第二十話 — 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー
1 北方領土問題
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、北方領土の返還交渉は全く進展なく、先が見えない状態が続いています。
日本とロシア間の北方領土に関する歴史を遡ってみます。
① 1855年(安政元年)*日魯通好条約(日本国露西亜国通好条約、日露和親条約、下田条約)
- 国境を択捉島(エトロフ島)と得撫島(ウルップ島)の間とした。
- 樺太では国境の画定なし(両国国民とアイヌ民族が混在)。
- ロシア船の補給のために函館・下田・長崎を開港。
- ロシア領事の駐在(函館)
- 裁判権は双務(双方が互いに権利を有する)。
- 片務的(ロシアに対してのみ)最恵国待遇。
などを交渉し、条約として取り交わしました。
➁ 1875年(明治8年)*樺太・千島交換条約(サハリン・クリル交換条約、サンクトペテルブルク条 約)
日魯通好条約で確定していなかった樺太(サハリン)でロシアによる樺太開発が活発化し、現地のロシア人、日本人、アイヌの人々の間でいざこざが増え不穏な情勢となり紛争が頻発した。このため、樺太での日本の権益を放棄する代わりに得撫島以北の千島18島をロシアが日本に譲渡することと、両国資産の買収、漁業権の承認等を取り決め、樺太・千島交換条約を締結しました。
③ ポーツマス条約(1905年・明治38年)
日露戦争の早期終結を企図してアメリカ(当時の大統領はルーズベルト)の仲介を得て成立した日露間の講和条約(日露講和条約)です。この中で日本はロシアから樺太(サハリン)の南部(北緯50度以南)を譲り受けました。
④ 大西洋憲章(1041年・昭和16年)・カイロ宣言(1943年・昭和18年)
大西洋憲章:米・英両首脳は第二次大戦における連合国側指導原則である大西洋憲章に署名し、「戦争によって領土の拡張は認めない」方針を確認。ソ連はこの憲章に参加。
カイロ宣言:「暴力及び貪欲により日本国が略取した地域等から日本を追い出されなければならない」との宣言ですが、日本は「北方四島を侵略・略取した」事実はありません。
⑤ ヤルタ会談(1945年・昭和20年2月4日~11日)
第二次大戦が終盤となる中、ソ連の対日参戦と国際連合の設立について協議された。この中でアメリカとソ連の間で秘密協定が締結され、ドイツの敗戦から2~3ヶ月後、ソ連の対日参戦と千島列島、樺太、朝鮮半島、台湾など日本領土の取り扱いも決定され、北方領土問題の端緒となった。
また、この密約の後の8月16日、スターリンは米大統領トルーマンに対し、北方領土だけでなく北海道の北東部(釧路と留萌を結んだ線<北海道スターリンライン、留釧の壁>の北半分)をソ連の占領地とするよう求めましたが、17日米大統領トルーマンはヤルタ協定を根拠に拒否したとされています。実際、スターリンは釧路への上陸作戦に備え、潜水艦部隊を出撃させたものの、22日に南樺太で抵抗を継続していた日本軍が投降したことと占守島での戦闘が21日に停戦、日本軍が降服し、戦闘状態が終結したため実行は回避されました。
⑥ ポツダム宣言(1945年・昭和20年8月)
連合国から日本への最終的な降服要求、1945年8月14日我が国が受諾し、8月15日正午、玉音放送により国民へ周知されました。
この宣言の中には、カイロ宣言の履行と日本の主権が本州、北海道、九州、四国並びに連合国が決定する諸島に限定される旨規定されています。
ソ連は、当時まだ有効だった日ソ中立条約を一方的に破棄して1945年8月9日に対日参戦し、8月18日未明には千島列島北端の占守島(シムシュ島)を先制攻撃するなど、日本がポツダム宣言受諾後も攻撃を継続、8月28日から9月5日の間に北方四島の不法占領を完了しました。
なお、占守島での戦闘は日本軍が優勢のうちに推移していましたが、軍命により8月21日降服、同23日武装解除となり、捕虜となった日本兵の多くはポツダム宣言に反してソ連に連行されシベリアへ抑留されました。
⑦ サンフランシスコ平和(講和)条約(1951年・昭和27年)
第二次世界大戦の戦後処理のため、連合国諸国と日本との間で取り交わされた条約ですが、この中で北方領土に関しては「千島列島、南樺太(南サハリン)の権利、権限、請求権の放棄」が明記されているのみで、放棄した後の管轄権については明記されていないことに加え、ロシアは、米軍が日本に駐留することに反対の姿勢を示すため条約に署名していません。とすれば、現在ロシアが実効支配している北方四島のみならず千島列島(得撫島から占守島まで)のロシア支配についても根拠がないのではないでしょうか?

千島列島:出典ウィキペディア
以下は、外務省が作成した「北方領土についてのホームぺージ」の結語です。
北方領土問題の解決のためには、政府間の努力に加え、この問題に対する日露両国の国民を始めとする多くの方々の正しい理解と協力が不可欠です。そのためにも北方領土問題に関する基本的な事実関係と我が国の考え方について、国民の皆様に広くお伝えすることが必要であるという考えから、今回ご覧いただいたホームページを作成しました。この資料が、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、日露両国が真の信頼関係に基づき戦略的パートナーシップを築いていくための一助となることを期待しています。
核兵器の使用をちらつかせたロシアのウクライナ侵攻はまだまだ目が離せません。そして、毎年のことではありますが来月には「終戦の日」がやって来ます。読者の方々にあっては、これを機に是非一度外務省の北方領土に関するHPを確認していただき、正しく理解されるようお奨めします。
四方海話 36 第二十話 — 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー 1 北方領土問題 「おわり」
次回は 四方海話 37 第二十話 — 領土・領海・EEZ・大陸棚 ー 2 竹島問題 です。

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