題ー §56

1 第81回国連総会(一般討論)の主な論点⁈

2 旧石器時代の渡海はカヌー以前に「竹の筏と葉っぱの帆」⁈

3 MSJC focus on!

1⃣ 東海汽船(株)行政処分

2⃣ 八丈島でダイバー漂流事故

3⃣ 横浜港内にFRP廃船捨て場⁉


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1 第81回国連総会(一般討論)の主な論点⁈

 9月8日、「信頼の再構築と変革の管理で、すべての人々に資する国連を」 (Restoring trust, managing transformation: a United Nations that delivers for all)を「公式テーマ」として、第81会期が開会しました。また、9月22日~26日、9月28日には一般討論演説(General Debate)が行われ、高市総理大臣も演説しました。

グテーレス国連事務総長の発言(要約)

  • 最大の課題は「多国間主義への信頼回復」である。
    • 国際社会の分断や不信が深まる中、国連を含む国際協調システムへの信頼を再構築することが最重要課題だと強調した。
  • 世界は複合的危機に直面している。
    • 紛争拡大、核エスカレーションの危険、貧困と格差、気候変動、AIのリスク、SDGsの遅れなど、多くの課題が同時に進行していると指摘した。
  • 国際法と人権の尊重を訴えた。
    • 国際法や人権がしばしば軽視されており、地政学的対立が国際協力を妨げていることに懸念を示した。
  • 国連改革の必要性を強調した。
    • 安全保障理事会や国際金融システムなど既存の国際機関が現代の課題に十分対応できていないと述べ、改革の必要性を示した。
  • それでも国連への希望を表明した。
    • 国連総会は世界の難題に向き合う唯一の普遍的な場であり、対話と協力を通じて解決策を見いだせるとの希望を示した。

主な論点

 ウクライナ情勢と国際安全保障

  • ロシアによるウクライナ侵攻への対応。
  • 国連安全保障理事会の機能不全。
  • 核拡散防止(NPT体制:核兵器の不拡散に関する条約〔Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons: NPT〕、1968年に採択され、1970年に発効)の維持と強化。
  • 北朝鮮の核・ミサイル問題。

 中東情勢

  • ホルムズ海峡の安全確保。
  • イランの核問題。
  • 地域の安定化とエネルギー供給の維持。

 気候変動

  • パリ協定から10年を迎えた気候変動対策。
  • エネルギー転換(脱炭素化)。
  • 海面上昇による小島嶼国への脅威への対応。

 AI・新技術の国際ルールづくり

  • AIの安全利用。
  • 自律型兵器の規制。
  • サイバー空間や宇宙空間における安全保障問題。

 サプライチェーンと経済安全保障

  • 重要鉱物やエネルギー資源の安定供給。
  • レアメタル輸出規制問題。
  • サプライチェーンの強靱化(レジリエンスの強化)

 国連改革

  • 安全保障理事会の改革。
  • 常任・非常任理事国の拡大。
  • 国連の信頼回復と機能強化。

高市総理大臣の演説の要約

  • 世界は不安定化しており、国連の役割がこれまで以上に重要であるとして、
    • 国際秩序が大きく揺らぎ、地政学的対立の激化、中東情勢の悪化、サプライチェーンの混乱、人権問題などが深刻化していると指摘しました。その上で、国連への批判がある一方、世界の平和と安定にとって国連は不可欠であり、日本も責任を果たすと表明した。
  • 自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)を推進する。
    • 日本は「自律性」と「強靱性」を重視した新たなFOIP構想を進めると説明し、重点政策として以下を揚げた。
      • エネルギー安全保障の強化。
      • 重要鉱物サプライチェーンの確保。
      • 中東・アジアとの連携強化。
  • 核軍縮と北朝鮮問題への強い姿勢。
    • 唯一の戦争被爆国として、以下を訴えた。
      • 核不拡散条約(NPT)体制の維持・強化。
      • 「核兵器のない世界」の実現。
      • 核戦力の透明性向上。
    • 北朝鮮の脅威については以下を指摘し、完全な非核化と安保理決議履行を求めた。
      • 核・ミサイル開発。
      • サイバー犯罪による資金調達。
      • 未解決の拉致問題。
  • ロシアのウクライナ侵略を非難。
    • ロシアによるウクライナ侵略は国連憲章に反する行為であり、安保理常任理事国が拒否権を用いて自らを守る現状は問題だと指摘し、併せて日本が和平調停や法の支配の推進に積極的に役割を担う考えを示した。
  • ODA・防災・気候変動で、以下の国際貢献を継続する。
    • 開発途上国に対する支援(ODA:政府開発援助)。
    • TICAD(:アフリカ開発会議)を通じたアフリカへの支援。
    • 大平洋島嶼国との協力(太平洋に点在する島国・地域と協力し、海洋安全保障や気候変動といった共通課題を含め、太平洋島嶼国地域との連携の更なる強化や同地域の安定と繁栄を目指す。
    • 防災支援(地震・津波・台風などへの備えとして、観測システム、避難施設、防災計画、人材育成、災害復旧支援)などを実施する。
    • 気候変動対策
      • GX(グリーントランスフォーメーション:化石燃料中心の社会から、脱炭素社会へ経済や産業の仕組みを変革する)やAZEC(:アジア・ゼロエミッション共同体=日本 + ASEANのうちミャンマーを除く9か国 + オーストラリア)を通じて脱炭素と経済成長の両立を目指す。
  • AIの国際ルール作りを主導する。
    • 「広島AIプロセス」(:2023年のG7広島サミットで提唱した「広島AIプロセス」)を基盤として、生成AIなど高度AIに関する国際的なルール作りを進めてきましたが、高市首相は、この国際規範づくりをさらに発展させる考えを示した。
    • AIは人類に大きな利益をもたらす一方で、偽情報・誤情報の拡散、プロパガンダへの悪用、サイバー攻撃、安全保障上のリスク、といった新たな脅威も生み出していると指摘し、日本はこれらのリスクに対する国際協力を主導すると表明した。
    • AIの安全利用やリスク管理に関する協力を加速するため、各国首脳や関係者が参加する「AIサミット」を日本で早期開催したいとの考えを示した。
  • 「国連改革」についての主張
    • 国連憲章の見直し。
    • 「旧敵国条項」(:国連憲章に残る、第二次世界大戦の旧枢軸国(日本、ドイツ、イタリアなど)に関する規定)の削除。
    • 安全保障理事会改革
      • 1945年の体制(常任理事国のうち1か国でも反対すると、重要な決議は成立しないとする規定)は現代世界を反映しておらず、代表性と正統性を高める改革が急務だと訴えた。
    • 常任・非常任理事国の拡大
  • 結語

 日本は、国連加盟以来70年間、専守防衛の考え方の下、平和国家として、国際社会の平和と繁栄に一貫して貢献してきました。また、ルール・制度づくりと現場の支援の両輪で、国連と歩みを重ねてきました。そして、この方針は、今後も一切変わりません。この歴史を踏まえ、日本は、国連の理念という希望の灯を守り、その光を未来につないでいく責任を感じています。 そのため、国連と多国間主義へのコミットメントを新たに、これからも着実に行動していきます。国連自身も、世界が揺らぐ今こそ、より強靱かつ実効的な国連に生まれ変わり、信頼を取り戻さなければなりません。日本は、そのような「国連と共に、インド太平洋を、そして国際社会を、より強靱に豊かにして、平和と繁栄を創る」決意です。


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2 旧石器時代の渡海はカヌー以前に「竹の筏と葉っぱの帆」⁈

 山下洞人(那覇市で発見された、約3万2000年前の旧石器時代の化石人骨)・ピンザアブ洞人(宮古島、約2万6千~3万年前:大人の男女と子供を含む数個体の化石人骨)や白保人(石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡から発見された、約2万7000年前の旧石器時代の化石人骨)、港川人(沖縄本島南部八重瀬町、港川遺跡で発見〔男性1体・女性3体〕、約2万~2万2千年前の後期旧石器時代の人骨群)はどこから、どのようにして来たのか?

 ホモ・サピエンスがアフリカ大陸を出てから日本列島へ到達するまでのルートと年代

  • 約6万〜7万年前:アフリカ出発
  • 約5万〜6万年前:アジア・オセアニアへの拡散、スンダランド(:氷河期〔旧石器時代〕に海水面が低かった時代、東南アジアの島々がひとつに繋がって形成されていた古代大陸)に到達。
  • 約3万8,000〜4万年前:日本列島への到達(旧石器時代の開始)
    • 3つの「日本到達ルート」
      • 北ルート(シベリア・サハリンルート)
        • 時期: 約2万5,000〜3万年前
        • ルート: アフリカ → 中央アジア → シベリア → サハリン → 北海道 → 本州
        • 特徴
          • 寒冷化が進んだ時期に、陸続き(陸橋)となっていたサハリン・北海道を経由して進入した北方系集団です。
          • マンモスやトナカイなどの大型獲物を追って移動してきたと考えられており、精巧な細石刃(さいせきじん)技術を伴って日本列島へ広がりました。
      • 中ルート(朝鮮半島・対馬ルート)
        • 時期: 約3万8,000年前
        • ルート: アフリカ → アジア内陸部・中国大陸 → 朝鮮半島 → 対馬海峡 → 九州・西日本
        • 特徴
          • 氷河期で海面が低下し、非常に狭くなっていた対馬海峡を渡って西日本へ入ったルートです。
          • 本州・九州の初期旧石器文化(台形石器やナイフ形石器の文化)の形成に大きく寄与した。
      • 南ルート(海のルート / 南西諸島ルート)
        • 時期: 約3万6,000〜3万8,000年前
        • ルート: アフリカ → インド洋沿岸 → スンダランド(東南アジア) → フィリピン → 南西諸島(先島諸島・沖縄本島) → 九州・本州
        • 特徴
          • アボリジニの祖先やパプア系古層と共通の親集団から分岐した集団です。
          • 山下洞人・ピンザアブ人・白保人・港川人はこのルートと思われます。

  フィリピンの先住民やオーストラリアのアボリジニと沖縄の旧石器時代人(山下洞人・ピンザアブ人・白保人・港川人など)は、いずれも「アジア・オセアニア地域へ初期に定着したホモ・サピエンスの古い系統(初期拡散集団)」に位置づけられています。それぞれが地理的に分断されて独自の歴史を歩んだため「全く同じ集団の直系の子孫」というわけではありませんが、人類の歴史の大きな流れ(初期の南方ルート=旧石器時代の東南アジア〜日本列島を結ぶネットワーク)において、祖先を同じくする存在だとされています。

日本周辺の地図、台湾やフィリピンの一部を含む。地名が表示されており、海峡や島々が示されている。

フィリピン(ルソン島北部)から沖縄に至るルートの例〔赤線〕と黒潮の流路〔薄青〕(国土地理院地図上に筆者作図)

  南(海の)ルートの例

 上図は南ルート(海のルート)の一例です。出発地をフィリピン(ルソン島)北部の海岸としていますが、スンダランドから、あるいはルソン島やミンダナオ島の東海岸としてもいいのですが、沖縄本島まで、ほぼ島伝いに移動しながら到達が可能で、島間の最長の直線距離は、宮古島→沖縄本島の約150海里、もちろん気象・海象の影響もありましょうが、仮に竹筏が2.5ノットのスピードを出せるとして、順調ならば、およそ2日半≒3日で行くことができます。

 葉っぱの帆を取り付けた竹筏

 AIでイラストを描いてもらいましたが、下図のようになりました。単独だったのか、部族単位で数隻の船団を組んだのか?少なくとも未知の世界へ踏み出すのですから単独では心細い!数隻が一緒に出発したことも考えられます。それも一度だけではなく何世代にもわたって、度重なり渡海を試みたのではないでしょうか?

木の筏の上で作業する先住民の人々。背景には青い海と島が見える。

「葉っぱの帆を取り付けた竹筏」航海中の想像図(生成AI画像、by Gemini)

 黒潮の発生と流れ

 黒潮の発生は、北赤道海流(North Equatorial Current)がフィリピン東方で分岐することに始まります。北赤道海流は貿易風に押されて太平洋を西進し、フィリピン列島に達すると、北へ向かう流れ(黒潮)と南へ向かう流れ(ミンダナオ海流)に分かれます。黒潮はルソン島東岸を北上し、バブヤン諸島、バタネス諸島沖を通過、台湾東岸へ達した後、与那国島と台湾の間から東シナ海へ入ります。 

 黒潮の流れと季節風とスコールを味方にした島伝いの移動 

 旧石器時代の人々は現代人が想像する以上に自然観察力に優れ、季節による風向や海流、降雨の変化を経験的に理解していたと考えられます。スンダランドに到達したホモ・サピエンスの集団は、まずは食料と真水が調達し易い場所に住み付き狩猟・採集生活を始め、約5~6万年前にはボルネオ・スラウェシ・フィリピン方面へ拡散、さらに約4~5万年前にルソン島の各地に定着したとされています。どのくらいの規模(人数等で)どのように分散して行ったのかは到底分かりませんが、食料資源は豊富なために次第に人口が増え、生活圏を拡大、あるいは漁労中の偶発的な漂流などを通じて活動範囲は徐々に広がっていった可能性があります。

 彼らが黒潮や季節風、東アジアモンスーンに伴う降雨パターンを経験的に理解していたならば、食料や真水を確保できる島々を中継地として利用しながら、段階的に北方へ移動した可能性も考えられます。現時点でそれを直接示す証拠はありませんが、「黒潮の流れと季節風を利用した島伝いの移動」は、琉球列島への人類到達を考える上で検討に値します。

 バシー海峡(フィリピン最北端と台湾南端の間にある海峡)付近の季節風は東アジアモンスーン気候に支配され、5月頃~10月頃(夏季≒雨季)には南西モンスーン(南西風)が吹き、高温多湿、スコールが頻発します。この時期に「竹の筏」がルソン島北部を出発し、北向きに航海する場合には、「風は追い風」、「黒潮も追い潮」、また、「スコールによる雨水(真水)の確保」にもプラスに働き、とても都合のよい条件となります。

  パラワン島のタボン人

 南シナ海とスールー海の間に位置するフィリピンのパラワン島・タボン洞窟で、1962年に発見された現生人類(ホモ・サピエンス)の「すねの骨」の化石は炭素年代測定により、47,000±11,000年前の年代が判明しています。

 (参考)ホモ・ルゾネンシス(Homo luzonensis、ルソン原人)

 2019年に発表されたフィリピン・ルソン島の古人類で、ルソン島北部の「カラオ洞窟」で発見された歯や手足の骨にもとづいて、新種として命名されました。ルソン島では人類活動の痕跡が約77万~63万年前まで遡るとの報告もあり、ルソン島は古くから海によって隔離された島だった。すなわち、その祖先は何らかの方法で海を渡ってルソン島へ到達したことになります。

 帆の起源について

 「人類が最初にどこで帆を用いたのか?」についてはまだ定説がありませんが、考古学的には紀元前3500~3000年頃のエジプトやメソポタミアが最有力候補とされ、エジプトでは先王朝時代の図像資料に帆を備えた船が描かれています。

 また、旧石器時代に帆が用いられていたことを示す証拠も現在のところ発見されていません。帆や索具は植物繊維や葉などの有機物で作られた可能性があり、そのような材料は長期間保存されにくいため、直接証拠が残り難いという問題もありますが、ほぼ、自然の中で暮らし、観察力に優れた旧石器人ですから面積が広い『大きな葉が風を受ければ大きな「力」となる。』ことについては経験的に知っていたに違いなく、そのため、旧石器時代に原始的な「帆」が存在した可能性は完全に否定することもできず、さりとて「仮説」とも言い難く、「推測」の域を出ることはできません。山下洞人・ピンザアブ人・白保人・港川人の骨が見つかっている以上、考古学上、その「存在へのストーリー」を解明できる日がくることに期待します。

 「黒潮の流れと季節風とスコールを味方にした島伝いの移動」という視点に立てば、旧石器時代の渡海はカヌー以前の時代から始まっていた可能性も見えてきます。「葉っぱの帆を取り付けた竹筏」という素朴な技術こそが、人類を新たな島々へ導いた最初の航海術だったのかもしれません。


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3 MSJC focus on!

1⃣ 東海汽船(株)行政処分

 関東運輸局は伊豆諸島の島々への観光・生活航路を担う東海汽船(株)に対し、行政処分を行いました。主な内容は次のとおりです。

① 安全統括管理者・運航管理者の解任命令

 2026年8月28日、関東運輸局は㊟¹海上運送法第10条の8に基づき、

  • ㊟²安全統括管理者の解任命令
  • ㊟³運航管理者の解任命令 

を発出しました。

 ㊟¹海上運送法第10条の8 安全統括管理者及び運航管理者の解任命令

 国土交通大臣は、安全統括管理者又は運航管理者がその職務を怠った場合であって、当該安全統括管理者又は運航管理者が引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、一般旅客定期航路事業者に対し、当該安全統括管理者又は運航管理者を解任すべきことを命ずることができる。 

 ㊟²安全統括管理者:海上運送法では、一般旅客定期航路事業者(フェリー会社や旅客船会社)に対し、安全管理規程を定めるとともに、その中心となる安全統括管理者を選任することを義務付けています。

 ㊟³運航管理者:海上運送法に基づき、一般旅客定期航路事業者(フェリー会社や旅客船会社)は運航管理体制を整備し、その中心となる運航管理者を選任しなければなりません。

  • 処分の原因
    • 酒気帯び状態での航海当直。
    • アルコール検査記録の不実記載。
    • 発航前検査記録の不実記載。
    • 安全管理規程の不遵守。
    • アルコール検査体制の形骸化。
    • 舷門未閉鎖での出港や確認不足の常態化。

② 輸送の安全確保命令

 前同日、㊟⁴海上運送法第19条第2項に基づく「輸送の安全の確保に関する命令」も発出されました。

 ㊟⁴海上運送法第19条第2項

 国土交通大臣は、一般旅客定期航路事業者の事業について輸送の安全を阻害している事実があると認めるときは、当該一般旅客定期航路事業者に対し、輸送施設の改善、事業計画の変更その他の輸送の安全を確保するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

③ 船員法に基づく是正命令

 さらに、㊟⁵船員法第101条第1項に基づく「是正命令」も発出されています。

 ㊟⁵船員法第101条第1項(監督命令等)

 国土交通大臣は、この法律、労働基準法(船員の労働関係について適用される部分に限る。以下同じ。)又はこの法律に基づいて発する命令に違反する事実があると認めるときは、船舶所有者又は船員に対し、その違反を是正するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

④ 船舶使用停止命令(=実質的な営業停止処分)

 2026年10月2日、関東運輸局は㊟⁶海上運送法第17条に基づき、一部船舶について20日間の「使用停止命令」を発出しました。

 ㊟⁶海上運送法第17条

 国土交通大臣は、一般旅客定期航路事業者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき、又はその事業に関し公益を阻害している事実があると認めるときは、期間を定めて当該事業の停止又は船舶の使用の停止を命ずることができる。

  • 対象船舶
    • 橘丸:東海汽船が運航する大型貨客船(2014年6月就航・総トン数5,681トン)
    • セブンアイランド結:東海汽船が運航する最新鋭の㊟⁷高速ジェットフォイル船(2020年7月就航・総トン数176トン・最大速力約43ノット)
    • セブンアイランド友:同じく高速ジェットフォイル船(2013年4月就航・総トン数164トン・最大速力約43ノット)
  • 使用停止期間:2026年10月9日から10月28日までの20日間

 ㊟⁷高速ジェットフォイル船:航空機用由来のガスタービンエンジンでウォータージェットを駆動し、水中翼で船体を海面上に浮かせて高速航行する船です。波の影響を受けにくく揺れが少ない一方、燃費は一般の旅客船より悪く、燃料消費量は大型バスの数十倍に達することもあります。そのため「海のジェット機」とも呼ばれ、最大速力約43ノットで航行可能由。 

 行政処分の効果は期待できるか?

 行政処分によって、

  • 経営陣に経済的損失が発生する。
  • 安全管理体制の見直しが義務化される。
  • 国土交通省の継続監視が強化される。
  • 社会的信用の低下を回避するため再発防止への圧力が働く。

という効果はありますが、事故防止や安全管理の分野では、「規程を作ること」と 「現場で守られること」は別問題で、遵守規程そのものは存在していたが、運用が機能していなかったという状態でした。

 今回の処分はかなり重く、行政としては相当踏み込んだ措置だと思います。特に解任命令が発出されたことは、「事故を起こしたから処分する」ではなく、「安全管理体制そのものに問題がある」と国が判断したことを意味し、処分としてはかなり実効性が期待できる内容ではありますが、今回の問題の本質は「規程の不足」ではなく旅客船の運航に携わる者としての「安全文化の劣化」=「安全意識の欠落」=「使命感の欠如」にあります。過去にも行政指導を受けながら法令違反が続いた経緯を踏まえると、真の評価は改善計画が終了する令和9年(2027年)以降、監査や運航実績で再発がないことが確認されて初めて可能になる。

 利用者目線の重要性!

 「処分が出たから安心」と考えず、利用者目線で改善状況を継続的に観察しましょう。

  • 公的機関(国土交通省・運輸安全委員会・海上保安庁・関東運輸局等)の公表資料を定期的にチェックする。
  • 利用する際は乗組員の規律、出航前の緊張感、安全手順の遵守状況などはある程度観察できる。
  • 乗船案内や安全説明を観察する。
  • 乗組員の態度を見る。
    • 制服や身だしなみ。
    • 乗客への対応・接客態度。
    • 出入港時の作業態度。
    • 立哨状況。
  • 異常な事象は積極的に通報する。
  • 離島の住民の話や常連客の評価などを聞く機会があれば聞いておく。

 行政処分の真価は、「処分そのもの」ではなく、数年後に安全文化が定着しているかどうかで判断されます。利用者による継続的な監視と情報提供は、その定着を促す重要な役割を果たします。


2⃣ 八丈島でダイバー漂流事故

  概要

 発生日時:2026年10月3日(土)PM

 場所:八丈島の西およそ8.6キロの沖合海域

 当事者:ダイビングツアーに参加していた客7人とインストラクター1人の計8人(40代〜60代の男女)

 事故の経緯:ファンダイビング中、現場の潮流が急に強くなったことなどが原因で、行方が分からなくなり一時漂流し、午後1時50分ごろにダイビングボートの船長から下田海上保安部へ通報されました。

 救助活動の結果:海上保安庁の巡視船や航空機などによる捜索が行われ、通報から約2時間半後に全員がヘリコプター等で救助され、発見時、全員意識があり怪我等もなかった由でした。

  事故原因(海上保安部で調査中→以下、報道を参考とした。)

 天候と激しい海況:事故当時、現場周辺では北東の風が約14メートルと強く、約3メートルのうねりや高い波が発生しており、事故当時、波浪注意報が発表されていた。

 潮流と強風による漂流:ダイビング中や水面に浮上した際に、強い潮の流れや強風の影響を受け、予定されていた浮上・回収ポイントから北東へ約14.5キロ離れた海域まで流されてしまった。

 島の周辺・半島付近など海底地形が複雑な海域でのダイビングの危険性!

 島周辺や島しょ部の岬・小島周辺といった海底地形が複雑な海域でのダイビングには、特有の危険性が存在します。

 ⑴ 特に八丈島付近は、黒潮本流が近くを流れる外洋の島であり、潮の当たり方や干満の差によって、地元の漁師でも予測が難しいほどの強烈な潮流が発生することがあるそうです。岬の先端や、周囲に点在する小島(八丈小島など)の周辺では、潮が複雑にぶつかり合うことで、局地的な急流、湧昇流、深場に向かう急潮流、複雑な渦流が起こりやすくなる。

 ⑵ 海底の起伏が激しいドロップオフや根(海底の隆起)、複雑に入り組んだ半島・岬の周辺では、潮の流れが遮られたり逆に加速されたりします。潜水中は岩陰などで流れが弱く感じられても、少しポイントを外れたり、水深を上げ下げしたりした瞬間に、突如として激しい潮に巻き込まれるケースがあり得ます。

 ⑶ 水中ではダイバーが潮の流れの変化に気づきにくく、また、水面付近では風やうねりの影響をダイレクトに受けることになります。島しょ部特有の強い風浪や高いウネリがある場合には、浮上した際にボートの視界内にとらえられず、さらに引き離されたり、目視が極めて困難になったりしてリスクが跳ね上がる。

 ダイビング人口とインストラクター(ガイド)の資質

 日本のダイビング人口は2000年代に増加し、2010年前後には約180万人規模に達したとみられています。しかし、その後は減少傾向となり、2020年にはコロナ禍で約50万人まで落ち込みました。近年は回復傾向にあるものの、現在の人口は80万人前後(推定)と考えられ、ピーク時の半分程度の水準に留まっています。このことから、乱立し過当競争の傾向にあったダイビングショップも次第に淘汰され、「何らかの目新しい特徴」がないと生き残れない時代となり、多少の危険覚悟のスリリングなダイビングをするショップも現れています。

 ダイビングインストラクターは医師や教員のような国家資格ではなく、PADIやNAUIなどの民間指導団体が認定する資格であるため、指導力や安全管理能力には一定のばらつきが存在します。もっとも、これは民間資格であることだけが原因ではなく、経験年数や潜水本数、安全に対する考え方の違いによる部分も大きい。ダイバーにとっては、資格団体の名称よりも「インストラクターのレベル」を見極めることの方が重要です。

 特に近年のダイビング事故の傾向をみると、事故の原因は器材故障などよりも「判断ミス」「海況評価の誤り」「指示、監督不十分」である場合が少なくありません。その意味では、資格の有無以上に、インストラクター個人の資質・安全意識・経験が大きな要素になっていると言えます。

 今回の事故では救助機関の対応も早く、結果は人命に及ぶことなく済みましたが、「よかった、よかった」ではなく、事案の重大性から、業界全体で再発防止に努めなければならないことは言うまでもありません。


3⃣ 横浜港内にFRP廃船捨場⁉

フォトギャラリー

FRP廃船捨場の位置(地図)

横浜港周辺の地図。緑の道路と赤で囲まれた区域が表示されている。

FRP廃船捨場の位置〔赤枠〕(国土地理院地図上に作図)

 まだ浮かんでいる船、沈んでしまっている船を合わせると100隻以上になるのではないでしょうか?FRPは日の光(紫外線=UV)により表面が劣化し、マイクロプラスチックとなって飛散します。沈んでしまった船からは海水に混ざって海に流出もします。近隣には病院、住宅もあります。

 そもそも、老朽化した船舶を海へ沈めたり、放置目的で投棄したりすることは「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)で禁止されています。

 海防法第43条(船舶等の廃棄の規制):何人も、船舶、海洋施設又は航空機(以下「船舶等」という。)を海洋に捨ててはならない。⇒老朽船などの船舶を海洋へ投棄する行為を原則禁止し、違反した場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。

 同法第64条:法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者本人を罰するほか、その法人または人に対しても各本条の罰金刑を科する。とされています。 

 これらの廃船を撤去するためには多額の費用が必要となりますが、そのために「税金」を使うことには大反対です。読者のみなさんはどう考えますか?


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四方海話100 ーときの話題ー §56 おわり

次回は 四方海話101 ーときの話題ー§57 です。

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